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スピナー家の謝罪①
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あのお茶会から数日後、私は王宮にある謁見の間でアルフォンス様の隣に立っていた。
目の前で跪くのは若きスピナー公爵とその妹のカサンドラ・スピナー。
公爵は神妙な様子であるのに、スピナー公爵令嬢は不思議そうな顔をしていた。
「王太子殿下、並びにご婚約者のミンティ侯爵令嬢にご挨拶申し上げます。この度は私共の謁見の申し出をお受け下さり、誠に感謝の念にたえませぬ」
身分は私よりも公爵の方が上にも関わらず、まるで格上に対するような礼だ。
それだけこの謁見に賭けているのだと伝わってくる。
ここで殿下と私が謝罪を受け入れたなら、スピナー公爵家は王太子と未来の王太子妃に許されたことになる。
公爵は何がなんでも謝罪を受けて貰おうとしているのが手に取るように分かった。
「よい、顔をあげよ。回りくどいのは好かぬのでな。早々に用件を述べるがよい」
こんな突き放した態度をとるアルフォンス様は初めて目にする。
彼にとってはそれだけ思う所があるのだろう。
「あ……ありがとうございます、殿下「え? なんでレオナさんが殿下の隣?」カサンドラ! 殿下の許可も得ずに発言するとは何事だ!?」
王族の方を前にして許可なく発言することが不敬であると理解していないのだろうか?
貴族なら誰でもまず初めに習うことなのに。
なぜ公爵家という高位の身分を持ちながら礼儀を弁えていないのか不思議で仕方ない。
「で、殿下……愚妹が無礼を働き申し訳ございません……」
「……本当にな。公式に発表した私の婚約者の存在を知らぬとは……」
「申し訳ございません……。妹は邸に閉じ込めていた故、外の情報に疎く……」
「家の者は誰も教えなかったということか? 呆れたな……。それで? 謝罪をするのだったか? なら早くしたらどうだ?」
冷めた声音でアルフォンス様がそう促すと、公爵は妹に視線を送った。
それは「謝罪しろ」という意味合いの視線だろうが、当の本人はそれが分からずキョトンとしている。
「謝罪? 悪いのは殿下でしょう? 何故わたくしが謝らなければならないの?」
あまりの物言いに彼女以外の者は皆唖然としてしまった。
今彼女はアルフォンス様が悪いと言ったが、彼のどこがそうだと言うのか。
「カサンドラ!! お前は何を言っているんだ!?」
「だってお兄様、殿下はアイリスを妃にするつもりなのよ? わたくしとの婚約を破棄したのもそれが理由なのでしょう?」
ここまで頭がおかしかったとは……。
おそらくこの場にいる者は皆そう思ったことだろう。
よりにもよって王太子殿下に言いがかりをつけるなんて正気を疑うし、その理由も意味が分からない。ここでどうしてアイリスの名が出てくるのだろう。
「なにを馬鹿なことを言ってるんだ!! お前が婚約破棄されたのは婚約者の責務を果たさなかったことと、不特定多数の異性と親しくしたこと、そして複数の貴族間の婚約を壊したことだと説明しただろう!? 全部お前が悪いんだ! それは殿下のせいにするとは何事だ!!」
「え……だって、殿下はどうせ将来わたくしとの婚約を破棄するのよ? 他所の女と不貞を働き、わたくしを断罪した挙句にその女を妃にするような男とどうして交流しなくちゃいけないの? それに不特定多数の異性と親しくしたと言うけど、それはわたくしが生き延びるために仕方のないことなの。それで婚約が壊れたと言われても……それってわたくしのせいなのかしら? 元々仲が悪かったんじゃなくて?」
あまりにも自分勝手な発言に公爵は妹を叱ることも忘れてその場で固まってしまう。
私とアルフォンス様はというと、冷めた顔で彼等を見るしかできなかった。
こんな異次元な理解力の持ち主と話し合うことなど無理なのではないか、と。
目の前で跪くのは若きスピナー公爵とその妹のカサンドラ・スピナー。
公爵は神妙な様子であるのに、スピナー公爵令嬢は不思議そうな顔をしていた。
「王太子殿下、並びにご婚約者のミンティ侯爵令嬢にご挨拶申し上げます。この度は私共の謁見の申し出をお受け下さり、誠に感謝の念にたえませぬ」
身分は私よりも公爵の方が上にも関わらず、まるで格上に対するような礼だ。
それだけこの謁見に賭けているのだと伝わってくる。
ここで殿下と私が謝罪を受け入れたなら、スピナー公爵家は王太子と未来の王太子妃に許されたことになる。
公爵は何がなんでも謝罪を受けて貰おうとしているのが手に取るように分かった。
「よい、顔をあげよ。回りくどいのは好かぬのでな。早々に用件を述べるがよい」
こんな突き放した態度をとるアルフォンス様は初めて目にする。
彼にとってはそれだけ思う所があるのだろう。
「あ……ありがとうございます、殿下「え? なんでレオナさんが殿下の隣?」カサンドラ! 殿下の許可も得ずに発言するとは何事だ!?」
王族の方を前にして許可なく発言することが不敬であると理解していないのだろうか?
貴族なら誰でもまず初めに習うことなのに。
なぜ公爵家という高位の身分を持ちながら礼儀を弁えていないのか不思議で仕方ない。
「で、殿下……愚妹が無礼を働き申し訳ございません……」
「……本当にな。公式に発表した私の婚約者の存在を知らぬとは……」
「申し訳ございません……。妹は邸に閉じ込めていた故、外の情報に疎く……」
「家の者は誰も教えなかったということか? 呆れたな……。それで? 謝罪をするのだったか? なら早くしたらどうだ?」
冷めた声音でアルフォンス様がそう促すと、公爵は妹に視線を送った。
それは「謝罪しろ」という意味合いの視線だろうが、当の本人はそれが分からずキョトンとしている。
「謝罪? 悪いのは殿下でしょう? 何故わたくしが謝らなければならないの?」
あまりの物言いに彼女以外の者は皆唖然としてしまった。
今彼女はアルフォンス様が悪いと言ったが、彼のどこがそうだと言うのか。
「カサンドラ!! お前は何を言っているんだ!?」
「だってお兄様、殿下はアイリスを妃にするつもりなのよ? わたくしとの婚約を破棄したのもそれが理由なのでしょう?」
ここまで頭がおかしかったとは……。
おそらくこの場にいる者は皆そう思ったことだろう。
よりにもよって王太子殿下に言いがかりをつけるなんて正気を疑うし、その理由も意味が分からない。ここでどうしてアイリスの名が出てくるのだろう。
「なにを馬鹿なことを言ってるんだ!! お前が婚約破棄されたのは婚約者の責務を果たさなかったことと、不特定多数の異性と親しくしたこと、そして複数の貴族間の婚約を壊したことだと説明しただろう!? 全部お前が悪いんだ! それは殿下のせいにするとは何事だ!!」
「え……だって、殿下はどうせ将来わたくしとの婚約を破棄するのよ? 他所の女と不貞を働き、わたくしを断罪した挙句にその女を妃にするような男とどうして交流しなくちゃいけないの? それに不特定多数の異性と親しくしたと言うけど、それはわたくしが生き延びるために仕方のないことなの。それで婚約が壊れたと言われても……それってわたくしのせいなのかしら? 元々仲が悪かったんじゃなくて?」
あまりにも自分勝手な発言に公爵は妹を叱ることも忘れてその場で固まってしまう。
私とアルフォンス様はというと、冷めた顔で彼等を見るしかできなかった。
こんな異次元な理解力の持ち主と話し合うことなど無理なのではないか、と。
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