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スピナー家の謝罪②

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「ふ……ふざけるな!! 殿下が他所の女と不貞と言うが、それ以前にお前は交流すらしていなかったじゃないか! なんだかんだと理由をつけて登城を避け……お前に甘い父上もあろうことかそれを許した! 殿下と交流せずにお前がしたことと言えば、男漁りに精を出し、意味もない学園に通っていただけ! お前のような阿婆擦れと血が繋がっていると考えただけで虫唾が走るわ……!」

「ひ、ひどいわお兄様……! 阿婆擦れだなんて……それはアイリスのことよ! 男漁りがひどく複数の婚約を壊す悪女はわたくしではないわ!」

「誰だそのアイリスとかいうのは!? その女がどこのだれか知らないが今は関係ないだろう! お前が全ての元凶だ! 数多の令嬢が婚約者と引き裂かれ、お前に傾倒した令息が罰を受け、そして私が継ぐ家が醜聞に塗れたのも……全てお前のせいだ! お前さえいなければ……誰もこんな目に合わなかったんだ!!」

 若き公爵の悲痛な叫びに私もアルフォンス様も言葉が出ない。
 彼にしてみれば頭のおかしい妹と、娘を甘やかす父親がやらかした負債を全て背負う形になったのだ。激昂するのも無理はない。

 だけどこの場には王太子殿下がいらっしゃる。
 つまりは王族の御前で彼は声を荒げているのだ。
 不敬をはたらいているという認識が、果たして今の彼にあるだろうか?

 ちら、とアルフォンス様の方を向けば、彼は小さく頷いてくれた。

 ああ、彼は私の言いたいことが何なのかを理解してくれている。
 言葉を交わさなくとも意思が通じることに顔が綻んでしまう。

 思わず緩んだ顔をすぐに引き締め、彼等に向かって声を発した。

「公爵閣下、並びにご令嬢、殿下の御前ですよ。お控えくださいませ」

 私の言葉にハッと我に返った公爵は急いで首を垂れ「申し訳ございません……」と謝罪を述べる。
 だが令嬢の方は目を吊り上げて反論し始めた。

「ちょっと、レオナさん! 貴女はわたくしの友人のくせに、何ちゃっかりと殿下の婚約者の座に納まっているのよ? まさか陰でこそこそ殿下と浮気するなんて、可愛い顔してとんだ女狐ね?」

「友人……ですか? わたくしと貴女はそのような関係ではありません。それに浮気と仰いますけど、わたくしが殿下と婚約を結んだのは貴女との婚約が破棄されてからです。国内で貴女の次に身分が高く、殿下と年齢が釣り合うのはわたくしなので、殿下の婚約者になるのは何もおかしいことじゃありませんわ」

 本当はアルフォンス様に求められての婚約だけど、それをわざわざ言うつもりはない。
 そんなことを言えばこの人はますますこちらを罵るだろう。
 身分順で言えば私が妥当だった、と思わせた方がいい。

「貴女こそ何を言ってるの? わたくし達は友人でしょう? 貴女の役目は殿下がアイリスと浮気して悲しむわたくしと慰めることよ。率先して慰めてくれたというのに、この世界の貴女ときたらちっともわたくしに会いにこない! だからわたくしの方から会いに行ったのに、貴女はいつも嫌な顔をして……」

「ゲーム……? 何のことです? 意味は分かりませんがアイリスは夫君を一途に愛しておりますし、殿下とお会いしたことすらありません。貴女が仰る『殿下とアイリスが浮気』というのは、何を根拠に仰っているのです?」

 以前もそうだが、この人は何故頑なにアイリスが殿下と結ばれるようなことを言うのだろう?

 それにゲームの中の私とはどういう意味か……彼女の言っていることはまるで理解できない。
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