貴方といると、お茶が不味い

わらびもち

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スピナー家の謝罪③

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「嘘よ! アイリスは殿下を始め数多の高位貴族の令息を虜にし、わたくしを身一つで国外追放する最低最悪のヒロインなんだから!」

「国外追放? 公爵家の令嬢を……? アイリスにそんな権限はないでしょう?」

「違うわよ! 殿下やクリス、他の高位貴族の令息がこぞってわたくしを嵌めて国外追放を言い渡すのよ! それもアイリスを虐めたとかいうくだらない理由でね! アイリスさえいなければそんなことは起こらないのよ!」

「……殿下や高位貴族の令息にもそんな権限はありませんよ? あるとすれば国王陛下や当主である公爵閣下でしょうか……。いずれにしても一人の令嬢をそんな簡単に国から追放するなんて真似できませんよ?」

「出来るのよ! 国王陛下が外遊中を狙ってね! 国王陛下不在の場合は殿下に権限を譲渡されるから、わざわざそれを狙って断罪劇を開催するのよ! 王家主催の夜会でね!」

「……あの、我が国では国王陛下不在の場合でも権限は譲渡されませんよ? それに陛下不在の時に王家主催の夜会が開かれるなんてまずありません」

 他の国では権限が譲渡されるのかもしれないが、我が国ではそれはない。
 重要な案件は陛下が帰国されるまで溜めておく。
 緊急を要するものについては殿下と各大臣が集まってどうするかを決めることはある。
 なので殿下一人に決定権はない。

「え……うそ? だって……ゲームでは……」

「あの、先程から仰っているその『ゲーム』とはいったい何のことでしょうか?」

「え? それは……」

 そこで彼女の口から語られたことはこちらの想像を絶するものだった。
 それと同時に、自分達はこんなくだらない理由で振り回されたのかと呆れ果ててしまう。

「つまり……この世界は一種の恋愛遊戯を模したもので、貴女は『悪役令嬢』という役柄、アイリスは『ヒロイン』で殿下方は彼女の『攻略対象』ということですか……?」

「ええ、そうよ。ヒロインが誰を選ぶかで彼女に立ちはだかる『悪役令嬢』は変わるのよ。ちなみに殿下の時はわたくし、クリスの時は貴女、そして他の令息の場合はそれぞれの婚約者ね。わたくし以外は婚約破棄されるだけで済むのだけど、わたくしだけは何故か必ず国外追放されるのよ! それが嫌で回避しようとクリス達を味方につけようとしたの!」

「味方に……? 令息達が貴女の味方につけばその『国外追放』は回避されるのですか?」

「そうよ! だってわたくしの冤罪をでっちあげて殿下に報告するのは彼等だもの!」

「……だから貴女はロバス子息や他の令息と親しくなさったのです? ご自分がその……断罪とやらをされないために」

「その通りよ! 彼等を味方につけなくちゃ、わたくしは破滅だもの! 身一つで国外追放だなんて死んでしまうわ……それを避けるのは当然じゃない!?」

 呆れ果てて言葉が出ない。

 こんなのせいで彼女はあんな非常識で不快な行動をとり続けたのか。
 
 そのせいで数多の人の未来が変わってしまったというのに―――。
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