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悪夢再び
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その日の夜、カロラインはおかしな夢を見た。
広く長い一本道を、ただひたすら歩く夢を。
(どこかしら、ここは……)
ふと、顔を上げると道の先で誰かが佇んでいた。
「カロリーナ、待っていたぞ」
その人は蕩けるような目でカロラインを見つめ、優しい声音で彼女の名を呼ぶ。
黄金色の瞳と目が合ったカロラインは嬉しそうに彼の元へと駆け寄った。
「ベリル様! お会いしとうございました!」
駆け寄ってきた彼女の体が自分の胸へと飛び込むその時、男の瞳が怪しげに光る。
「やっと捕まえた……」とまるで地を這うように低い声がカロラインの耳元に届いた瞬間、彼女は急に正気を取り戻した。
「え? ひっ……!? い、いやっ……!!」
間一髪、男の元へと飛び込む前にカロラインはその場に踏みとどまり、後ろにのけぞる。
すると態勢を崩し、その場に倒れこんでしまうが、それでも必死に這いながら男と距離をとった。
「な……なに!? どうして貴方がここに……!!?」
危なかった、とカロラインは息を乱しながら男の顔を見上げる。
人外の美貌を持つ、黄金色の瞳の彼はカロラインが最も会いたくなかった相手。
己を神と自称する青年、ベリルが両腕を広げてそこに佇んでいた。
「……つれないな、カロリーナ。其方がいつまで経っても我が元へと来てくれないから、こうして迎えに来たというのに……」
「い、いりません、迎えなんて! わたくしが貴方の元へと行くことはありませんので!」
カロラインは今の状況にひどく困惑していた。
ここが何処だとか、何故彼がいるのかとか、どうして自分がここにいるのかとか、聞きたいことは山ほどある。
だけど今一番知りたいことは、何故自分があのような行動をとったかだ。
(わたくしはどうしてこの男に対してあんな態度をとったの? あんな、まるで恋焦がれる相手にするかのような行動を……!)
カロラインはこの神を自称する男をひどく恐れている。
外見は美しいが、中身は己の欲望に忠実で身勝手な獣のようなこの男を。
二度と会いたくない。会ったら何をされるか分からない。
そう恐れて接触を避けていた自分が何故あのような行動に出たのか理解不能だ。
(とにかく今は逃げないと……!)
この場から急いで立ち去りたいのに、恐怖で腰が抜けて立ち上がれない。
せめてこちらに近づけないようにと睨みつけるカロラインにショックを受けたのか、彼は優しい笑みから一転して目を吊り上げて怒り出した。
「何だ、その目は!? それに其方は我が花嫁だ! ならば我が元へと来るのは当然であろう!」
「いいえ、違います! わたくしは貴方の花嫁ではありません! なので、貴方の元に行くことはありません!」
「いいや、其方は我が花嫁だ! 我と契りを交わし、永遠の愛を誓った身! 逆らうことなど許されんぞ!」
「は……? 契り? 永遠の愛? いえ、どちらも覚えがありませんけど?」
この青年と会ったのはあの日、一度きり。
初対面の相手に永遠の愛を誓うことも契りを交わすことも、常識的に考えて有り得ないし身に覚えもない。
カロラインは青年の言葉に違和感を覚えた。
「忘れたのか……? あの神殿で幾度となく愛を交わしあったではないか! 我は其方の温もりも、甘い声も、我を見つめる甘いハシバミ色の瞳も、全て覚えている。一度も忘れたことなどない……愛しい我が番である其方のことを!」
ハシバミ色? 彼は何を言っているのだろう。
カロラインの瞳は夜明け前の空に似た濃い青色。
黄色系のハシバミとは似ても似つかない。
青年の意味不明ながらも、こちらを欲望の対象として見ていることを意味する言葉にカロラインは悍ましさで鳥肌が立った。
(気持ち悪い! 何を言っているのよ、こいつは……!)
好きでもない、むしろ嫌悪している相手から性的な目で見られることはここまで気持ち悪いものなのか。
粟立った肌を擦りながらカロラインの頭にある考えがよぎった。
(まさか……わたくしとカロリーナを同じものだと考えている……?)
初対面からあった違和感。
それは青年がカロリーナとカロラインは同一視しているのではないかというもの。
「……貴方が仰っているのは、貴方の元妻であるカロリーナさんとの想い出でしょう? わたくしとは何ら関わりのないものですわ……」
「は? 何を言っている? 其方はカロリーナだ。同じ魂ということは、同一人物だということだ。記憶は失くしているかもしれんが、我と其方が愛し合ったということは事実。今更無かったことにする気か?」
彼の返答にカロラインは確信した。
やはり彼はカロラインとカロリーナは同一視していると。
(彼にとってわたくしはカロリーナの延長線でしかないのだわ。だからわたくしの名を尋ねたりしないのね……)
ずっと不思議だった。愛を囁く割にはこちらの名前すら尋ねないことに。
彼にとってカロラインはあくまでもカロリーナが生まれ変わっただけの存在。
魂が同じならば、カロラインの存在はカロリーナと同じだという雑極まりない考えをしているのだろう。
魂が同じならば肉体が変わろうとも存在は同じ。
今世の姿は前世の姿が記憶を失っただけの存在。
彼の頭の中ではそうなっているのだろう。
だから前世で愛し合ったから、今世でも愛し合えるという根拠のない考えを堂々と言えるのだ。
「……無かったことも何も、元から無いのです。わたくしは貴方を愛した覚えはありませんし、これからもありません」
カロラインはきっぱりと青年に拒絶の言葉を告げた。
彼に前世と今世は同じ存在か否かという、哲学的な事について議論する気はない。
議論したとしても、人の話を聞かなそうな彼に言ったところで徒労に終わると思うからだ。
「おい、我儘も大概にしろ! 其方が我の花嫁という事実は変わらん!」
「いいえ、事実ではありません。それに貴方は“カロリーナ”を無残に死なせたではないですか? それで愛していると、どの口が言うのです?」
危険だから目の前の男をあまり刺激するべきではない。
頭ではそう分かっていても、カロラインは自分が止められなかった。
愛していると言いながら、最愛の存在をゴミのように捨てたこの男がどうしても許せないからだ。
「死なせた? 何を言っている。カロリーナは病で亡くなったのだぞ? 我が手を下したわけではない」
「病ですか……。では、どうして彼女に何の治療も施さなかったのです? 病を放置したせいで彼女は亡くなったのですよ? 最愛の存在だというのなら、助かってほしいと何らかの治療をするものではなくて?」
「治療? 何だそれは?」
「え? 何だとは……どういう意味です?」
「だからその“治療”とは何だと聞いている」
「…………は?」
治療、という言葉に首を傾げる青年を見てカロラインは呆気にとられた。
「治療とは、病や怪我を治すことです。薬や療養などを用いて体を健康な状態に戻そうとする行いともいいますか……」
「ふうん……? 人間はそういうことをするのか。野生ではそういったものがないから分からんな」
(野生……? 何それ、まるで動物みたいなことを言うのね?)
人の形を取り、人の言葉を話すのでカロラインは青年を人と同じよう存在だと見ていた。
でも彼の発言でそれは間違いだったと今更ながら気づく。
彼が本当に神かどうかは分からない。
だけど、人間ではない存在ということは確かだ。
「分からない方と共に暮らすなど出来ません。人は誰だって年をとるし、病にだってかかります。それを治療する環境がないと、生きていくことも難しい。わたくしはそんなの御免です」
この男が持っているのは“衰えぬ美貌”だけ。
見た目以外取り柄のない、しかも人間ですらない男の花嫁になっても一つも嬉しくない。
「其方に拒否権などない! 其方は我が花嫁だ! その証を受け取っておきながら、今更無かったことになど出来んぞ!」
ああ、やはり話が通じない。
花嫁にとこちらを望むくせに、こちらの意見はまるで無視。
そんな奴と夫婦になるなどお断りだ。
「わたくしが貴方の花嫁? お断りですわ! その証と言うのがあの気味悪い花だと? だったらお返しいたします! だから二度とわたくしに近づかないで!!」
精一杯拒絶の言葉を叫ぶと、男は再び目を吊り上げて激高する。
「人間風情が生意気な!! もういい、お前の意志など知らん。力づくでも我が住処へと連れ帰ってやる!」
男の手が伸びたその時、カロラインの手の平に何か石のようなものが具現化した。
彼女はそれが何かを確認する前に、ほぼ無意識で男へと投げつけた。
それが男の体に当たった瞬間、彼の体が光に包まれる。そして辺りにつんざくような男の悲鳴が響き渡った。
「…………っ!!?」
あまりにも悍ましい悲鳴にカロラインは思わず耳を塞いで固く目を瞑った。
しばらくして悲鳴が聞こえなくなり目を開けると、男の姿は消え、地面に透明な水晶が転がっていた。
「これは……神父様がくださった水晶?」
カロラインは水晶を拾い、大切そうにそれを両手で握りしめた。
“透明な水晶には魔除けの効果があります。これが少しでも貴女の身を守ってくれることを願って”
ああ、この水晶があいつを追い払ってくれた。
それを理解したカロラインの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「神父様……ありがとうございます」
あの方のおかげで助かった。
遠く離れていても、あの方はこうやって守ってくれる。
神を自称する青年に連れ去られそうになった恐怖が消え、胸に温かくで甘い気持ちが満ちた。
広く長い一本道を、ただひたすら歩く夢を。
(どこかしら、ここは……)
ふと、顔を上げると道の先で誰かが佇んでいた。
「カロリーナ、待っていたぞ」
その人は蕩けるような目でカロラインを見つめ、優しい声音で彼女の名を呼ぶ。
黄金色の瞳と目が合ったカロラインは嬉しそうに彼の元へと駆け寄った。
「ベリル様! お会いしとうございました!」
駆け寄ってきた彼女の体が自分の胸へと飛び込むその時、男の瞳が怪しげに光る。
「やっと捕まえた……」とまるで地を這うように低い声がカロラインの耳元に届いた瞬間、彼女は急に正気を取り戻した。
「え? ひっ……!? い、いやっ……!!」
間一髪、男の元へと飛び込む前にカロラインはその場に踏みとどまり、後ろにのけぞる。
すると態勢を崩し、その場に倒れこんでしまうが、それでも必死に這いながら男と距離をとった。
「な……なに!? どうして貴方がここに……!!?」
危なかった、とカロラインは息を乱しながら男の顔を見上げる。
人外の美貌を持つ、黄金色の瞳の彼はカロラインが最も会いたくなかった相手。
己を神と自称する青年、ベリルが両腕を広げてそこに佇んでいた。
「……つれないな、カロリーナ。其方がいつまで経っても我が元へと来てくれないから、こうして迎えに来たというのに……」
「い、いりません、迎えなんて! わたくしが貴方の元へと行くことはありませんので!」
カロラインは今の状況にひどく困惑していた。
ここが何処だとか、何故彼がいるのかとか、どうして自分がここにいるのかとか、聞きたいことは山ほどある。
だけど今一番知りたいことは、何故自分があのような行動をとったかだ。
(わたくしはどうしてこの男に対してあんな態度をとったの? あんな、まるで恋焦がれる相手にするかのような行動を……!)
カロラインはこの神を自称する男をひどく恐れている。
外見は美しいが、中身は己の欲望に忠実で身勝手な獣のようなこの男を。
二度と会いたくない。会ったら何をされるか分からない。
そう恐れて接触を避けていた自分が何故あのような行動に出たのか理解不能だ。
(とにかく今は逃げないと……!)
この場から急いで立ち去りたいのに、恐怖で腰が抜けて立ち上がれない。
せめてこちらに近づけないようにと睨みつけるカロラインにショックを受けたのか、彼は優しい笑みから一転して目を吊り上げて怒り出した。
「何だ、その目は!? それに其方は我が花嫁だ! ならば我が元へと来るのは当然であろう!」
「いいえ、違います! わたくしは貴方の花嫁ではありません! なので、貴方の元に行くことはありません!」
「いいや、其方は我が花嫁だ! 我と契りを交わし、永遠の愛を誓った身! 逆らうことなど許されんぞ!」
「は……? 契り? 永遠の愛? いえ、どちらも覚えがありませんけど?」
この青年と会ったのはあの日、一度きり。
初対面の相手に永遠の愛を誓うことも契りを交わすことも、常識的に考えて有り得ないし身に覚えもない。
カロラインは青年の言葉に違和感を覚えた。
「忘れたのか……? あの神殿で幾度となく愛を交わしあったではないか! 我は其方の温もりも、甘い声も、我を見つめる甘いハシバミ色の瞳も、全て覚えている。一度も忘れたことなどない……愛しい我が番である其方のことを!」
ハシバミ色? 彼は何を言っているのだろう。
カロラインの瞳は夜明け前の空に似た濃い青色。
黄色系のハシバミとは似ても似つかない。
青年の意味不明ながらも、こちらを欲望の対象として見ていることを意味する言葉にカロラインは悍ましさで鳥肌が立った。
(気持ち悪い! 何を言っているのよ、こいつは……!)
好きでもない、むしろ嫌悪している相手から性的な目で見られることはここまで気持ち悪いものなのか。
粟立った肌を擦りながらカロラインの頭にある考えがよぎった。
(まさか……わたくしとカロリーナを同じものだと考えている……?)
初対面からあった違和感。
それは青年がカロリーナとカロラインは同一視しているのではないかというもの。
「……貴方が仰っているのは、貴方の元妻であるカロリーナさんとの想い出でしょう? わたくしとは何ら関わりのないものですわ……」
「は? 何を言っている? 其方はカロリーナだ。同じ魂ということは、同一人物だということだ。記憶は失くしているかもしれんが、我と其方が愛し合ったということは事実。今更無かったことにする気か?」
彼の返答にカロラインは確信した。
やはり彼はカロラインとカロリーナは同一視していると。
(彼にとってわたくしはカロリーナの延長線でしかないのだわ。だからわたくしの名を尋ねたりしないのね……)
ずっと不思議だった。愛を囁く割にはこちらの名前すら尋ねないことに。
彼にとってカロラインはあくまでもカロリーナが生まれ変わっただけの存在。
魂が同じならば、カロラインの存在はカロリーナと同じだという雑極まりない考えをしているのだろう。
魂が同じならば肉体が変わろうとも存在は同じ。
今世の姿は前世の姿が記憶を失っただけの存在。
彼の頭の中ではそうなっているのだろう。
だから前世で愛し合ったから、今世でも愛し合えるという根拠のない考えを堂々と言えるのだ。
「……無かったことも何も、元から無いのです。わたくしは貴方を愛した覚えはありませんし、これからもありません」
カロラインはきっぱりと青年に拒絶の言葉を告げた。
彼に前世と今世は同じ存在か否かという、哲学的な事について議論する気はない。
議論したとしても、人の話を聞かなそうな彼に言ったところで徒労に終わると思うからだ。
「おい、我儘も大概にしろ! 其方が我の花嫁という事実は変わらん!」
「いいえ、事実ではありません。それに貴方は“カロリーナ”を無残に死なせたではないですか? それで愛していると、どの口が言うのです?」
危険だから目の前の男をあまり刺激するべきではない。
頭ではそう分かっていても、カロラインは自分が止められなかった。
愛していると言いながら、最愛の存在をゴミのように捨てたこの男がどうしても許せないからだ。
「死なせた? 何を言っている。カロリーナは病で亡くなったのだぞ? 我が手を下したわけではない」
「病ですか……。では、どうして彼女に何の治療も施さなかったのです? 病を放置したせいで彼女は亡くなったのですよ? 最愛の存在だというのなら、助かってほしいと何らかの治療をするものではなくて?」
「治療? 何だそれは?」
「え? 何だとは……どういう意味です?」
「だからその“治療”とは何だと聞いている」
「…………は?」
治療、という言葉に首を傾げる青年を見てカロラインは呆気にとられた。
「治療とは、病や怪我を治すことです。薬や療養などを用いて体を健康な状態に戻そうとする行いともいいますか……」
「ふうん……? 人間はそういうことをするのか。野生ではそういったものがないから分からんな」
(野生……? 何それ、まるで動物みたいなことを言うのね?)
人の形を取り、人の言葉を話すのでカロラインは青年を人と同じよう存在だと見ていた。
でも彼の発言でそれは間違いだったと今更ながら気づく。
彼が本当に神かどうかは分からない。
だけど、人間ではない存在ということは確かだ。
「分からない方と共に暮らすなど出来ません。人は誰だって年をとるし、病にだってかかります。それを治療する環境がないと、生きていくことも難しい。わたくしはそんなの御免です」
この男が持っているのは“衰えぬ美貌”だけ。
見た目以外取り柄のない、しかも人間ですらない男の花嫁になっても一つも嬉しくない。
「其方に拒否権などない! 其方は我が花嫁だ! その証を受け取っておきながら、今更無かったことになど出来んぞ!」
ああ、やはり話が通じない。
花嫁にとこちらを望むくせに、こちらの意見はまるで無視。
そんな奴と夫婦になるなどお断りだ。
「わたくしが貴方の花嫁? お断りですわ! その証と言うのがあの気味悪い花だと? だったらお返しいたします! だから二度とわたくしに近づかないで!!」
精一杯拒絶の言葉を叫ぶと、男は再び目を吊り上げて激高する。
「人間風情が生意気な!! もういい、お前の意志など知らん。力づくでも我が住処へと連れ帰ってやる!」
男の手が伸びたその時、カロラインの手の平に何か石のようなものが具現化した。
彼女はそれが何かを確認する前に、ほぼ無意識で男へと投げつけた。
それが男の体に当たった瞬間、彼の体が光に包まれる。そして辺りにつんざくような男の悲鳴が響き渡った。
「…………っ!!?」
あまりにも悍ましい悲鳴にカロラインは思わず耳を塞いで固く目を瞑った。
しばらくして悲鳴が聞こえなくなり目を開けると、男の姿は消え、地面に透明な水晶が転がっていた。
「これは……神父様がくださった水晶?」
カロラインは水晶を拾い、大切そうにそれを両手で握りしめた。
“透明な水晶には魔除けの効果があります。これが少しでも貴女の身を守ってくれることを願って”
ああ、この水晶があいつを追い払ってくれた。
それを理解したカロラインの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「神父様……ありがとうございます」
あの方のおかげで助かった。
遠く離れていても、あの方はこうやって守ってくれる。
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