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番外編

〈最終話〉ありがとう、アリスティア

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 姉上の元夫は愛人を屋敷に連れ込み妻を追い出したことを社交界でひどく責められた。
 
 特に貴婦人方からの批判は凄まじく、厳罰に処さない限りは暴動が起きるんじゃないかというほどだった。

 愛人が本妻の立場を乗っ取ろうとするなどとんでもない。
 
 それを許せば、政略結婚の根底が揺るがされる。
 
 貴族社会の秩序が崩壊する恐れすらあるそれを、王家は当然許さなかった。

 その結果、元夫は公爵位を嫡男に譲位し平民落ち、愛人は公爵夫人である姉上への不敬罪で処刑された。

 元夫は貴族だから処刑までは出来なかったが、平民落ちした時点で生きていくのは難しいだろう。
 
 衣食住全てを世話してもらっていた貴族が、誰の手も借りないで一人で生活するのは至難の業だ。

 家もない、金もない。

 となると最終的に物乞いをして生きていくしかない。

 一歩間違えれば僕もああなっていたのかもしれない。
 
 そう考えるとゾッとした。

「ラウロ? 何かあったの?」
 
 中々戻ってこない僕を心配したのか、オニキスが馬車の窓から声をかけてきた。

「あ、ああ……浮浪者が飛び出してきてね。もう去ったから大丈夫だ、出発しよう」

 馬車に乗り、オニキスを抱きしめ口付けた。
 僕は大丈夫だ、ああはならない、と自分に言い聞かせるように。

 
 僕が姉上の元夫のようにならず、貴族のまま幸せに生きていけるのはアリスティアのおかげだ。

 アリスティアが陛下の公妾に、そしてその書類上の夫に僕が選ばれたからこそ何不自由なく暮らしていける。

 僕の書類上の妻、アリスティア。
 
 君が僕の幸せを願ってくれたように、僕も君の幸せを願っている。

 願わくば、君の人生がこの先も、幸福に満ちたものでありますように。




                                                                           (了)


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 これで完結です。この作品を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

 沢山の方にお読みいただき感謝の気持ちでいっぱいです!

 また次回作もお読み頂けると嬉しいです。



 

 

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