だから言ったでしょう?

わらびもち

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村長の思惑

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「だけど村長、誤解されたまま暮らすのは辛いですよ。村の奴等、俺を見てヒソヒソと……。両親まで俺を詰るし……。不倫なんかしてないのに不倫男扱いされるし。アニーみたいなつまらない女を選んだ見る目のない男だと思われるのも嫌です」

「お前、気にするところがそこなの? 本当に下衆だな……。そんなに嫌なら村を出りゃいいじゃねえか」

「村を出たって、ここ以外行く所ないですよ。毒の後遺症もあるから働けるか自信もないですし……」

。知り合いの商家で婿さんを探していてな。そこに行ってみるか?」

「再婚しろってことですか? でも俺、商売のことなんて何も分からないですよ?」

「問題ない。むしろ仕事自体に関わってほしくないそうだ。跡継ぎ娘が面食いでな、必要なのは若く顔がいい男だと。お前にピッタリじゃないか?」

 ライアスにとっては願ってもない美味しい話だ。
 仕事をしなくてもいい、だなんて夢のよう。
 だが一つ、ライアスはどうしても譲れない部分がある。

「……その娘ってのは美人ですか? 婿を探さなきゃ見つからないってんなら、ブスなんじゃ……」

 ライアスには女性の見た目をやたら気にする。
 それこそ美人じゃないと女として見れないなんていう最低なところがあった。

「いや、行き遅れの年齢ではあるが美人だぞ? 婿が見つからないのは彼女が賢過ぎるからだよ。女は馬鹿な方が可愛いなんて言う馬鹿な男が多いからな。賢い女ってのはどうも敬遠されがちだ。お前はどうだ? 馬鹿な女の方がいいか?」

「いや……俺は、賢い女は好きです。ロザリンドも賢かったし……」

 ライアスは賢く美しい妻を愛していた。
 愛していたなら大切にすればいいものを、つまらない劣等感から彼女の信頼をなくし、結局何もかもを失った。

「そうか、なら決定だな。先方はきっと喜ぶぞ。お前もこの村から出れるしよかったな」

 村長の言葉にライアスは頷く。
 自分の生まれ故郷だが、この村は今の自分にとって居心地が最悪の場所に変わってしまった。

 ロザリンドとの結婚が決まった時はあんなに涙を流してライアスを褒め称えてくれた両親も、今じゃ手の平返したように罵倒する。羨望の眼差しを向けていた村人たちも今じゃ軽蔑の視線を向けてくるし、ライアスにとってこの村は針の筵のようなもの。そんな彼にとって、この村から出て生活できる申し出はありがたいものだった。

 話も終わり、ライアスは村長の家を後にした。

 彼の姿が完全に見えなくなると、村長のいる部屋に一人の女性が入ってきた。

「あなた、お話はいかがでした? 知りたい情報は全て聞きだせましたか?」

 こんな田舎に似つかわしくないほど華やかな容姿をした女性。彼女は村長の妻である。

 村長は物騒な台詞を吐く妻に驚きもせず、疲れた顔を彼女の方に向けた。

「ああ……驚くほど簡単に聞き出せた。こんなことなら、使

「あら、そうでしたか? なら、わざわざ実家から取り寄せる必要もなかったですね」

「すまないな。俺もまさかこんな単純で能天気な奴だったとは思いもしなかった……」

「そんなにですか? ついこの間まで貴族でしたのに?」

「ああ、あんなんでよく貴族社会で生きてこれたものだ……。いや、実際それが原因で死にかけたわけだな……」

 ひどく疲れた様子の夫に、妻は気遣わしげな表情を向けて問いかけた。

「あなた……随分顔色が悪いですわ? どうされましたの?」

「ん? ああ、俺もあの葉巻を吸ったからかもな……」

「まあ! を? あれほどあなたは吸わないでくださいと言いましたのに!」

「悪い悪い……。アレをライアスだけに吸わせるのも悪いと思ってな……」

「もう! 変なところを気にするんですから! 自白剤は体に負担がかかるんですのよ? ほらもう、横になってくださいな」

 妻は憔悴した夫の手を引き、そのままソファーに寝かせた。
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