私が貴方の花嫁？ お断りします！

彼の妻の生まれ変わり

「カロリーナは我が妻だった女だ。大分前に死に別れてしまったがな……。其方は我が妻、カロリーナの生まれ変わりよ」

「え？　わたくしが貴方の妻の生まれ変わり……？」

　そういえばここへ来る前にも同じことを言われたなとカロラインはハッとした。
　そして改めて青年の方に顔を向け、その端正な美貌に再び酔いしれる。

（わたくしの前世がこの方の妻……。こんな、美しい方と……？）

　前世の自分はこの誰をも魅了する美貌を持った男性の妻だった。
　そんな恋物語のような展開にカロラインは陶酔し、熱を孕んだ瞳で青年を見つめる。

「美しい……。我が愛しの乙女、カロリーナよ。其方は真に美しいな……」

　青年が自分の名前を昔の妻の名で呼ぶことにカロラインは少し引っかかったが、彼の美貌を前にするとそんな些細な事はどうでもよくなる。

　見つめあう二人の顔が徐々に近づき、唇が合わさろうとしたその瞬間カロラインの頭に婚約者の顔が浮かんだ。

「い……いけません！　わたくしには婚約者がおりますの！」

　いくら相手が逢瀬に別の女をぶらさげて現れる屑男だとしても、正式に家同士で婚約を交わした以上、不貞は許されない。真面目なカロラインは婚約者以外の男との触れ合いに土壇場で怖れを感じ、彼を拒絶した。

「婚約者がいる？　なら別れればいいのではないか？」

「いえ、残念ながらそう簡単に婚約を破棄することは出来ないのです……。家同士の婚約は契約ですから」

　両家の婚約には事業提携が絡んでいる。
　婚約を破棄すれば、両家に多大な損失が出てしまいかねない。