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カサンドラの後悔③

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 学園に入学してからは楽しかった。
 見目麗しい攻略対象は皆、この『悪役令嬢』カサンドラの虜だ。

 彼等は驚くほど単純だ。ちょっとヒロインの真似事をしたら簡単に靡いた。

 よくよく考えればこんなの単なる綺麗ごとで、何の解決にもならない。

 結局、彼等はただ逃げているだけだ。
 自分を取り巻く環境や自分自身から。

 だからヒロインのお花畑な思考の元放たれる無責任な発言に惹かれ、何の罪もないわたくしを断罪するのだ。
 罪悪感なく冤罪をふっかけ、王太子に断罪を唆すような考えなしになるのだ。

 それはそうとして、見目のいい男達から女神のように崇拝されるのは心地いい。
 この様子ならば仮に王太子がヒロインに魅了されても彼等はわたくしの絶対的な味方になってくれるだろう。

「ん……? そういえばゲームでもカサンドラの味方はいたわね。どうして忘れてたのかしら!?」

 カサンドラの友人、レオナ・ミンティ侯爵令嬢。
 
 彼女はいついかなる時でもカサンドラの絶対的な味方で、断罪シーンでも彼女を庇って王太子に物申していたはず。

「ゲームではカサンドラの登場シーンからずっと、背景のように近くに存在していたはずなのに……おかしいわね?」

 カサンドラがレオナと何処でどうやって知り合ったかなんて分からない。
 そんなのゲームでは触れていなかった。

 だけどまあ、
 
 将来への保険として味方は増やしておいた方がいい。
 今からでも親交を深めておかないと。

「確か彼女はクリスの婚約者だったわよね……? だったらクリスに頼めば会えるかしら……」

 早速クリスに頼むと二つ返事で了承してくれた。

 丁度今度の休みに婚約者と観劇に行く予定だという。

 それにわたくしも来ればいいと。

「え……でも、婚約者との逢瀬なのでしょう? わたくしが行ったらお邪魔じゃないかしら……?」

 デートに他人がついていくなんて駄目じゃないかしら?
 でもクリスは満面の笑みでこう告げた。

「貴女とレオナはなのでしょう? ならば何の問題もありませんよ」

 綺麗な顔でそう言われると妙に説得力がある。

 そうよね……わたくしとレオナはですもの。
 友人ならば逢瀬に同伴しても何の問題もないはずよね……。

 わたくしは戸惑いを捨てて彼の提案を有難く受け取ることにした。
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