僕たちはまだ人間のまま 2

ヒャク

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第26話「ダブルクリック癖」

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ことの発端は芽依が鷹夜の家に泊まりに来て、彼を見送った次の日。
ブログの管理人からの返信をもう一度読み返して、鷹夜はすぐさま行動に出た。

「え。なに、これ。どう使うの、ん?え、え?」

身体の中の形に沿うような緩やかなカーブを描きつつ凹凸がある。
後ろの穴用のアダルトグッズの写し出されたパソコンの画面を寄り目で見つつ、鷹夜はゴクンッと唾を飲んだ。
ピンク、紫、白、、、いや、色はどんなものでも別にいいのだが、気分を盛り上げるならやはりピンクか紫だろうか。
シリコンで出来ているものが多い。
どちらかと言えば滑り止めと言う印象がある素材に、滑らかににゅるんと中に入るのかが少し疑問になってくる。
しかし、ローションやらゼリーやらだけは、芽依がやたらと買ってくれたからたくさんストックがある。
その辺を使えばどうせ中に入るだろう。

(そう言えば芽依が買った電マ?はアイツの家に置きっぱだったな)

2人の初体験にも満たなかったけれど、初めて明確に行為をしようとしたときに芽依が用意してくれていた筈だが、あれ以来見ていない。
きっと寝室のどこかにあって、しまったまま、プレッシャーをかけないようにと鷹夜の目に触れないように出してこないのだ。

(あれも、、勝手に見つけて使お)

鷹夜は段々と自分の身体を開発するのが面白くなってきてしまっていた。
30歳を超えた大人の男としてはだいぶダメな方向に進み始めているが、これも自分と芽依の為だ、と気を引き締める。
ブログの管理人・前田が書いた記事の中にあるオススメのアダルトグッズのURLを片っ端から覗いて、期待でドキドキと高鳴ってしまう胸を何とか落ち着かせる。
とりあえず、超初心者向けのアナルプラグは買い物カゴに入れておいた。

(あとは何があったらいいかな)

私物のパソコンを開いたのは久々だ。
前まではこれでゲームをしていた時期もあり、もうかなり古い型番のもので、そろそろ買い替えたい。

(あとは、バイブ、、)

穴自体の拡張もしない事には、多分芽依のアレは鷹夜のそこに入らない。
「初級でもう少し先に進みたい人用に」と書かれた文の下にあったURLをクリックすると、今度は拡張用としても使えるアナルバイブのページが出てきた。
25000円程で多少高価ではあるが、レビューも中々にいい。
遠隔操作のリモコン付きで振動も楽しめるものだが、その機能を使わなくても気持ち良いと書いている人が何人かいる。

(こ、、これも、買うか)

月曜日の仕事終わり。
午前1時近くなった深夜の自宅に1人きりで、鷹夜はサラダチキンにかぶりつきながらそんなものを見ていた。

(うわ、うわっ、こ、これ入るようになったらこんなのも、、これも!?これ、すご、うわ、逃げられない感じがすごい、、うわあ)

思わず赤面するようなレビューを書いている人間もいる。
そして何より快感を求めた人間達が欲する形とはこんなにも卑猥なものばかりなのだなと思わせる画像ばかりで、段々とサラダチキンが喉を通らなくなってきた。

(芽依とセックス、、マジでできるようになるかもしんない)

思わずパソコンを乗せた小さなテーブルに突っ伏した。
ゴン、と額が天板にあたる。
やっと見えてきた芽依との明確な未来が嬉しくて胸がいっぱいになってしまったのだ。

(ヤバい、深夜だし、週始めで残業して疲れてて、変なテンションになってきた)

本当に、芽依と。
そんな事を考えたせいか、ムズ、と腰の奥が疼く。
じっとりとした重たいものが下半身に溜まってきている気がする。

(勃ちそ、ヤバい)

強く目を瞑って深呼吸をした。
身体に力が入ってしまい、握り締めたサラダチキンが、入っていたパッケージからチュルンッと勢い良く出てしまった。

「おわっ!チキン!!」

それでようやく、変な熱が逃げていった気がする。

「ぁあ~!!テーブル汚れた、最悪だ」

カチカチッ

逃げ出した最後の一口のチキンをヒョイと摘んで口に放り込み、鷹夜は急いで濡れたテーブルの上をティッシュで拭いていく。
何てこった。
しばらくテーブルから美味そうな匂いが取れないかもしれない。
はあ、とため息をついて、口をもぐもぐさせながら再びノートパソコンの画面へと向き直る。

「、、、ん?」

そこには、「ご購入ありがとうございました!」と表示されていた。

「あ、、あれ?押した?押しちゃったの!?俺!?」

深夜1時にしてはうるさい部屋の中。
響いているのは鷹夜の声だけで、つけているテレビですら近所に気を遣って小音にしている。
先程確かに、カチカチッと音がしたような気がした。
やはり押してしまったのだ。
買い物カゴの中も空になっている。

「やば、え?最後何か余計なもの押したような、、、、ひっ、、ひぃいッ!!」

押していた。
初心者向けのアナルプラグ、遠隔操作のリモコン付きバイブ、それから最後に見ていた中級者向けのコックリング付きのアナルバイブだ。

「間違えてるよ、間違えてるって、これ買ったら完全に変態だって、、!」

もはやアナルプラグとリモコン付きバイブの時点で変態に変わりはないのだが、それでも最後に間違えて買ってしまったその商品の詳細説明を見て、今度は顔が青ざめていく鷹夜。
中級者向けと言うのは穴に挿れるバイブ部分が適度な太さだからこその記載らしい。
上級者ともなると、それは尻の穴に入るのか?と言うレベルの直径のものや尿道に入れるものをブログでは紹介しているようだ。

「よ、横振り機能?、うわ、え、何この動き方」

買ってしまったコックリング付きのシリコン製アナルバイブは形で言うとL字で、Lの長い辺が穴へ挿入するバイブ部分。
この部分が振動するのはもちろんだが、振動の種類が10種あり、L字のちょうど角の下側に電源と振動ON・OFF、振動切り替えのボタンがある。
そして短い辺の先にシリコンの輪っかが連なって2つついており、どうやらこれを肉棒と玉袋に引っ掛けて本体を固定するようだ。

「ヤバいもの買っちゃった、、5万過ぎてるよ。なんて物に金かけてんだ」

呆れ返ってはいるが、こんな事でもない限り鷹夜が使い道が分からず貯めてしまった貯金が減る事はない。

「うわぁ、、中に入れてこんな動きしたら、尻が壊れそうだよ」

サイトに載っていた動画を見ると、どうにもこのコックリング付きのアナルバイブはただのバイブレーション機能の他にL字の長い辺の先がグリングリンと首を回すような横振り機能と言うものが付いているらしい。
前立腺をこねくり回してくるようなその動き方に、また生唾を飲み込んで、一旦画面から顔を離した。

「馬鹿したー、、、」

仰いだ天井は見慣れたものだ。
シミひとつないが、照明が眩しくて目にしみる。
かくして、3日後の木曜日には鷹夜の手元にそれらは届いてしまったのだった。

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