三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

文字の大きさ
上 下
93 / 142
晋編2 竹林七賢

阮籍7  劉昶さんと酒

しおりを挟む
劉公榮與人飲酒,雜穢非類,人或譏之。答曰:「勝公榮者,不可不與飲;不如公榮者,亦不可不與飲;是公榮輩者,又不可不與飲。」故終日共飲而醉。(任誕4)


劉昶りゅうちょう、という人がいる。

これがまた酒好きで、
どんな下人、薄汚いやつとも
平気で酒を飲み交わす。

おーおーやだやだ、
ある人が劉昶をバカにすると、
劉昶は答えるのだった。

「わしに勝るやつは、
 わしと飲まにゃならん。

 わしに勝てんやつも、
 わしと飲まにゃならん。

 なら、わしレベルのやつとは?
 わしと、飲まにゃならんよなあ?」


王戎弱冠詣阮籍,時劉公榮在坐。阮謂王曰:「偶有二斗美酒,當與君共飲。彼公榮者,無預焉。」二人交觴酬酢,公榮遂不得一桮。而言語談戲,三人無異。或有問之者,阮荅曰:「勝公榮者,不得不與飲酒;不如公榮者,不可不與飲酒;唯公榮,可不與飲酒。」(簡傲2)


さて、この辺りの遊び心に敏感なのが、
我らが阮籍げんせきさんだ。

王戎おうじゅうが二十歳になり、おおっぴらに
酒が飲めるようになった。
なので阮籍の家に招待を受けた。
一緒に飲もうぜ! というのだ。

するとそこには、
かの劉昶さんも一緒にいた。

阮籍が言う。

「おう、来たな!
 ここに二斗ばかし、うまい酒がある!

 お前と、おれのぶんだ!
 劉昶にはやらん!」

えっ。
本人の前で、そんな。

そこから始まった酒盛りでは、
本当に劉昶には盃がまわされなかった。
とはいえ三人とも、めっちゃ楽しそうに
清談を交わしている。

訳がわからないのは周りの人たちである。
ある人が、なんですかこのいじめ、
と聞いた。

すると阮籍は答えている。

「劉昶より上のやつとは、
 ともに飲まずにおれん。

 劉昶より下のやつとは、
 やはり飲んでやろう。

 ただ劉昶のやつとだけは、
 飲んでやらん!」


 ○


なんだこれ(なんだこれ)

劉昶
沛国の人。ところで同時期の沛国劉氏にはとんでもない人がいてね……そう、あの劉伶りゅうれいさんである!(ズバァアーン)
劉伶との係累は不明だが、そうやって考えると謎の義理立て、みたいなラインで妄想はしたくなってくる。大体にして阮籍に、その内容がどうであれ「こいつとだけは……」と特別扱いされてるのはただ事ではない。
まあ、白眼視は「問題外の人間をシカトする振る舞い」で、青眼視の中でもリスペクト/ヘイトの別があったりするのかもしれない。

ってあれ? 白眼視の話世説新語にないの? マジか……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

鉄と草の血脈――天神編

藍染 迅
歴史・時代
日本史上最大の怨霊と恐れられた菅原道真。 何故それほどに恐れられ、天神として祀られたのか? その活躍の陰には、「鉄と草」をアイデンティティとする一族の暗躍があった。 二人の酔っぱらいが安酒を呷りながら、歴史と伝説に隠された謎に迫る。 吞むほどに謎は深まる——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

音速雷撃隊

黒いテレキャス
歴史・時代
アメリカ海軍戦闘機パイロットと日本海軍航空隊桜花搭乗員が沖縄の空で見た物は…

女の首を所望いたす

陸 理明
歴史・時代
織田信長亡きあと、天下を狙う秀吉と家康の激突がついに始まろうとしていた。 その先兵となった鬼武蔵こと森長可は三河への中入りを目論み、大軍を率いて丹羽家の居城である岩崎城の傍を通り抜けようとしていた。 「敵の軍を素通りさせて武士といえるのか!」 若き城代・丹羽氏重は死を覚悟する!

処理中です...