三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

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呉編

孫策2  おれが孫策だ

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殷仲文既素有名望,自謂必當阿衡朝政。忽作東陽太守,意甚不平。及之郡,至富陽,慨然嘆曰:「看此山川形勢,當復出一孫伯符!」(黜免9)


東晋末の名士、殷仲文いんちゅうぶん

それなりに名声も博していたので、
もしかして俺、東晋のトップにすら
辿り着けるんじゃね? と触れ回っていた。

が、そんな彼に提示されたのは
東陽とうよう太守の地位。
建康けんこうから見て南東にある大都市、会稽かいけいから
更に山間に入って行ったところの町だ。
要するに、ど田舎である。

えっちらおっちら東陽に向かう殷仲文。
旅程も三分の二、富陽ふようの町に差し掛かる。

ここで、がっくりと嘆息しつつも、言う。

「山川の様子から察するに、
 きっとこの辺りから孫策そんさくの再来が
 現れることだろうな!」


 ○


阿衡あこう
殷《いん》の創立者、湯王をよく補佐した大宰相伊尹いいんがついていた官職。丞相とか相国を言い換えたものだ、と思えばよい。

殷仲文
東晋末、皇帝を僭称した桓玄《かんげん》の属領だったが裏切り、許された。のだが、このエピソードにもある通り中央の顕職ではなく、地方官としての配属となる。このことを深く恨み、乱を起こそうとしたが失敗し、殺される。
 ちなみに富陽辺りって、やっぱり前エピソードに書いた劉繇りゅうようの勢力圏だった。「そこから孫策が出る」と殷仲文は言い放つわけだが、当時の権力者は“りゅうゆう。ええ後の劉宋武帝です。つまり殷仲文の発言について解釈すれば「俺が劉氏を倒してみせるぞ」ってなるんです。何と言うか、お前さん言うねェ、さようなら、って感じだ。劉裕とか当時で一番敵に回しちゃいけない人ですよ……。
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