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第31話「完全に忘れてた」
しおりを挟む「どの程度危険なのか見ながらやる。泰清にもちゃんと言う。七菜香ちゃんも入れて話し合うから、その場に、荘次郎の事務所の先輩も呼ぶ」
「うん」
「慎重に進めるし、ドールオンズが動くなら、俺と泰清は何もしないようにする」
「うん」
「鷹夜くんは、、これなら、安心?」
しばらくして、鷹夜から納得できる答えをもらった芽依は考え直し、結果、自分の動き方を決めて彼に伝えた。
「うん。それなら安心できる」
鷹夜はやっと安堵したようで、先程とは違い、いつもの朗らかな表情に戻っていた。
「ごめんね、こんな遅くまで話し聞いてもらって」
「大丈夫だよ。変に遠慮しなくていいし、話してくれて嬉しかったよ」
「うん」
鷹夜の受け入れ方はいつもドンと腕を広げて構えてくれているようで、芽依はそれが堪らなく嬉しかった。
彼の好きなところはいくらでも思い浮かぶが、何と言っても誠実さが色濃く分かるこの安心感は、彼独特のものだろうと思っている。
特に、一時でも人間不信に陥っていた芽依がここまで安心できるのだから、鷹夜と言う人間の穏やかさや緩さと言うのは群を抜いているのかもしれない。
「ん、、よし。俺、お風呂入ってくるね。今日は早く寝よ!鷹夜くんも疲れてるだろうし」
「そだな。俺も入るかな」
「待っててくれたの?嬉しい」
ソファに座っていた2人が立ち上がる。
その刹那、鷹夜の履いていたエッチなパンツのゴムの部分がまた脚の付け根に食い込んだ。
「あ"」
そして彼は思い出したのだった。
自分が今、恋人に履いて欲しいと言われた尻丸出しのパンツを履いている事を。
「ん?どしたの?」
「あっ、いや、あの、」
(パンツのこと忘れてたーーッ!!)
まずった。
ソファの前で立ち止まって動かなくなった鷹夜を見つめて、芽依は首を傾げ、訝しげな顔をしている。
(まずいだろ!このまま風呂入ったら確実にパンツ見られる。こんな真剣な話ししてる最中にこんなパンツ履いてたんだって呆れられるしそれこそマジの変態じゃんか、、!!)
何とかして芽依を先に風呂に行かせ、自分はこのパンツを脱いでから脱衣所に入ろう。
この間1秒程でその考えに至った鷹夜は、急に背筋を正し、芽依に向かって胡散臭い笑みを向けた。
「芽依、俺トイレ行くから先に風呂行ってて」
「え、本当にどうしたの?あ。漏らした?」
「漏らしてねーよ」
「じゃあどしたの。腹痛?大丈夫?」
「は、腹痛!だから先行ってて長くなるから」
「ん、分かった~、、?」
うーん?と何度か右に左に首を捻りつつ、鷹夜の腹痛を信じようと芽依はゆっくりと風呂場へ向かう。
鷹夜もそれについて行き、玄関の前まで来て芽依は右側にある風呂場へ向かい、鷹夜は左側にあるトイレへ行くフリをした。
最後まで自分の不信さに疑問を抱く芽依からの痛い視線に耐えて笑い返すと、脱衣所の扉が閉じるのをトイレのドアの前で待ってから、足音を立てないようにそろそろと歩いてキッチンの前まで戻り、寝室のドアを開けた。
(ヤバいヤバいヤバい、早くしよ)
履いていたスウェットのズボンを即座に下ろし、着にくいわ脱ぎにくいわの尻丸出しのパンツに指を掛けながら代わりのパンツを探し始める。
音を立てないよう気をつけて、逆に芽依が風呂に入るときに聞こえる筈の折戸の開く音に耳を傾け、細心の注意を払った。
(普通のパンツどこ、、!)
「鷹夜くんそれ何」
「え"!?」
クローゼットの中の床に置いてあるケースから自分のパンツを探し出そうとした瞬間、後方の高いところから低い声が降って来た。
鷹夜はギリギリと音を立てながらゆっくりと後ろを振り返り、190センチの高みを見上げ、絶望の表情を浮かべる。
「め、芽依、、」
そこには、驚愕の表情をして鷹夜の尻を見つめながら固まってしまった芽依がいた。
「それ、俺が、鷹夜くんに買いたいって言ったパンツ、、」
「あ、ぁあ、あ、、」
見られた。
おかしい、こちらに近づいてくる足音なんてまったくしなかったのだ。
芽依がどうしてここにいるのか訳が分からず、鷹夜は唇を震わせながらぐるんと身体ごと彼へと振り返り、しゃがみ込んだまま尻を隠した。
「これは、あの、これは決して、俺が買ったわけでは、」
「え!?じゃあ誰が買ったの!?誰に履かされてんのそんなエッチなパンツ!!お尻丸出しじゃん!!ぷりぷりじゃん!!」
「うわうるさッ」
下手に誤魔化そうとした発言で誤解を生んだせいで、鷹夜は芽依に詰め寄られ、思わずその場に尻餅をついた。
直接尻たぶがついた床はひんやりしていて、この時期だと少し身体が冷えそうだ。
「ごめん違う、あの、自分で買って、あの、」
「ま、待って!?自分!?鷹夜くんが自分で買って履いてるの!?」
「だってお前こう言うの履いて欲しいって言ってたじゃん!!恋人の要望に応えて何が悪いんだよ!!」
「嬉しいよそりゃ!!エッチだし!めちゃくちゃエッチだし!!」
局部をくるんと包んでいる面積の小さいパンツの布部分も気になるが、やはり腰と太ももの付け根にあるゴム部分も気になる。
こんなはしたない格好をする鷹夜を見た事がなく、芽依は鷹夜が思うよりも興奮していた。
「もう脱ぐからあっち行けよ!」
大体にして、自分から買って履いているくせにこんなにも恥ずかしがる鷹夜自体にも興奮する。
少し股間が熱いくらいには。
「やだ見たい!!」
「だめ!!もう風呂入って解散!!」
「風呂入るから一回立ってちゃんと見せてよ!!」
「カッ!!」
座り込んだ鷹夜の腕を掴み、何とか立たせてパンツと尻を見ようとグイグイと引っ張る芽依。
鷹夜は恥ずかしくなって顔を真っ赤にしながら抵抗しており、中々立ち上がらない。
それにしても、尻が冷えてしまった。
「お願い見せて、後生だから!!」
「どこでそんな言葉覚えて来た、、!」
ダメだ。力が強すぎる。
ギリギリまで体重を低く後ろにかけていたのだが、芽依の身長と筋力に勝てず、ズルズルとキッチンの前の扉の方へと引っ張られ始めている鷹夜。
足を踏ん張っても意味がなく、もう少しで芽依が寝室から出てしまいそうだ。
このままでは確実に負ける。
抵抗したところで無駄だ。
「や、ヤんないからな!?」
「ヤんないの!?」
「ヤんねーよもう眠いし!それにめちゃくちゃ真剣な話ししちゃっただろ!今更できませんがな!!」
「あの話ししなかったらヤれてたってこと!?」
「お前が話したいことあるとか言うから準備しちゃったんじゃん!!」
「えっえっ、マジで?ごめん鷹夜くん、ごめん!そういう風に勘違いしてくれてたなんて、、、、ヤろ」
「ヤんねーよ!!」
その後、結局パンツと尻は披露したものの、恥ずかしさで死にかけになった鷹夜が力なく風呂場へと歩き始めたので、芽依はまた慌てて謝りながら一緒に風呂に入った。
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