僕たちはまだ人間のまま 2

ヒャク

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第41話「2度目の間違え」

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「待ちなさいって!!」

鷹夜の制止の声も聞かず、芽依は無我夢中になりながら彼のズボンと下着を太ももの付け根まで下ろしてしまった。
さながら寝取られもののAVのような展開に、流石の鷹夜も午前3時近くに声を荒げている。

「どうしたんだよ!!芽依!!」
「、、、」
「え、あっ、!」

返事はなく、代わりに下手な感触が脚の間にあるものに触れた。
ズボンと下着を脱がせた結果目の前に現れた鷹夜の萎んだそれを、芽依は有無を言わさず、許可も取らずにパクンと咥え込んでしまった。

「何してんのバカッ」
「ん、」
「ぅアッ、やめ、あっ」

無理矢理に始められた行為に戸惑いながらも、それよりも芽依の様子のおかしさが気になって、鷹夜は半端に抵抗しながら彼の表情を見ようともがく。
視線は合わなかった。
芽依は何も言わずに、ただ色っぽく悲しげな目で鷹夜の肌を見つめながら、たまに目を閉じて奉仕してくる。
脚を立ててもすぐに彼の手で足首を掴まれて引き倒され、鷹夜は一向に立ち上がれない。

「芽依、んっ、んっ」

やめろと言ってもダメそうだ。
何故だかは知らないが、芽依は必死に鷹夜のそれを口に含んで、舌や口内で扱いている。
押し倒されて立ち上がれない鷹夜は彼を見下ろし、彼の口の中で大きくなり始めた自分のそれが恥ずかしく、言葉を詰まらせながら眉間に皺を寄せた。
酒を飲んできたからか、芽依の口の中も、舌も、いつもよりも温かい。
むしろ熱いくらいで、それがまた気持ちが良い。

(何だ、ッ、、そんなに、荘次郎くん、大変なこと、に、、なって、、?)

クチュンっ、と意地悪く、舌先が裏筋の1番いいところを掠めた。

「ひッ!?」

思わずビクン、と身体が震える。

「芽依、待って、お、お願いだから、、!」

話を聞きたいのだが、話す気のない芽依はしつこく舌でそれを舐ってくる。

「ッ、、ん、」

鷹夜は彼のワックスで固められた髪に触れ、仕方なく撫でてやった。
そうするとやっと、鷹夜の足首をもの凄い力で掴んでいた手が少しずつ緩むのが感じられた。

「はあっ、、はあっ、あっ」

早くイかせようとしているな、と何となく芽依の舌の動きで察し、閉じようとしていた目を開けて再び彼を見下ろす。
何がしたいのかよく分からないが、泰清達と飲みに行っていた芽依は不安定になった状態で目の前に現れ、突然に鷹夜を襲っている。
そんな姿を見て、鷹夜自身はモヤモヤしていた。

(何なんだ、本当に、)

こんな事せずとも、いや、してもいいのだが、それよりもまず言葉が欲しかった。
何も言われずにやられるだけと言うのは、何だか心が解せない。

(何で言ってくれないの)

ぢゅるっ ぢゅうっ

「んっ!」

派手な音を立てながら先端をキツく吸われ、思わず腰が浮いた。
いつの間にかじっとりと汗をかいてしまっていて、それでTシャツが肌に張り付いて気持ちが悪い。
このままされ続けて、いつも通り芽依の口に出してしまいたい欲望と、抗って何とか彼を落ち着かせ、何があったかを問いただしたい気持ちが鷹夜の中でせめぎ合い、混ざってぐちゃぐちゃになっていく。
しかしもはや、そろそろ考えられないくらいには追い詰められて来てもいた。

「芽依、話そうよ、ンッ、こんな、無理矢理は、」
「、、、」
「芽依、おい、聞けって、んぁ、あっ」

やはり止まらない。
それに鷹夜自身も性器の先端、尿道の入り口をほじられると堪らず声が漏れてしまい、「やめろ」と言っても説得力がない。

(ダメだ、聞いてくれない。いつだかの、いつだっけ、この、聞いてくれない、芽依の、この感じ、、)

思い当たる節がひとつある。
前にも似たような状況があった筈だ、と熱くなっていく下半身とは真逆にどこか一点だけ冷静な頭の中で思い出すと、ちょうど、芽依と出会って仲良くなった後に、知り合うきっかけになった婚活アプリ・LOOK/LOVEを鷹夜が退会していなかった事が彼にバレたときの事が引っかかった。
勝手に携帯電話の通知を見られ、当時は付き合ってもいなかったし、まだまだお互いを好きになるなんて思ってもいなかったのに、嫉妬と独占欲でおかしくなった芽依に無理矢理にキスをされたのだ。
あの時の芽依と、今目の前にいる芽依。

(ああ、、何だ、あのときの、)

やはり被るものがある。
この態度の急変も同じだ。

「芽依、」

ぢゅるっ、ぢゅぶっ、と卑猥な音が玄関に響いている。
唾液をたっぷりと鷹夜のそれに絡み付けながら、舌先を硬くして刺激してくる芽依の愛撫に、とうとう限界が近づいて来た。
腰のビクつきが治らない。
痙攣しているかのように、ビクンッビクンッ、と小さな舌の動きにすら反応してしまう。

「イク、芽依、め、ぃ、あんっ、ンッ、、んっ、んっんっんっ!!」

後頭部から、耳の付け根から、サーッと痛いくらいに熱い感覚が脳を満たしていき、目の前が真っ白になった。

「あッ、、~~ッ!!」

相変わらず掠れて音にならない声で叫びながら、鷹夜は廊下に仰向けに倒れて腰を突き出し、口元を手で覆って目を瞑った。
気持ち良くて、何より悲しくて切なくて。
芽依にイカされているのに、自分で自分を慰めているときよりも孤独を感じる。

(嫌だ、こんなの)

それでも抗う事ができず、迎えた絶頂で芽依の口の中に射精してしまった。

「ッ、ん、はあっ、はーっ、はーっ」

欲を吐き終わった鷹夜は肩で息をしながら自分を落ち着かせていき、芽依は何も言わずに口に含んだ鷹夜のそれをゴクンッと喉の奥で音を立てて飲み込んだ。
彼自身はそれで満足だった。
何はともあれ、「目の前に鷹夜がいる」と言う事が実感できたからだった。
身体を起こし、鷹夜を見下ろしてからやっと、はあ、と息をついて見せた。

「はあ、、はあ、、」
「鷹夜く、」
「あ"あ"?」

口の中にあった精液は綺麗に喉の奥に消えていて、芽依は躊躇う事なく鷹夜の顔の方へ身を乗り出しながら、床に膝を付いて彼にキスをせがもうとしていた。
していたのだが、名前を呼んだ返事の声があまりにも低く、そして明らかに怒りのこもった瞳がこちらを見上げた事で、やっと我に返ったように「ひぇ」と小さく鳴くように悲鳴を上げたのだった。

「あ、あれ?鷹夜くん?」
「満足か?あ?やっと話聞けるようになったか?満足ですか?芽依くん」
「え、なに、何で?こ、こわ、」

するん、と鷹夜の左手が伸びてきて、着ていたシャツの襟を掴んで皺を作ると、反対の右手を横に開いた。

「ぃやッ、!?」
「まーんーぞーくーでーしょーおーかーあ?」

バチンッ!

「ゔッ!!!」

玄関には静かに肌と手のひらが打ち当たる音が響いた。
乾いた音だ。
ぶたれた芽依は左の頬を押さえながら涙目になって鷹夜を見返り、ぶった鷹夜は不機嫌なままふらつきながら立ち上がり、そして乱された下着やズボンを履き直して芽依を睨みながら見下ろす。
ハアッ、とやたらと大きいため息が降ってきた。

「鷹夜くん、、?」

そうだと言うのに本人は何に対して鷹夜が怒っているのかを理解してすらいない。

「何ッッッもねえのか、言うことが。なあ。何だこれ。俺はお前の情夫かなんかか?慰みものか?」
「え、違う、違うって!ご、ごめん、夢中で、」
「その理由は?なし?お前が求めるのにただ従うのが俺なの?何回やめてって言った?」
「え、あ、ごめん。ごめんね、あの、、」

そこで、芽依は俯いて下唇を噛んだ。

「、、、ちゃんと言ってよ。分かんねーよ」

彼の行動に理由があるのは分かる。
しかし自分と芽依の間にある確かなものが久々に見えなくなったような気がして、鷹夜はやはり解せない気持ちになっていた。
もう一度、ハアッ、と重たいため息が聞こえた。
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