7 / 19
これからどうなるのだろう
しおりを挟む
ビクトリアからとんでもないことを聞いたブリジットは夜になり帰宅した両親に昼間の出来事を告げる。
「あのお花畑の猿王子が! 帝国に喧嘩売る真似してどういうつもりだ!? ビクトリア嬢が婚約者として不適格と判断されて帰国したとは聞いていたが……もしかしなくてもこれが原因だろうな」
「ええ、帝国皇太子の婚約者となるべき淑女が元婚約者からの恋文を受け取っているなんて有り得ませんわ。どうやらビクトリア嬢は随分とふしだらな女性のようね。あの王太子はそんな女性を好みだというなら、貞淑なブリジットでは合わないのは当然でしょう」
二人の話によると、ビクトリアは帝国で『皇太子の婚約者にふさわしくない』とされ国元に帰されたらしい。
落第者とされた令嬢が帰国しても針の筵だろうが、昼間の様子からはそんな風には感じられない。
よほど神経が図太いのか、理解していないのかどちらかだろう。
「あの阿婆擦れと猿王子がよりを戻そうが知ったことではないが、帝国がどう出るか……それが恐ろしいな」
「ええ、王族が皇太子の婚約者宛てに恋文を送るなんて前代未聞です……。あちらがどう来るかが恐ろしいですわ。万が一にでも開戦ということになれば武力で帝国にかないそうもありません」
「そうなったら阿婆擦れと猿の首を土産に国王陛下自身で謝ってもらうほかあるまいよ。自分の息子の不始末は親が責任をとらなければな」
両親が深刻な顔で話す様をブリジットは震えながら聞いていた。
もし、帝国が開戦を宣言したら……。
そうなったら国や人々はどうなってしまうのか、考えるだけで恐ろしくてたまらない。
無神経で思いやりのない男だとは思っていたが、まさか自国を危機に晒すほどの阿呆だったとは思わなかった。
王太子への怒りでブリジットは頭がおかしくなってしまいそうだ。
それに王太子の愛しの君であるビクトリアも同罪だ。
元婚約者から恋文が送られて呑気に喜ぶとか頭がおかしいのではないか。
愛し合う婚約者同士が無理矢理引き裂かれた、とかならまだ分かる。
だがビクトリアは自ら望んで婚約を解消し、帝国に行ったのだ。
王太子は「ケンリッジ公爵の命令で無理矢理ビクトリアを奪われた!」と勘違いしているが、それは違う。
実はビクトリアも父親同様に帝国の皇太子妃になることを望んだのだ。
我が国の王太子妃になるよりも、帝国の皇太子妃になった方が贅沢できると思った彼女は父親の公爵の案に乗り、婚約解消を申し出たのだ。
わりと社交界では有名な話なのだが、何故かそれを知らない王太子をブリジットは不思議に思ったがあえて訂正はしなかった。
言ったところで信じてくれそうもないし、逆にこちらが嘘つき呼ばわりされたら不快だからだ。
それくらい王太子はブリジットにとって一つも信用のできない相手だった。
帝国はこの国をどうするつもりなのだろう……。
そう考えるとブリジットは不安で押し潰されそうになり、その夜は一睡もできなかった。
「あのお花畑の猿王子が! 帝国に喧嘩売る真似してどういうつもりだ!? ビクトリア嬢が婚約者として不適格と判断されて帰国したとは聞いていたが……もしかしなくてもこれが原因だろうな」
「ええ、帝国皇太子の婚約者となるべき淑女が元婚約者からの恋文を受け取っているなんて有り得ませんわ。どうやらビクトリア嬢は随分とふしだらな女性のようね。あの王太子はそんな女性を好みだというなら、貞淑なブリジットでは合わないのは当然でしょう」
二人の話によると、ビクトリアは帝国で『皇太子の婚約者にふさわしくない』とされ国元に帰されたらしい。
落第者とされた令嬢が帰国しても針の筵だろうが、昼間の様子からはそんな風には感じられない。
よほど神経が図太いのか、理解していないのかどちらかだろう。
「あの阿婆擦れと猿王子がよりを戻そうが知ったことではないが、帝国がどう出るか……それが恐ろしいな」
「ええ、王族が皇太子の婚約者宛てに恋文を送るなんて前代未聞です……。あちらがどう来るかが恐ろしいですわ。万が一にでも開戦ということになれば武力で帝国にかないそうもありません」
「そうなったら阿婆擦れと猿の首を土産に国王陛下自身で謝ってもらうほかあるまいよ。自分の息子の不始末は親が責任をとらなければな」
両親が深刻な顔で話す様をブリジットは震えながら聞いていた。
もし、帝国が開戦を宣言したら……。
そうなったら国や人々はどうなってしまうのか、考えるだけで恐ろしくてたまらない。
無神経で思いやりのない男だとは思っていたが、まさか自国を危機に晒すほどの阿呆だったとは思わなかった。
王太子への怒りでブリジットは頭がおかしくなってしまいそうだ。
それに王太子の愛しの君であるビクトリアも同罪だ。
元婚約者から恋文が送られて呑気に喜ぶとか頭がおかしいのではないか。
愛し合う婚約者同士が無理矢理引き裂かれた、とかならまだ分かる。
だがビクトリアは自ら望んで婚約を解消し、帝国に行ったのだ。
王太子は「ケンリッジ公爵の命令で無理矢理ビクトリアを奪われた!」と勘違いしているが、それは違う。
実はビクトリアも父親同様に帝国の皇太子妃になることを望んだのだ。
我が国の王太子妃になるよりも、帝国の皇太子妃になった方が贅沢できると思った彼女は父親の公爵の案に乗り、婚約解消を申し出たのだ。
わりと社交界では有名な話なのだが、何故かそれを知らない王太子をブリジットは不思議に思ったがあえて訂正はしなかった。
言ったところで信じてくれそうもないし、逆にこちらが嘘つき呼ばわりされたら不快だからだ。
それくらい王太子はブリジットにとって一つも信用のできない相手だった。
帝国はこの国をどうするつもりなのだろう……。
そう考えるとブリジットは不安で押し潰されそうになり、その夜は一睡もできなかった。
672
お気に入りに追加
5,252
あなたにおすすめの小説
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる