貴方といると、お茶が不味い

わらびもち

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彼女のその後

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「スピナー家の令嬢が先日隣国に嫁いだらしいよ」

 王宮内にあるサロンにて午後のお茶を頂いていると、ふと思い出したようにアルフォンス様がそう告げた。

「まあ! お早い嫁入りですね? アルフォンス様に謁見してからそう日数も経っていないのに」

だろう。王族にあそこまで噛みつくような狂犬をいつまでも飼っておきたくないと、まともな貴族ならそう思うさ」

「ああ、あの時の彼女は相当苛烈でしたものね……」

 彼女は本当に公爵家の令嬢なのかと疑うほど礼儀もマナーも身についていなかった。

 スピナー家の淑女教育をどうなっているのだろうか、あれで王太子妃にするつもりだったのかと思うと先代公爵の正気を疑う。

「お相手はどんな方なのでしょう? 苛烈な女性がお好みなのかしら……?」

「うーん、相手の好みは分からないけど、どうやらがいるらしい」

「まあ……ということは、名ばかりの妻になるということですか?」

「おそらくはそうだろうね。お相手はかなりの資産家らしく、スピナー家の慰謝料で積もりに積もった借金を全部肩代わりしてくれたそうだ。しかも持参金は不要と言われたようで、公爵は喜々として嫁に出したようだよ。

「身一つ……ということは、嫁入り道具もなしですか。しかも持参金もなし……。妻として丁重に遇されずともよい、ということですね」

 持参金もなく、嫁入り道具も持たない花嫁がどんな扱いをされるか。
 公爵がそれを知らないはずがない。

 どんな酷い扱いを受けても構わない、という意思をひしひしと感じる。

「あれだけ様々なことをやらかし、家まで傾けたんだ。どんな扱いをされても文句は言えないだろうよ」

「そうですね。その通りです。彼女のせいで多くの婚約が壊されましたもの……。しかもそれが彼女の妄想によるものだなんて……。結局、あの話はいまひとつ理解できませんでしたわ」

「ああ、アレね。聞くにたえない酷い妄想話だったよ、報告書を作成にするのに大分苦労したな。先代公爵や現公爵に聴取して……昨日やっと終わったんだ。荒唐無稽な話だけど、聞くかい?」

「それはお疲れ様でございます。ええ、お聞かせいただけるのでしたら、是非」

 アルフォンス様は優雅な仕草でお茶のカップを傾け喉を潤すと、あの話の詳細を語り始めた。

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