52 / 109
仕込んだナイフと剥き出しのナイフ
しおりを挟む
「何かしら? 騒がしいわね……」
アンゼリカは立ち上がり、外の様子を確かめるべく入り口の方へと向かう。
それをサラマンドラ家の侍女が慌てて止めようとして「グリフォン公爵令嬢、危険ですのでここでお待ちを!」と叫ぶ。それをアンゼリカの専属侍女が「お嬢様でしたら大丈夫です。ご安心を」と無表情で返した。
「お嬢様、こちらを」
「ありがとう、サラ」
アンゼリカの専属侍女、サラが恭しく扇子を差し出した。
一般的な物よりも一回り程大きめなそれをアンゼリカは両手で握り、左右へと引き抜く。するとそこには鈍色に輝くナイフが姿を現した。
「さて、と。騒ぎの元凶は……あちらの方角ね」
手慣れた様子でナイフを持ち、騒ぎの元へと向かう。
その姿は貴族令嬢というよりも手練れの暗殺者のそれだ。
ちなみにこのナイフはアンゼリカの父、グリフォン公爵が特注で作らせたもの。
以前、娘が素手で騎士団長の息子を再起不能にしてしまったことを彼は「やり過ぎだ」と叱った。
『お前の腕力はゴリラ並なのだから気をつけなさい』
そう叱った後、公爵は扇子に擬態させた仕込みナイフを娘へと渡した。
素手だとやり過ぎてしまうだろうが、ナイフならば多少加減は出来るだろうと考えたからだ。
およそ貴族が娘へとかける言葉ではない。アンゼリカもアンゼリカで「流石はお父様!」と感激したのだから似た者同士ではあるが。ちなみにその様子を見ても”恐ろしい親子だ”と恐怖するような者はいない。グリフォン公爵家ではこれくらい日常茶飯事なのだから。
ぎゃあぎゃあと甲高い声が聞こえる方へと向かうと、そこには豪奢なドレスを身に纏った女性が髪を振り乱しながら騒いでいた。
「放してよ! あの女はどこ!? あの女がいるせいでレイモンド様と私は離れることになったのよ!? 絶対に許さないわ……!」
顔を真っ赤に染め、鼻息荒く喚き続ける女。見ればその手には鈍く光るナイフが握られていた。
「止めろ、ハウンド嬢! いいからそのナイフを下ろすんだ!」
それを止めようとレイモンドが女に近づこうとするも、興奮した女は己の喉元に刃の先を当て「来ないで! 近づいたら死んでやるんだから!」と自らを盾に脅す。
その様子を黙って眺めていたアンゼリカは心の中で「状況は分からないけど、自死してくれるならそれで終わるじゃない」と心無い事を考えていた。合理主義な彼女にとって、目の前の乱入者が大人しくなるならそれで構わないのだ。むしろ、その程度で怯むレイモンドを“甘い”とすら思う。
「あの女さえいなければ……私はレイモンド様の妻になれていたはずなのに! あんな壊れた女のせいで、どうして私が婚約解消されなければならないのよ!?」
よくは分からないが、まあ痴話喧嘩の類なのだろうなとアンゼリカはぼんやりと彼等のやり取りを物陰から見つめていた。ミラージュが危ない目に遭わぬよう騒ぎの元を見に来たが、レイモンドとのいざこざであれば別にいいかと温室に戻ろうとしたその時だった。
「王太子に捨てられた情けないミラージュを邸に置くことを反対したくらいで、どうして婚約を解消されなければならないの!? 新婚夫婦の家に妹なんていたら邪魔に決まっているじゃない! 私は当たり前のことを言っただけよ!」
「ハウンド嬢! 妹を悪く言うのは止めろ! 妹は被害者だぞ!? 被害者を悪く言うなんてどうかしている!」
「ひ、ひどい! そうやって妹ばかり庇って……! あんな女、いなくなっちゃえばいいのよ!」
女は決して言ってはいけない事を言ってしまった。
案の定、アンゼリカの纏う空気が一変し、慣れているはずのサラでさえ恐怖で「ひいっ!?」と小さく悲鳴をあげてしまう。
「まあ……ふざけたご令嬢ですこと。何処のどなたかは知りませんが、いなくなるのは貴女のほうではなくて? この世からおさらばしたいのでしたら、お手伝いして差し上げましてよ……」
「は? 誰よ、あんた……ひっ!? ひいいいいっ!!?」
素早く女の背後に回ったアンゼリカは地を這うような低い声で囁いた。
そう、もちろん女の耳元で。
いきなり背後から耳元で囁かれた女は驚いて後ろを振り向き、そしてヒュッと息を飲んだ。
そこには、悪魔さえも裸足で逃げ出すほど恐ろしい形相をした少女がこちらを睨みつけていた。
「身の程を弁えなさい。貴女と公子様の間に何があったかは知らないけど、ミラージュ様への侮辱は許されなくてよ。貴女……このわたくしに許されないという意味が、どういうことだかは理解しているかしら?」
そう言い放つと同時にアンゼリカはナイフを掲げてそのまま女に向かって振り下ろした。あまりの速さに女は悲鳴をあげることも出来ず、次の瞬間、彼女が着ていたドレスが真っ二つに裂け、白い肌が露わとなった。
「へ…………? え? あ……い、いやあああああああ!!!」
ドレスどころかコルセットまで裂かれた女はドロワーズ一枚でその場にへたり込んだ。自らを抱きしめるように曝け出された肌を隠そうとするも、面積が広すぎて隠しきれない。ちなみにナイフは彼女の手から離れ地面にへと落ちた。
「な、なによ、これえええ!? なんでドレスが破れているの!??」
何が何だか分からない、といった様子で泣きじゃくる女をアンゼリカは冷めた目で見下ろした。そしてサラへと目配せし、それだけで主人の気持ちを理解したサラがこくりと頷く。
「失礼します。お召し物の替えをご用意しておりますので、あちらへ」
「え? 着替え? え……?」
「ええ、そのお姿のままではいられないでしょう?」
見知らぬ侍女にいきなりそう言われ、驚いて女は一瞬涙を引っ込めた。
だが「そのお姿」と言われて改めて自分の姿に目を落とすと再び大粒の涙を零し始める。
「なんで? なんでドレスが破れているの……? レイモンド様の前でこんな……もう、いやあ!!」
人前でいきなり服が破れたなら、男女問わず耐えがたいほどの恥ずかしさを覚えるだろう。ましてや深窓の令嬢であれば尚更だ。
サラはほぼ裸の状態で泣きじゃくる女を背負い、再びアンゼリカに向かって一礼をした後その場を離れて行った。
嵐のような出来事が終止符を打ち、その場に残されたのはアンゼリカとレイモンド、そしてサラマンドラ家の執事だけだった。何が起こったか分からず唖然とする二人を気にせずアンゼリカはナイフを再び扇子の形をとる鞘へと戻す。
鈍色の刃を鞘へと収める際の、パチンという小気味よい音だけがその場に響いた。
────────────
GW中は帰省等の都合で一日一回の更新にさせて頂きます。
その後は元に戻す予定です。
アンゼリカは立ち上がり、外の様子を確かめるべく入り口の方へと向かう。
それをサラマンドラ家の侍女が慌てて止めようとして「グリフォン公爵令嬢、危険ですのでここでお待ちを!」と叫ぶ。それをアンゼリカの専属侍女が「お嬢様でしたら大丈夫です。ご安心を」と無表情で返した。
「お嬢様、こちらを」
「ありがとう、サラ」
アンゼリカの専属侍女、サラが恭しく扇子を差し出した。
一般的な物よりも一回り程大きめなそれをアンゼリカは両手で握り、左右へと引き抜く。するとそこには鈍色に輝くナイフが姿を現した。
「さて、と。騒ぎの元凶は……あちらの方角ね」
手慣れた様子でナイフを持ち、騒ぎの元へと向かう。
その姿は貴族令嬢というよりも手練れの暗殺者のそれだ。
ちなみにこのナイフはアンゼリカの父、グリフォン公爵が特注で作らせたもの。
以前、娘が素手で騎士団長の息子を再起不能にしてしまったことを彼は「やり過ぎだ」と叱った。
『お前の腕力はゴリラ並なのだから気をつけなさい』
そう叱った後、公爵は扇子に擬態させた仕込みナイフを娘へと渡した。
素手だとやり過ぎてしまうだろうが、ナイフならば多少加減は出来るだろうと考えたからだ。
およそ貴族が娘へとかける言葉ではない。アンゼリカもアンゼリカで「流石はお父様!」と感激したのだから似た者同士ではあるが。ちなみにその様子を見ても”恐ろしい親子だ”と恐怖するような者はいない。グリフォン公爵家ではこれくらい日常茶飯事なのだから。
ぎゃあぎゃあと甲高い声が聞こえる方へと向かうと、そこには豪奢なドレスを身に纏った女性が髪を振り乱しながら騒いでいた。
「放してよ! あの女はどこ!? あの女がいるせいでレイモンド様と私は離れることになったのよ!? 絶対に許さないわ……!」
顔を真っ赤に染め、鼻息荒く喚き続ける女。見ればその手には鈍く光るナイフが握られていた。
「止めろ、ハウンド嬢! いいからそのナイフを下ろすんだ!」
それを止めようとレイモンドが女に近づこうとするも、興奮した女は己の喉元に刃の先を当て「来ないで! 近づいたら死んでやるんだから!」と自らを盾に脅す。
その様子を黙って眺めていたアンゼリカは心の中で「状況は分からないけど、自死してくれるならそれで終わるじゃない」と心無い事を考えていた。合理主義な彼女にとって、目の前の乱入者が大人しくなるならそれで構わないのだ。むしろ、その程度で怯むレイモンドを“甘い”とすら思う。
「あの女さえいなければ……私はレイモンド様の妻になれていたはずなのに! あんな壊れた女のせいで、どうして私が婚約解消されなければならないのよ!?」
よくは分からないが、まあ痴話喧嘩の類なのだろうなとアンゼリカはぼんやりと彼等のやり取りを物陰から見つめていた。ミラージュが危ない目に遭わぬよう騒ぎの元を見に来たが、レイモンドとのいざこざであれば別にいいかと温室に戻ろうとしたその時だった。
「王太子に捨てられた情けないミラージュを邸に置くことを反対したくらいで、どうして婚約を解消されなければならないの!? 新婚夫婦の家に妹なんていたら邪魔に決まっているじゃない! 私は当たり前のことを言っただけよ!」
「ハウンド嬢! 妹を悪く言うのは止めろ! 妹は被害者だぞ!? 被害者を悪く言うなんてどうかしている!」
「ひ、ひどい! そうやって妹ばかり庇って……! あんな女、いなくなっちゃえばいいのよ!」
女は決して言ってはいけない事を言ってしまった。
案の定、アンゼリカの纏う空気が一変し、慣れているはずのサラでさえ恐怖で「ひいっ!?」と小さく悲鳴をあげてしまう。
「まあ……ふざけたご令嬢ですこと。何処のどなたかは知りませんが、いなくなるのは貴女のほうではなくて? この世からおさらばしたいのでしたら、お手伝いして差し上げましてよ……」
「は? 誰よ、あんた……ひっ!? ひいいいいっ!!?」
素早く女の背後に回ったアンゼリカは地を這うような低い声で囁いた。
そう、もちろん女の耳元で。
いきなり背後から耳元で囁かれた女は驚いて後ろを振り向き、そしてヒュッと息を飲んだ。
そこには、悪魔さえも裸足で逃げ出すほど恐ろしい形相をした少女がこちらを睨みつけていた。
「身の程を弁えなさい。貴女と公子様の間に何があったかは知らないけど、ミラージュ様への侮辱は許されなくてよ。貴女……このわたくしに許されないという意味が、どういうことだかは理解しているかしら?」
そう言い放つと同時にアンゼリカはナイフを掲げてそのまま女に向かって振り下ろした。あまりの速さに女は悲鳴をあげることも出来ず、次の瞬間、彼女が着ていたドレスが真っ二つに裂け、白い肌が露わとなった。
「へ…………? え? あ……い、いやあああああああ!!!」
ドレスどころかコルセットまで裂かれた女はドロワーズ一枚でその場にへたり込んだ。自らを抱きしめるように曝け出された肌を隠そうとするも、面積が広すぎて隠しきれない。ちなみにナイフは彼女の手から離れ地面にへと落ちた。
「な、なによ、これえええ!? なんでドレスが破れているの!??」
何が何だか分からない、といった様子で泣きじゃくる女をアンゼリカは冷めた目で見下ろした。そしてサラへと目配せし、それだけで主人の気持ちを理解したサラがこくりと頷く。
「失礼します。お召し物の替えをご用意しておりますので、あちらへ」
「え? 着替え? え……?」
「ええ、そのお姿のままではいられないでしょう?」
見知らぬ侍女にいきなりそう言われ、驚いて女は一瞬涙を引っ込めた。
だが「そのお姿」と言われて改めて自分の姿に目を落とすと再び大粒の涙を零し始める。
「なんで? なんでドレスが破れているの……? レイモンド様の前でこんな……もう、いやあ!!」
人前でいきなり服が破れたなら、男女問わず耐えがたいほどの恥ずかしさを覚えるだろう。ましてや深窓の令嬢であれば尚更だ。
サラはほぼ裸の状態で泣きじゃくる女を背負い、再びアンゼリカに向かって一礼をした後その場を離れて行った。
嵐のような出来事が終止符を打ち、その場に残されたのはアンゼリカとレイモンド、そしてサラマンドラ家の執事だけだった。何が起こったか分からず唖然とする二人を気にせずアンゼリカはナイフを再び扇子の形をとる鞘へと戻す。
鈍色の刃を鞘へと収める際の、パチンという小気味よい音だけがその場に響いた。
────────────
GW中は帰省等の都合で一日一回の更新にさせて頂きます。
その後は元に戻す予定です。
5,591
お気に入りに追加
7,588
あなたにおすすめの小説
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

王命って何ですか?
まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる