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エスカレートする婚約者
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「レオナ、今日はカサンドラ様がいらしてる」
「………………は?」
定例のお茶会のためにロバス邸を訪れた私を待っていたのは、眩しい笑顔でスピナー公爵令嬢を隣に侍らせた婚約者だった。
「どういうことですの……?」
言いたいことは山ほどあれど、目の前の光景が衝撃過ぎてそれしか言葉が出てこない。
婚約者同士の交流を図るお茶会に、何故部外者がいるのか?
何故、彼女はこうも執拗に自分達の交流に割り込もうとするのか?
そう言いたいのに、私の前で仲睦まじく寄り添う二人を見ると言葉にならない。
「たまには未来の王妃様と交流を図るのも必要だろう?」
「まあ、クリスったら気が早いわ! まだ婚約者でしかないのよ?」
「婚約者ならばそのまま婚姻するものだろう? なあ、レオナ?」
この人達は何を言っているのだろう?
未来の王妃と交流を図る機会とは、わざわざ婚約者同士の交流に合わせねばならないのか。
それがおかしいことだと、この人達は何故理解しようとしないのだろう。
ああ、もういいわ……。
この瞬間、私はクリフォード様に一切の期待をすることを止めた。
あれほど非常識な行いだと、私や両親、それにロバス公爵夫妻にも説かれたというのにそれを理解せずまた繰り返す。そのこちらへの迷惑など何も考えていない無神経さに嫌気がさしてくる。
そしてそれはスピナー公爵令嬢も同様だ。
他人の婚約者と仲睦まじくし、婚約者同士の交流に割って入る無神経で常識のない行動が気持ち悪い。
こんな人が王太子殿下の婚約者なんて―――。
そのことに私は一番怒りを覚えた。
殿下の婚約者という立場なら、未来の国母となるのなら、全ての令嬢の模範になるような淑女であってほしかった。
この人ならばあの方に相応しいと、そう思わせてほしかった。
そうでないと……私は何のためにあの方を諦めたのか分からなくなる。
「………………大変申し訳ございませんが、体調が優れませんのでこれで失礼させて頂きます」
「は? 今来たばかりじゃないか?」
「ええ、申し訳ございません。ですがどうにも気分が悪くて……このままここにいたら折角のお茶席を台無しにしてしまうかと……」
ちら、と用意されたテーブルセットを見ると、そこには華やかな薔薇が活けられており、お茶請けには高価なチョコレートが並べられている。
それだけでこの茶席が誰の為に用意されたかが分かる。
決して自分の為ではない。彼の一番大切であろう女性の為に。
「む……それはよくないな。分かった、気を付けて帰ってくれ」
「ええ、それでは失礼いたします……」
私が帰ればこの人はスピナー公爵令嬢と二人きりでお茶を楽しむのだろう。
ああ、何だかもう全てが馬鹿馬鹿しい。
どうして私の婚約者はこんなにも無神経なのだろうか。
こちらに歩み寄るどころか、会うたび惨めな想いをさせるような人と、この先夫婦になり子を成さねばならないなんて……。
そこまで考え、不意に背筋に寒気を感じた。
将来、この人と閨を共にせねばならないことを想像して怖気が走る。
こんな人に触れられたくない。
この人との子供なんて欲しくない。
訪れるであろう未来に絶望し、馬車の中で私は静かに涙を零した。
「………………は?」
定例のお茶会のためにロバス邸を訪れた私を待っていたのは、眩しい笑顔でスピナー公爵令嬢を隣に侍らせた婚約者だった。
「どういうことですの……?」
言いたいことは山ほどあれど、目の前の光景が衝撃過ぎてそれしか言葉が出てこない。
婚約者同士の交流を図るお茶会に、何故部外者がいるのか?
何故、彼女はこうも執拗に自分達の交流に割り込もうとするのか?
そう言いたいのに、私の前で仲睦まじく寄り添う二人を見ると言葉にならない。
「たまには未来の王妃様と交流を図るのも必要だろう?」
「まあ、クリスったら気が早いわ! まだ婚約者でしかないのよ?」
「婚約者ならばそのまま婚姻するものだろう? なあ、レオナ?」
この人達は何を言っているのだろう?
未来の王妃と交流を図る機会とは、わざわざ婚約者同士の交流に合わせねばならないのか。
それがおかしいことだと、この人達は何故理解しようとしないのだろう。
ああ、もういいわ……。
この瞬間、私はクリフォード様に一切の期待をすることを止めた。
あれほど非常識な行いだと、私や両親、それにロバス公爵夫妻にも説かれたというのにそれを理解せずまた繰り返す。そのこちらへの迷惑など何も考えていない無神経さに嫌気がさしてくる。
そしてそれはスピナー公爵令嬢も同様だ。
他人の婚約者と仲睦まじくし、婚約者同士の交流に割って入る無神経で常識のない行動が気持ち悪い。
こんな人が王太子殿下の婚約者なんて―――。
そのことに私は一番怒りを覚えた。
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この人ならばあの方に相応しいと、そう思わせてほしかった。
そうでないと……私は何のためにあの方を諦めたのか分からなくなる。
「………………大変申し訳ございませんが、体調が優れませんのでこれで失礼させて頂きます」
「は? 今来たばかりじゃないか?」
「ええ、申し訳ございません。ですがどうにも気分が悪くて……このままここにいたら折角のお茶席を台無しにしてしまうかと……」
ちら、と用意されたテーブルセットを見ると、そこには華やかな薔薇が活けられており、お茶請けには高価なチョコレートが並べられている。
それだけでこの茶席が誰の為に用意されたかが分かる。
決して自分の為ではない。彼の一番大切であろう女性の為に。
「む……それはよくないな。分かった、気を付けて帰ってくれ」
「ええ、それでは失礼いたします……」
私が帰ればこの人はスピナー公爵令嬢と二人きりでお茶を楽しむのだろう。
ああ、何だかもう全てが馬鹿馬鹿しい。
どうして私の婚約者はこんなにも無神経なのだろうか。
こちらに歩み寄るどころか、会うたび惨めな想いをさせるような人と、この先夫婦になり子を成さねばならないなんて……。
そこまで考え、不意に背筋に寒気を感じた。
将来、この人と閨を共にせねばならないことを想像して怖気が走る。
こんな人に触れられたくない。
この人との子供なんて欲しくない。
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