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episode A アイとヒューゴ カロンとユアン
005. I want to heal you / 年下攻め 慰めH
しおりを挟む水色の高い空に子どもらがはしゃぐ声と音楽がこだましている
色とりどりの飾りつけで華やいだ街を
仕事を早く切り上げたアイが意気揚々と歩いていた
今日は魔法庁主催の花火大会で
街全体がお祭りムードでうかれているのだ
アイは甘いかおりに誘われて屋台で足を止めた
「おばさん、揚げ菓子とキャンディ、それからキャラメルがかかった林檎を包んでおくれ」
「はいよ~…お待たせ」
「ありがとう」
茶色の包み紙を抱え歩き出す
このお菓子は夜くたくたになって帰宅するであろうヒューゴ、最愛の家族であり恋人の彼への土産。
目指すは丘
エリート魔法使いのヒューゴが打ち上げる花火を特等席で見るのだ。
:
丘の上のちょうど良い岩に腰掛けながらアイはひとり物思いにふけていると
夕暮れいろに染まりだした空に突然眩い光のシャワーが轟音と共に降り注いだ
魔法使いたちによる光と炎と音のショーが幕開けたのだ
トキ色の空に無数の蝶の花火が瞬き、光の妖精が琴や笛を鳴らしては消え
冥色の空にはエメラルドグリーンの翼竜が舞い悪魔も天使も陽気に踊り
漆黒の空に鳳凰が登場する
夢でも見たことのないスペクタクル!
大人も子どもも皆夢中で見上げ歓声をあげる
勿論、アイも日常の小さな不満など忘れとてもとても愉快な気持ちになりつつも、この花火をつくりあげているヒューゴを誇らしく感じていた
:
数時間後
ファンタスティックな花火のショーの興奮さめやらぬ街を抜けて家路につき
アイはお茶を飲みながら余韻に浸り幸せを噛み締めていた
「ああ、今夜はうんとヒューゴを愛したい気分だけど、疲れているだろうから寝かせてあげるべきかな
添い寝できるだけでも僕は幸せだな」
そんな物思いを
ドンドン、ドンドン!
とても乱暴なノックの音がかき消した
「アイ!開けて!大変なんだ」
「トーマスさん?」
「アイ!早く病院に行って…!ヒューゴさんが大火傷を負って運ばれたんだよ」
アイの一日中カラフルでビビッドだった頭の中は一瞬で弾けたちまち色を失った。
:
「ヒューゴ…ッ!」
ドアを勢いよく開けてアイは
息があがるのも汗が吹き出るのも構わずにベッドに横たわる彼のもとへ駆け寄る。
「アイ、来てくれたんだな、なんだ大袈裟だな」
「ヒューゴ…あぁ…なんてこと」
アイは蒼白になって呻く
ヒューゴは顔面の左側と首、腕に分厚い包帯を巻かれ、
朝の別れ際にはとても元気で美しかった彼がたった十時間ほどたった今はなんとも痛々しげな姿に変わり果ててしまったのだ。
「はは…ちょっとドジを踏んでしまったよ」
自嘲気味に呟くヒューゴ
「花火はどうだった?綺麗だったかい」
「うん、最高だった。みんな夢中になっていたよ。僕も楽しかった…」
「そっか…良かっ…ッた…ッ」
ヒューゴの声が震え耐えきれない涙が包帯に覆われていない右目をつたった
「ヒューゴ、」
アイは抱き締めてやれないもどかしさに唇を噛み
「心配しないで。僕がずっと側にいるから、ヒューゴは元気になることだけ考えて」
と言うと彼の右手に口づけた
「大袈裟だな…ッ」
ヒューゴはちょっと悪態をつきつつも痛む体から力を抜き右目を閉じた
:
一週間後、アイはその日
片手には茶色の紙袋、あの日渡せなかったお菓子を買い込み愛しい人を迎えに行った。
ヒューゴは退院し帰って来たのだ
久しぶりに笑い声が家に響く
ヒューゴは包帯が薄手のものになり、慣れた家で終始
朗らかな様子だった彼の表情が沈みはじめたのは
夜
「ヒューゴ、入るよ」
病院で教わった手当てをするためヒューゴの寝室を訪れたアイは不安でいっぱいな彼の様子に心を痛めたが
待ち焦がれたふたりきりの時間への幸福感の方が遥かに勝った。
「アイ、やっぱり俺自分でやれるよ」
「ダメ、ヒューゴ、大人しく僕に任せて。ヒューゴのために何かできるのが嬉しいんだ。それに、この体は僕のものだよ」
「…ッ!…はぁ…。アイは本当に…、」
その言葉にヒューゴはため息をつくしかない
スルスルと包帯をほどけば、露になるまだ完治していない皮膚
アイは水で濡らしたガーゼを
所々引きつれ朱色になった肌にあて冷やし
それが済むとたっぷりの軟膏を塗り清潔な包帯を巻き直す。
小さな呻きを漏らしながらもされるがままになっていたヒューゴだが、顔の包帯に手がかかったそのとき
突然拒絶の声を上げ、いやいやと顔を振った。
「いや…!やめて、お願いだから!アイ!」
「ヒューゴ…!ヒューゴ…ごめんね。そこはしないよ
落ち着いて。顔の手当ては自分でできるかい?」
こんなふうに取り乱したヒューゴを見たのは初めてで一刻も早く安心させるためにも
右頬を撫でながら涙が滲む右目にキスを落としながら言い聞かせると
ヒューゴの体からは震えがおさまったが
彼がとても小さくなってしまったように見えたアイにこれもまた初めて味わう庇護欲が芽生えた。
なんて可哀想でか弱くて可愛い…
気がつけば、口づけをしていた
震える唇に舌を挿し込み口腔を愛撫するとヒューゴのため息が洩れ、息が絶え絶えになるまで夢中で貪り合った。
泣いたから少し塩辛い。
飲み込み切れない唾液がヒューゴの顎、首に伝い
それをアイの熱い舌が追いかけた
そしてココ
「あぁ…んッ!」
大好物の小さな胸の飾り。アイはここを食べるのが大好きなのだ。
右側を柔らかく先端を舐め、舌で押し潰し、甘噛みして
ヒューゴが「うんんッ」と鳴けば慰めるみたいに包み込む
左側に切なさを覚えれば直ぐに察してそちらも攻めた。
「ああぁ、あんッ…アッ、アッ」
「ヒューゴ、ヒューゴ…あぁ…すっごく感じてる、」
なんだか弱みにつけこんでいるようで心は痛むが
いつもクールな年上の彼のいつもより素直な痴態にアイの興奮も高まる
「あぁ…ッ、ふぅぅん…」
ヒューゴが胸の快感に溺れている隙にズボンと下着をおろし、羞恥心を感じる間も与えぬ素早さで
足を割り開きすっかり勃ちあがったソコに手を絡ませた
「あぁ…ッ、!」
鮮烈な快感に驚くヒューゴの体をやんわりと抑え
乳首同様に大好きな雄芯を呑み込んでいく
じゅぷりじゅぷり、と響く水音
弱いところを伝う熱い舌
「ああぁんッ…ッ…ひんッ」
可愛い鳴き声に煽られアイの舌はヒューゴのもっと感じる恥ずかしい、小さなすぼまりにたどり着いてしまう
「アイ…ッ!やぁ…ッ!ダメ、だ…ああぁん」
「ダメじゃない。はぁ…ッ、美味しい、ヒューゴのお尻…んん~」
まるで先ほど上の唇にしていたようなディープキスを後孔に施され股関に伸ばされた指先で亀頭を優しく苛められ
最早自分の体をコントロールできないヒューゴはシーツを握りしめ
「アイーーー…ッ!!…」
愛しい名前を叫びながら達した
「んあァッ、ヒューゴ…!」
腹に飛び散ったおびただしい量の白濁をやっと与えられたご馳走のように舌ですくい再び尻の間に顔を埋めた
更に指での愛撫も加わり達したばかりのヒューゴは半狂乱になってのたうった。
「ああぁんッ!ああぁ…ッダメッダメ、いやァッ」
「ヒューゴ、暴れないで…火傷に響くよ」
「なら、それヤメロって…あうぅッ…ッ」
「ごめんね、ならゆっくり…こういうのはどう…?」
とナカにおさまった指先を壁を這う蛞蝓のように動かされ、ヒューゴはすすり泣きに近い声で哀願する。
「アイ…ッお願…苦しい、此処切なすぎて…ッ」
「………ッ」
耳元で消え入るような声で紡がれたかわいらしいおねだりにアイは獣じみた呻きを上げながら白い足を抱え
その願いに応えた
「ヒッ、う…わぁぁあああんッ…ッ!」
ずるりと入り込んできた圧倒的な質量にヒューゴは我を忘れる
「やぁ…ッ!あぁ…ッひん~~」
顔を真っ赤にしながら泣きじゃくる顔に快楽で歪んだアイの顔と大きな手が近づく…不意に頭を撫でられたと思ったら
しゅるり、
「あ…ッ…!?」
あっという間に顔の左側を覆っていた包帯を外されてしまっていた
「あ…ッ…ッ、嫌、アッ…なんで、酷…」
ヒューゴは絶望したが顔を覆い隠そうとした手を捕まれ這い上がれぬどん底に落とされたような、
火傷でひきつった皮膚、眉毛は剥げてしまい耳たぶはすこし溶けたみたいになっていた…鏡で見て絶望したこの顔を最愛の男の視線に晒される惨めさに瞼を伏せた。
もう、消えてしまいたい
「ヒューゴ、目を開けて」
「や…ッ」
「両目で僕を見て…大丈夫、お願い」
「怖がらないで…そう」
「アイ…ッ」
「やっぱり綺麗だ。すごく綺麗だ…大好き、ヒューゴ。イクまで僕から目を逸らさないで」
ヒューゴの顔を心からいとおしげに見つめ、か弱くなった体を己の逞しい腕でくるむと
全てを奪い去るべく律動を再開した。
:
「ヒューゴー!ヒューゴッてば」
穏やかな陽気が射し込む部屋で夢と現実の間を心地良く往き来していたヒューゴは大きな声で覚醒を促された
「…、はよ。アイ…、」
寝ぼけ眼は昨夜の情事の跡を残し腫れぼったい
「おはようじゃないよ。もう昼前だよ、起きろ~」
言いつつ
サイドテーブルをベッドの側まで引き寄せるアイ。
促されモソモソと起き上がると腰に雷が落ちてヒューゴは悲鳴をあげる。
「痛ッ…ッう~」
「ああぁ、やっぱり。やり過ぎちゃったね」
アイの言葉に涙目で睨み付けながら、漸く夢と現実の違いを把握する
(病み上がりかけの相手にそんなにするか、普通)
痛いような嬉しいような複雑な感じ…。
「動けないと思ってさ、朝食を持って来たんだよ」
いつもの1.5倍ほどの量が乗せられた盆を見てヒューゴの顔が「う…」と引きつるが
「いっぱい食べて栄養摂らないと」
ドンとサイドテーブルに置きつつアイのお説教が始まった。
「治るものも治らないよ。火傷はともかくヒューゴ、またちょっと痩せたでしょう。もう少し肉付き良くしてくれないと挿れたとき骨が当たって痛いんだよね…」
「ア、ア、ア…アイーーーーーッ!」
(なんてこと言うんだコイツ)
「あはは、ヒューゴ真っ赤。とりあえずそれ食べて。僕製図の仕事を済ませなきゃだから部屋に戻るけど動くのが辛かったら呼んで」
パタン
…
アイが出ていったドアをヒューゴは紅潮した顔でしばらく眺め
「はぁ…」とため息をつき
朝食の傍らに置かれていた揚げ菓子に手を伸ばし
齧った
「甘…ッ」
予想以上の甘さに、腰の痛みに、火傷を負った悲しみに、
アイから注がれる愛に
ヒューゴの
鼻がツーンと染みた。
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