37 / 43
番外編
彼女の母と公爵の関係①
しおりを挟む
数年ぶりに故郷へ帰り、最愛の母と再会したジュリエッタ。
彼女は懐かしい我が家で母の温かい手料理に舌鼓を打っていた。
「んー、美味しい! やっぱりお母さんの料理は世界一ね!」
「ふふ、嬉しいわ。沢山食べなさい。シロ君もね」
「はい、ありがとうございます! どれも美味しいですけど、このベリーパイ最高ですね!」
やっと再会できた娘が恋人を連れてきたことに驚いた母だが、幸せそうな二人の姿に喜びの気持ちの方が勝る。
娘が幸せになってくれるなら、母親としてこれ以上嬉しいことはないのだから。
「気に入ってもらえてよかったわ。……それとジュリエッタ、食後に今まであったことをお母さんに教えてもらえるかしら?」
「うん……勿論よ。私もお母さんに聞きたいことがあるの」
そうして、母が淹れてくれた食後のお茶を飲みながら、ジュリエッタは公爵邸に連れ去られてからのことを全て話した。
公爵の命令で数年に渡り淑女教育を受けたこと、そしてデューン伯爵家に嫁いだこと、そしてその家が没落したこと。それを全て、包み隠さず。
「なんてこと……! じゃあ、貴女は公爵様の命令で勝手に結婚させられたってこと!? しかもそんなろくでもない男に……?」
「うん、でも大丈夫よ。もう離婚しているし、シロや公爵家の侍女のおかげでひどい目には合わなかったから」
「それでも十分ひどいわよ……! ああ、なんてこと……。あの男は私の娘の人生を何だと思ってるのかしら!」
母は勝手に娘の人生を浪費されたことに怒り、涙を零した。
悔しさや怒り、ごちゃまぜになった感情がとめどなく涙に変えて流れ落ちる。
「貴女が連れ去られたあの日、私は貴女を取り戻すためにハルバード公爵邸へ行ったのよ……。でも会わせてもらえなくてね……」
「え!? お母さん、邸に来たの?」
「ええそうよ。娘を誘拐されたんだもの、取り戻そうとするのは当然よ。でも門前で止められて、騒いでいるところを公爵夫人が取り成してくれたの」
「夫人が!? え! お母さん、公爵夫人と話したの?」
「そうなのよ。貴女に会わせてはもらえなかったけど、必ず無事に帰すと約束してくださったわ。……それで『はい、そうですか』と納得できるわけもないけど、下手に私が騒ぐと貴女に危害を加えられるかもしれないと言われて泣く泣く帰ったの。でも、そんなことさせられると分かっていたのなら、邸で暴れてでも連れて帰ればよかった……!」
「そんなことしたらお母さんが危ないわよ! 公爵様は人を人とも思わない冷血な爬虫類男なんだから!」
公爵夫人が取り成してくれてよかった、とジュリエッタは心から安堵した。
公爵がもしも母を手にかけたらと想像するだけでゾッとする。
「ねえ……お母さん。お母さんは公爵様とどういう関係だったの?」
「……そうよね、貴女は気になって当然よね。あまりいい話じゃないけど、それでも聞きたいかしら?」
「勿論よ! ねえ、お母さんは公爵様の愛人だったの?」
「いいえ、違うわ。私はね……公爵様に一夜を買われたのよ」
「え? え!? ど、どういうこと……?」
一夜を買われたとは、まるで娼婦に使う言葉のよう。
まさか母は……という目を向けると、ジュリエッタの母チェルシーは首を横に振った。
「誤解しないで。お母さんは娼婦ではないわ。むしろ、娼婦になるか、公爵と一晩閨を共にするかで後者を選んだのよ」
「ますます意味が分からないんだけど!?」
母の過去に何があったのだろう。
困惑する娘にチェルシーは己の過去をぽつりぽつりと語りだした。
彼女は懐かしい我が家で母の温かい手料理に舌鼓を打っていた。
「んー、美味しい! やっぱりお母さんの料理は世界一ね!」
「ふふ、嬉しいわ。沢山食べなさい。シロ君もね」
「はい、ありがとうございます! どれも美味しいですけど、このベリーパイ最高ですね!」
やっと再会できた娘が恋人を連れてきたことに驚いた母だが、幸せそうな二人の姿に喜びの気持ちの方が勝る。
娘が幸せになってくれるなら、母親としてこれ以上嬉しいことはないのだから。
「気に入ってもらえてよかったわ。……それとジュリエッタ、食後に今まであったことをお母さんに教えてもらえるかしら?」
「うん……勿論よ。私もお母さんに聞きたいことがあるの」
そうして、母が淹れてくれた食後のお茶を飲みながら、ジュリエッタは公爵邸に連れ去られてからのことを全て話した。
公爵の命令で数年に渡り淑女教育を受けたこと、そしてデューン伯爵家に嫁いだこと、そしてその家が没落したこと。それを全て、包み隠さず。
「なんてこと……! じゃあ、貴女は公爵様の命令で勝手に結婚させられたってこと!? しかもそんなろくでもない男に……?」
「うん、でも大丈夫よ。もう離婚しているし、シロや公爵家の侍女のおかげでひどい目には合わなかったから」
「それでも十分ひどいわよ……! ああ、なんてこと……。あの男は私の娘の人生を何だと思ってるのかしら!」
母は勝手に娘の人生を浪費されたことに怒り、涙を零した。
悔しさや怒り、ごちゃまぜになった感情がとめどなく涙に変えて流れ落ちる。
「貴女が連れ去られたあの日、私は貴女を取り戻すためにハルバード公爵邸へ行ったのよ……。でも会わせてもらえなくてね……」
「え!? お母さん、邸に来たの?」
「ええそうよ。娘を誘拐されたんだもの、取り戻そうとするのは当然よ。でも門前で止められて、騒いでいるところを公爵夫人が取り成してくれたの」
「夫人が!? え! お母さん、公爵夫人と話したの?」
「そうなのよ。貴女に会わせてはもらえなかったけど、必ず無事に帰すと約束してくださったわ。……それで『はい、そうですか』と納得できるわけもないけど、下手に私が騒ぐと貴女に危害を加えられるかもしれないと言われて泣く泣く帰ったの。でも、そんなことさせられると分かっていたのなら、邸で暴れてでも連れて帰ればよかった……!」
「そんなことしたらお母さんが危ないわよ! 公爵様は人を人とも思わない冷血な爬虫類男なんだから!」
公爵夫人が取り成してくれてよかった、とジュリエッタは心から安堵した。
公爵がもしも母を手にかけたらと想像するだけでゾッとする。
「ねえ……お母さん。お母さんは公爵様とどういう関係だったの?」
「……そうよね、貴女は気になって当然よね。あまりいい話じゃないけど、それでも聞きたいかしら?」
「勿論よ! ねえ、お母さんは公爵様の愛人だったの?」
「いいえ、違うわ。私はね……公爵様に一夜を買われたのよ」
「え? え!? ど、どういうこと……?」
一夜を買われたとは、まるで娼婦に使う言葉のよう。
まさか母は……という目を向けると、ジュリエッタの母チェルシーは首を横に振った。
「誤解しないで。お母さんは娼婦ではないわ。むしろ、娼婦になるか、公爵と一晩閨を共にするかで後者を選んだのよ」
「ますます意味が分からないんだけど!?」
母の過去に何があったのだろう。
困惑する娘にチェルシーは己の過去をぽつりぽつりと語りだした。
346
お気に入りに追加
3,468
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31


完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる