三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

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魏編4 後半世代編

何晏5  三賢者フルボッコ

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何晏、鄧颺、夏侯玄並求傅嘏交,而嘏終不許。諸人乃因荀粲說合之,謂嘏曰:「夏侯太初一時之傑士,虛心於子,而卿意懷不可,交合則好成,不合則致隙。二賢若穆,則國之休,此藺相如所以下廉頗也。」傅曰:「夏侯太初,志大心勞,能合虛譽,誠所謂利口覆國之人。何晏、鄧颺有為而躁,博而寡要,外好利而內無關籥,貴同惡異,多言而妒前。多言多釁,妒前無親。以吾觀之:此三賢者,皆敗德之人耳!遠之猶恐罹禍,況可親之邪?」後皆如其言。(識鑒3)


何晏かあん鄧颺とうよう夏侯玄かこうげんの三人は
弁の立つひとたちだった。

そんな彼らは、さらなる声明を求めて、
当時に高邁で知られた傅嘏ふか
よしみを持ちたいと、傅嘏を訪問した。

が、傅嘏、一蹴。

そこで三人、荀粲じゅんさんというひとに
間を取り持ってもらう事にした。

荀粲、傅嘏に語りかける。

「夏侯玄くんは今をときめく名士。
 そんな彼が、あなたを
 尊敬してやまないというのだ。
 だというのに、あなたは
 それを突っぱねておられる。

 いいではないか、一回会ってみて
 相性が良ければよし、
 悪ければやはり付き合わない、
 という感じで。

 あなたと夏侯玄くんが親しくなるのは
 この国にとっても喜ばしいことだ。

 例えるならば、そう、
 藺相如りんしょうじょ廉頗れんぱに頭を下げるかのような
 レベルの話だと思うのだ」

あのなぁ、と傅嘏は言う。

「問題はそこではない。
 あの三人に近づくことそのものが危ない、
 と言っているんだ。

 何せ夏侯玄は、志こそ大きいものの
 何かにつけ落ち着きがない。
 あれはその口先で国を傾ける類だろう。

 何晏や鄧颺は、何かとやかましい。
 いろいろ知っているようでいて、
 とるに足らない雑学ばかり。
 肝心かなめの知識には乏しい。
 外面を良くして人脈を築こうとしても
 その内面はどこまでもだらしがなく、
 自分と意見の似たものを大切にし、
 意見が違うものは排斥する。
 いろいろ何ごとかを語ってみれば、
 既に功績を成し遂げた者たちへの
 妬み嫉みばかり。

 口数が増えれば増えただけ敵を作る。
 他人に対する妬み嫉みを口にすれば、
 誰がそんな奴と
 親しくしたいと思うだろうか?

 三賢者さまは、等しくロクデナシだよ!
 あれらを敬遠してすら、いつ、
 とばっちりを食らうかわからんのだ。

 そんな三賢者さまに、
 敢えてお近付きになれ、と?」

荀粲としても、そこまで言わんでも……
という感じではあっただろう。

だが後日、三賢者さまは皆、
曹爽そうそう派として司馬師しばし
皆殺しを食らっている。
 

 ○


鄧颺
光武帝劉秀りゅうしゅうのナンバーツー、鄧禹とううの子孫ですから超エリート家系。でもここだと何晏さんのお友達Aくらいの扱いでしかないし何晏さんと一緒に殺されてる。

傅嘏
裴楷はいかいに「広大無辺でありながら、備わっていないものがない」と評価を受けている人。まぁ何でしょう、賢人にして、ものすごく懐の広い人、というところでしょうかね。その功績を追っていると後に政争に破れ殺される人たちとは徹底的に距離を置いていたり、自分の名声が変に高まらないように功績をマイナス報告っぽいこともしてる。

荀粲
荀彧じゅんいくの末っ子。儒の大家っぽい父親とは真逆で「儒とは先人の残りかすにすぎない」的なことを言い切ったらしい。親父さんと仲悪かったのかしら。どうもこの人の思想をさらに進めたのが何晏や王弼の打ち立てた「清談」のルーツらしいという事で、清談の系譜的にも割と重要な人物のようだ。の割に世説新語じゃえっらい影薄いですけど。

藺相如・廉頗
いわゆる「刎頸の交わり」。戦国時代、ガンガン勢力を広げる秦の脅威にさらされていた趙国きっての名士だった二人だが、とにかく仲が悪かった。しかしあるとき廉頗の素晴らしさに藺相如は気付かされ、ともに手を携えるべき相手だ、と頭を垂れ、以降二人は協力して秦と闘い、両名が健在であったとき、秦は趙を倒すことができなかった。
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