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番外編
彼女の母と公爵の関係②
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「ジュリエッタには黙っていたんだけど、お母さんは昔貴族だったのよ。といっても、名ばかりのほぼ平民と変わらない生活をしていた貧乏貴族だけど……」
「ええ!? お母さん貴族だったの? じゃあ、何で今は平民に……?」
「それはね、元々借金があったうえに流行り病で両親と嫡男の兄が儚くなってしまったの。それでお家の存続が困難……というより絶対無理な状況に陥ってしまってね。爵位は返上できたからいいんだけど、借金からは逃げられなくて……」
「え? そういう借金って、爵位返上したら支払い義務が無くなるって公爵邸で教わったわよ?」
「領地に関する借金ならそうよ。でも我が家の借金はお母さんの両親、貴女の祖父母の散財によるものだから無理なの」
「ええ……おじいさんとおばあさん、屑じゃん……」
「そうなのよ……。父は訳分からない骨董品ばかり買うし、母はドレスや宝石に目がないしでもう……。それで結局お母さんが借金全てを返さなくちゃいけなくて、娼館に身売りすることが決まっていたの」
「ひどい! お母さん可哀想!!」
祖父母がまさかの屑だった。
そして予想を超えた母の苦労ぶりにジュリエッタは思わず目に涙が溢れる。
「でも、どこから知ったのか……ハルバード公爵様が借金を全て肩代わりしてくれるとの提案を持ちかけてきたの。代わりに一晩閨を共に、という条件でね」
「公爵様が……? 何それ怪しい……」
つまりは借金のカタに母の処女を捧げろというわけだ。
発想がなんとも下衆で気分が悪い。
「怪しいとは思ったんだけど……娼館に行くくらいなら一晩相手をした方がマシかなって。公爵様の意図は不明だったけど、悩む時間もなかったのよ」
「それは……そうよね」
娼館で何人もの男を相手するよりも、たった一晩一人の男を相手した方がマシだろう。
だけどその提案は怪しい。怪しすぎる。
公爵の目的はいったい何だったのだろう。
「それで一晩お相手して、それで出来たのが貴女なのよ」
「ええ!? 一晩で出来たの? そんなことってある!?」
「ないこともないだろうけど……貴族に限っては、ないはずなのよ」
「? どういう意味?」
「貴族の当主が妻以外の女と関係を持つ場合、避妊は必ずするものなの。万が一外で子供が出来てしまうと跡継ぎ問題で争いが起きてしまうからね。公爵様もそれを知らないはずがないのに……。もしかしてわざと妊娠させたんじゃないかって疑ったわ」
「わざと? そんなことして何の得に……あっ、まさか!」
「ええ、こういうことに利用するため、孕ませたのかもしれないわ」
「うわぁ……最低。信じられない……」
女をいったい何だと思っているんだ。
ジュリエッタは改めて父親を軽蔑した。
「しかもね、公爵様は私に『第二夫人にならないか』って言ってきたのよ」
「第二夫人って……愛人のこと?」
「いえ、そんな不確かなものではないわ。正式にその家の二番目の妻として届け出がされるような存在よ」
「ええー……あんな綺麗な妻がいるのに、もっと奥さんが欲しいわけ? 心底軽蔑するわ……」
ジュリエッタの中で父親の株は果てしなく急降下し、もはや奈落の底に落ちている。
あの男は顔と身分以外いいところがないなと改めて思った。
「そうよね。お母さんも嫌だから断ったわ。でも結構しつこくてね……」
「うわ……それってもしかして、公爵ってお母さんのこと好きだったとか!?」
「いや、それはないんじゃないかしら? だってあれが初対面だったし……」
「それで一目惚れしたとか、もしくは前々から知っていたとか……」
「止めてちょうだい! 例えそうだとしても、貴女を連れ去るような男はごめんだわ」
例え顔が良くても身分が高くても生理的に無理、と言い放つ母を見て、それまで黙って聞いていたシロが「さすがジュリエッタのお母様、ハッキリしたところがそっくりだね」と告げた。
「ええ!? お母さん貴族だったの? じゃあ、何で今は平民に……?」
「それはね、元々借金があったうえに流行り病で両親と嫡男の兄が儚くなってしまったの。それでお家の存続が困難……というより絶対無理な状況に陥ってしまってね。爵位は返上できたからいいんだけど、借金からは逃げられなくて……」
「え? そういう借金って、爵位返上したら支払い義務が無くなるって公爵邸で教わったわよ?」
「領地に関する借金ならそうよ。でも我が家の借金はお母さんの両親、貴女の祖父母の散財によるものだから無理なの」
「ええ……おじいさんとおばあさん、屑じゃん……」
「そうなのよ……。父は訳分からない骨董品ばかり買うし、母はドレスや宝石に目がないしでもう……。それで結局お母さんが借金全てを返さなくちゃいけなくて、娼館に身売りすることが決まっていたの」
「ひどい! お母さん可哀想!!」
祖父母がまさかの屑だった。
そして予想を超えた母の苦労ぶりにジュリエッタは思わず目に涙が溢れる。
「でも、どこから知ったのか……ハルバード公爵様が借金を全て肩代わりしてくれるとの提案を持ちかけてきたの。代わりに一晩閨を共に、という条件でね」
「公爵様が……? 何それ怪しい……」
つまりは借金のカタに母の処女を捧げろというわけだ。
発想がなんとも下衆で気分が悪い。
「怪しいとは思ったんだけど……娼館に行くくらいなら一晩相手をした方がマシかなって。公爵様の意図は不明だったけど、悩む時間もなかったのよ」
「それは……そうよね」
娼館で何人もの男を相手するよりも、たった一晩一人の男を相手した方がマシだろう。
だけどその提案は怪しい。怪しすぎる。
公爵の目的はいったい何だったのだろう。
「それで一晩お相手して、それで出来たのが貴女なのよ」
「ええ!? 一晩で出来たの? そんなことってある!?」
「ないこともないだろうけど……貴族に限っては、ないはずなのよ」
「? どういう意味?」
「貴族の当主が妻以外の女と関係を持つ場合、避妊は必ずするものなの。万が一外で子供が出来てしまうと跡継ぎ問題で争いが起きてしまうからね。公爵様もそれを知らないはずがないのに……。もしかしてわざと妊娠させたんじゃないかって疑ったわ」
「わざと? そんなことして何の得に……あっ、まさか!」
「ええ、こういうことに利用するため、孕ませたのかもしれないわ」
「うわぁ……最低。信じられない……」
女をいったい何だと思っているんだ。
ジュリエッタは改めて父親を軽蔑した。
「しかもね、公爵様は私に『第二夫人にならないか』って言ってきたのよ」
「第二夫人って……愛人のこと?」
「いえ、そんな不確かなものではないわ。正式にその家の二番目の妻として届け出がされるような存在よ」
「ええー……あんな綺麗な妻がいるのに、もっと奥さんが欲しいわけ? 心底軽蔑するわ……」
ジュリエッタの中で父親の株は果てしなく急降下し、もはや奈落の底に落ちている。
あの男は顔と身分以外いいところがないなと改めて思った。
「そうよね。お母さんも嫌だから断ったわ。でも結構しつこくてね……」
「うわ……それってもしかして、公爵ってお母さんのこと好きだったとか!?」
「いや、それはないんじゃないかしら? だってあれが初対面だったし……」
「それで一目惚れしたとか、もしくは前々から知っていたとか……」
「止めてちょうだい! 例えそうだとしても、貴女を連れ去るような男はごめんだわ」
例え顔が良くても身分が高くても生理的に無理、と言い放つ母を見て、それまで黙って聞いていたシロが「さすがジュリエッタのお母様、ハッキリしたところがそっくりだね」と告げた。
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