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御機嫌よう、転生者様②
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「お、お前……知っていたのか? ここが私とアンヌマリーの為にある世界だと……」
「まあ! ふふっ……貴方とアンヌマリーの為にある世界ですって? 現実を直視できないお馬鹿さんはこれだから……」
思い切り嘲笑してみせるとセレスタンは面白いほど顔を真っ赤に染めた。
煽り耐性が低すぎて笑える。
「何がおかしい! お前も言っただろう!? ここが小説の世界だと……!」
「いえ、”似ている”と言っただけでここが”小説の世界”だとは申しておりません」
「は? 同じことだろう?」
「いいえ、同じではありませんよ。もしここが小説の世界そのものであるのなら、貴方とアンヌマリーは必ずハッピーエンドを迎えるはずでは? なのに貴方達は幸せになるどころか絶望の淵に落とされている。おかしいと思いませんか?」
「そ、それはっ……お前のせいだろう?」
「はあ? 何故そう思われるのですか?」
「転生者のお前はこの世界のイレギュラーだからだ! 転生者なんて所詮は偽物だ! 本物とは違う! 実際、本物のフランチェスカはもっと大人しくて従順な人形のような女だった! そんな口達者で生意気な女ではなかったぞ! お前がきちんと当て馬の役割を果たしていれば私達は幸せになれていた! 全部お前のせいだ!」
「あらあら、これだから小説の世界から抜け出せないお馬鹿さんは困りますね? いくつか反論はありますが……まず、それは貴方にも当てはまるのではなくて?」
「は? 私も、だと……? どういうことだ!」
「貴方もヒーロー枠の”セレスタン”の役割を果たしていない偽物ということですよ。小説の”セレスタン”は妻を裏切る屑野郎ではありますが、表向きは貴公子然としておりましたわ。少なくとも……愛するアンヌマリーからの相談に対して、あのように雑な方法で解決しようとはしなかったでしょうね」
「は……? 雑な方法?」
「ええ。以前わたくし達がまだ婚約している時、アンヌマリーは貴方に『自分だけエメラルドのブローチを貰えない』と嘆いたそうですね? 彼女はそれが原因で貴方との不貞が白日の下に晒され、結果王宮追放の憂き目に遭いました。本物の”セレスタン”でしたらもっと上手いやり方で解決したでしょう。決して貴方のように、わたくしに直接文句を言うなんて雑な方法はとりませんでしたわ」
「なっ……アンが王宮追放だと!? どういうことだ!」
「どうもこうもありません。あんな大勢がいる前で貴方との不貞を暴露されたのです。主の婚約者と不貞を犯す侍女が何の処罰も受けないわけないでしょう? 彼女が罰を受けたのは貴方が原因です。貴方の中身が本物の”セレスタン”ではないからこうなったのです」
「私のせいだと!? そんなの知らない! だいたいアンは私を捨てて金持ちの男と結婚したと聞いたぞ!?」
「は? 誰から聞いたのです、そんな嘘情報を」
「ジェーンだ! あの女がアンは私を捨てて金持ちを選んだと言っていた!」
「どうしてジェーンがアンヌマリーの行く末について知っているんですか? 社交界でもそんな情報は流れていませんよ?」
「え……? あ、いや……だって、そう言っていたから……」
呆れた。ジェーンがどういうつもりでそんな嘘をついたかは知らないが、この人は何の根拠もない情報を疑うことなく信じたのか。
「アンヌマリーは貴方のせいで王宮を追放されました。可哀想に……貴方がもっと上手く立ち回っていたのなら彼女はそんな目に遭わなかったでしょうにねえ……」
「私のせいにするな! お前がアンを追放したくせに何を人のせいにしているんだ!」
「元凶が何を責任逃れしているのやら……。貴方が無駄に騒がなければアンヌマリーはわたくしの侍女のままでいられたのかもしれませんのよ? それに、そもそも貴方がアンヌマリーに言い寄らなければ彼女はそこそこ幸せな人生を送れたかもしれませんのにね? 可哀想に……」
「うるさい! 私とアンは運命の恋人なんだ! 運命で結ばれている二人が惹かれあうのは当然だ!」
「ふーん……でも、アンヌマリーは『言い寄られて逆らえなかった』と嘆いておりましたわよ?」
「はあ!? 嘘をつくな! アンがそんな事をいうわけないだろう!?」
「嘘ではありませんよ。尋問の際、そのように申した記録も残っておりますわ。ジェーンの嘘と違いこちらは証拠がありますの」
まあ、嘘は言っていない。
私がそう言った方がいいと勧めはしたが、最終的にそれを発言すると選んだのはアンヌマリーだから。
真実の言葉でなくとも言ったことは間違いない。
「誰がそんなことを信じるか! 私とアンはこの世界の運命なんだぞ!?」
「まあ、気持ち悪い……。世界だとか運命だとか、すでに成人を迎えている年齢の者が言う台詞ではありませんわね? 確かに小説の世界は”セレスタン”と”アンヌマリー”が結ばれることを中心に進みますね。でも……貴方は”セレスタン”ではありませんよね?」
「は……? 何を言っている?」
「あら、先ほど貴方が言ったのではありませんか。転生者は偽物だと。本物のセレスタンとアンヌマリーでしたら運命によって結ばれるのが当然かもしれませんが、貴方は偽物です。偽物とヒロインが世界の運命? ふふっ……寝言は寝てから仰ってくださいませ」
”偽物”と言われセレスタンは馬鹿みたいに呆けていた。
本当に考えの足りない人。転生者である私を偽物というのなら自分だってそうなのに。
「まあ! ふふっ……貴方とアンヌマリーの為にある世界ですって? 現実を直視できないお馬鹿さんはこれだから……」
思い切り嘲笑してみせるとセレスタンは面白いほど顔を真っ赤に染めた。
煽り耐性が低すぎて笑える。
「何がおかしい! お前も言っただろう!? ここが小説の世界だと……!」
「いえ、”似ている”と言っただけでここが”小説の世界”だとは申しておりません」
「は? 同じことだろう?」
「いいえ、同じではありませんよ。もしここが小説の世界そのものであるのなら、貴方とアンヌマリーは必ずハッピーエンドを迎えるはずでは? なのに貴方達は幸せになるどころか絶望の淵に落とされている。おかしいと思いませんか?」
「そ、それはっ……お前のせいだろう?」
「はあ? 何故そう思われるのですか?」
「転生者のお前はこの世界のイレギュラーだからだ! 転生者なんて所詮は偽物だ! 本物とは違う! 実際、本物のフランチェスカはもっと大人しくて従順な人形のような女だった! そんな口達者で生意気な女ではなかったぞ! お前がきちんと当て馬の役割を果たしていれば私達は幸せになれていた! 全部お前のせいだ!」
「あらあら、これだから小説の世界から抜け出せないお馬鹿さんは困りますね? いくつか反論はありますが……まず、それは貴方にも当てはまるのではなくて?」
「は? 私も、だと……? どういうことだ!」
「貴方もヒーロー枠の”セレスタン”の役割を果たしていない偽物ということですよ。小説の”セレスタン”は妻を裏切る屑野郎ではありますが、表向きは貴公子然としておりましたわ。少なくとも……愛するアンヌマリーからの相談に対して、あのように雑な方法で解決しようとはしなかったでしょうね」
「は……? 雑な方法?」
「ええ。以前わたくし達がまだ婚約している時、アンヌマリーは貴方に『自分だけエメラルドのブローチを貰えない』と嘆いたそうですね? 彼女はそれが原因で貴方との不貞が白日の下に晒され、結果王宮追放の憂き目に遭いました。本物の”セレスタン”でしたらもっと上手いやり方で解決したでしょう。決して貴方のように、わたくしに直接文句を言うなんて雑な方法はとりませんでしたわ」
「なっ……アンが王宮追放だと!? どういうことだ!」
「どうもこうもありません。あんな大勢がいる前で貴方との不貞を暴露されたのです。主の婚約者と不貞を犯す侍女が何の処罰も受けないわけないでしょう? 彼女が罰を受けたのは貴方が原因です。貴方の中身が本物の”セレスタン”ではないからこうなったのです」
「私のせいだと!? そんなの知らない! だいたいアンは私を捨てて金持ちの男と結婚したと聞いたぞ!?」
「は? 誰から聞いたのです、そんな嘘情報を」
「ジェーンだ! あの女がアンは私を捨てて金持ちを選んだと言っていた!」
「どうしてジェーンがアンヌマリーの行く末について知っているんですか? 社交界でもそんな情報は流れていませんよ?」
「え……? あ、いや……だって、そう言っていたから……」
呆れた。ジェーンがどういうつもりでそんな嘘をついたかは知らないが、この人は何の根拠もない情報を疑うことなく信じたのか。
「アンヌマリーは貴方のせいで王宮を追放されました。可哀想に……貴方がもっと上手く立ち回っていたのなら彼女はそんな目に遭わなかったでしょうにねえ……」
「私のせいにするな! お前がアンを追放したくせに何を人のせいにしているんだ!」
「元凶が何を責任逃れしているのやら……。貴方が無駄に騒がなければアンヌマリーはわたくしの侍女のままでいられたのかもしれませんのよ? それに、そもそも貴方がアンヌマリーに言い寄らなければ彼女はそこそこ幸せな人生を送れたかもしれませんのにね? 可哀想に……」
「うるさい! 私とアンは運命の恋人なんだ! 運命で結ばれている二人が惹かれあうのは当然だ!」
「ふーん……でも、アンヌマリーは『言い寄られて逆らえなかった』と嘆いておりましたわよ?」
「はあ!? 嘘をつくな! アンがそんな事をいうわけないだろう!?」
「嘘ではありませんよ。尋問の際、そのように申した記録も残っておりますわ。ジェーンの嘘と違いこちらは証拠がありますの」
まあ、嘘は言っていない。
私がそう言った方がいいと勧めはしたが、最終的にそれを発言すると選んだのはアンヌマリーだから。
真実の言葉でなくとも言ったことは間違いない。
「誰がそんなことを信じるか! 私とアンはこの世界の運命なんだぞ!?」
「まあ、気持ち悪い……。世界だとか運命だとか、すでに成人を迎えている年齢の者が言う台詞ではありませんわね? 確かに小説の世界は”セレスタン”と”アンヌマリー”が結ばれることを中心に進みますね。でも……貴方は”セレスタン”ではありませんよね?」
「は……? 何を言っている?」
「あら、先ほど貴方が言ったのではありませんか。転生者は偽物だと。本物のセレスタンとアンヌマリーでしたら運命によって結ばれるのが当然かもしれませんが、貴方は偽物です。偽物とヒロインが世界の運命? ふふっ……寝言は寝てから仰ってくださいませ」
”偽物”と言われセレスタンは馬鹿みたいに呆けていた。
本当に考えの足りない人。転生者である私を偽物というのなら自分だってそうなのに。
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