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晋編2 竹林七賢
嵆康3 顧愷之嵆康を語る
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謝太傅云:「顧長康畫,有蒼生來所無。」(巧蓺7)
謝安さまは仰っている。
「顧愷之、有史以来最強の絵師じゃね?」
ほほう。そんなにすごいんですね。
或問顧長康:「君箏賦何如嵇康琴賦?」顧曰:「不賞者,作後出相遺。深識者,亦以高奇見貴。」(文學98)
ある人が顧愷之に訪ねた。
「君が箏を爪弾いて歌うのは、
嵆康が事を爪弾いて歌うのとくらべて、
どうだろうな」
すると顧愷之は答えた。
「私の歌を後発だからと、
切り捨てるものも少なくない。
が、見識ある人たちは
我が歌の詩情の気高さを読み取り、
称賛してくれているよ」
顧長康道畫:「手揮五絃易,目送歸鴻難。」(巧蓺14)
そんな顧愷之は、
絵を描く時にこぼしている。
「嵆康の詩、贈秀才入軍に
目送歸鴻、手揮五絃、
と言う句があるだろう。
手ずから五弦の琴を弾く、
これはまぁ、簡単だ。
だが、
北に帰る雁を見送る、
これを描くのが難しい」
○
劉注によれば顧愷之には卓絶した絵の腕、卓絶した文の腕、そして卓絶した愚かさが同居している、と評されていたという。そこを踏まえると、この受け答えもピントを喰っていないし、コミュ障っぽさは漂わせている。……と言いたいところなんだけど、この時代の優れているとされるやり取りって、大体コミュ障っぽいんだよねえ。お前らちゃんと会話しろよって何度ツッコんだことか。まぁ、その辺もハイコンテクストなやり取り、と完結させるべきなのかな。
謝安さまは仰っている。
「顧愷之、有史以来最強の絵師じゃね?」
ほほう。そんなにすごいんですね。
或問顧長康:「君箏賦何如嵇康琴賦?」顧曰:「不賞者,作後出相遺。深識者,亦以高奇見貴。」(文學98)
ある人が顧愷之に訪ねた。
「君が箏を爪弾いて歌うのは、
嵆康が事を爪弾いて歌うのとくらべて、
どうだろうな」
すると顧愷之は答えた。
「私の歌を後発だからと、
切り捨てるものも少なくない。
が、見識ある人たちは
我が歌の詩情の気高さを読み取り、
称賛してくれているよ」
顧長康道畫:「手揮五絃易,目送歸鴻難。」(巧蓺14)
そんな顧愷之は、
絵を描く時にこぼしている。
「嵆康の詩、贈秀才入軍に
目送歸鴻、手揮五絃、
と言う句があるだろう。
手ずから五弦の琴を弾く、
これはまぁ、簡単だ。
だが、
北に帰る雁を見送る、
これを描くのが難しい」
○
劉注によれば顧愷之には卓絶した絵の腕、卓絶した文の腕、そして卓絶した愚かさが同居している、と評されていたという。そこを踏まえると、この受け答えもピントを喰っていないし、コミュ障っぽさは漂わせている。……と言いたいところなんだけど、この時代の優れているとされるやり取りって、大体コミュ障っぽいんだよねえ。お前らちゃんと会話しろよって何度ツッコんだことか。まぁ、その辺もハイコンテクストなやり取り、と完結させるべきなのかな。
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