僕たちはまだ人間のまま 2

ヒャク

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第19話「呼んだけど呼んでない」

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「うわッ、!!」

鷹夜が飛び起きると、カーテンのかかった窓から差し込む光はなく、部屋の中は真っ暗になっていた。

「うそ、嘘だろ何時、、うわぁ~~20時!?なに、何が起こったの!?何てこった俺の土曜日が!!」

完全に寝過ぎた。
やはり遅くまで飲むものではない。
下手に寝込んで痛くなった身体をボキボキ鳴らしながら立ち上がり、ため息をついてからベッドにボフン、と腰掛ける。
せっかくの土曜日をほとんど寝て過ごすなんて。
芽依がいないとどうにもそう言う自制が利かない。

「とりあえず、風呂、風呂」

素っ裸のまま部屋の中を移動して、玄関を入って目の前の短い廊下の先にある廊下と部屋を隔てるドアを開け、浴室とトイレが一体になったユニットバスのドアを開ける。
湯沸かし器は寝る前からつけっぱなしだ。
シャワーカーテンも買い換えの時期だな、とぼんやり考えながら湯船の中に入り、熱湯と水の出るハンドルをそれぞれ回した。

「あ"ーーー、最ッ悪だ。こんな寝ます?普通。おっさんになったなあ、俺」

湯船の縁に手をついてまた盛大なため息をつき、シャワーを壁にかけたまま、頭からザーッとちょうどいい温度のお湯を浴びた。
考えてみれば、泊まりで芽依の家に行くと大体彼の方が先に起きて朝食やら昼食やらを作ってくれている。
鷹夜が先に起きる事は珍しい。
あれももう、歳のせいなのだろうか。



(そう言えば、ボディソープってゼリーの代わりになったりすんのか、、?)

そんな邪な考えが浮かんだのは、ちょうどボディソープをボディタオルに垂らしたときだった。
このボディタオルは芽依にもらったもので、肌が弱くてたまに荒れる鷹夜のお尻を気遣って贈った日本製のふわもこな泡が立つと言う売り文句のついているものだ。
同じように芽依が買ってきた尻専用の石鹸も備え付けの石鹸置きにちょこんと乗っている。
ボディソープ自体も芽依が買ってきた高い商品で、彼の家に置いてあるものと同じ製品だ。

「ぬるぬるだもんな、なるんだろうな、、、でもこれ高いから、」

高いけど、でも。
自分が乳首で感じないと分かったときだって自主トレーニングをしてしまった程に向上心の高い鷹夜は、ボディタオルに染み込んでいくソープを眺めてゴクンッと唾を飲んだ。

(高いけど、自主トレにちょうどいい)

そう思ったらもう止まらない。
早々に身体を洗い終えてボディソープの入ったボトルのノズルを押し、とろりとクリーム色の液体を手のひらに乗せると、少しだけお湯を溜めた湯船の中で膝立ちをする。

(少しやったらすぐ洗って終わりにしよ)

ただほんの少し練習がしたい。
それだけの思いで、恐る恐る手に取ったボディソープを、身体を捻って自分の後ろの穴に塗りつけた。

「っん、」

くにゅ、くにゅ、と穴の周りのひだをほぐすように触り、力を抜いていく。
気持ちが良いと言うよりもその手前の、何かもどかしい感じがして気持ちが焦りそうだ。

「ん、ふ、、んっ」

少しお湯をすくって垂らし、軽く泡立てると余計に滑りが良くなった。
これなら入るだろうと右手を尻に回し、中指で穴の入り口を刺激して息を吐きながらシワの中心を押す。

「ぁ、えっ」

くぷん、とすぐに第一関節まで中に入ってしまった。

(うわ、こんな、?)

こんなに緩いのか、と我ながらに驚いている。
指先が入ると後はもう簡単だった。
ここのところ忙しくて自慰行為もしていなかったが、確実に穴は「何か」を受け入れやすくなっている。
つぷぷぷ、と指を奥に埋めると、ぐゆん、と肉壁がうねるのが分かった。

「あッ、、やば、んっ、届かない、うっ」

ぐちっぐちっと音を立てて、自分の中を必死に掻き回す。
しかし、いつも芽依の指がトントンと叩いてくるイイトコロには全然指が届かず、中を掻き回す力も足りない。
正直、「うえっ」と気持ち悪くなるような部分を引っ掻いているだけだ。

「何で、ンッ」

たまにビクンッと腰が揺れる部分を掠めるのだが、それがいまいちどこなのかが分からない。
試行錯誤しながら、仕方なく上から腕を尻側に回すのではなく、脚の間を通して前屈みになりながら穴まで手を伸ばし、またクプンッと手を返しながら指を挿れる。

「アッ」

やっと少し感じる部分に指が届いた。

「あっ、ンッ、んっんふっ」

くぐもったいやらしい声が風呂場に反響している。
体勢的に少し辛いが、それでも指が止まらない。
萎えていた性器も後ろの穴の感覚だけで勃起し始め、もどかしさに負けて左手で扱くとバランスを崩し、ドッと頬を浴室の壁に押し付ける形になった。
はあ、と熱い吐息が漏れていく。

「気持ち、い」

ぐちっぬちっ ぬちっ

粘ついた水音と肌を扱く音が響き、頭の中を満たしている。
こんな体勢で、1人で、一体何て馬鹿な事をしているのだろう。
疲れている筈なのに、こんな事ばかりしたくなる。
下手な好奇心は抱くものではないな。
ボーッとしながら自分の身体を愛撫し、鷹夜はそんな事を考えていた。

「アッ、ぃ、くっ」

射精感が高まって腰の奥が重たく疼き、呼吸が早く浅くなっていく。
頭の中には音が響きつつも、脳裏には確実に芽依の姿が思い出されていた。

『鷹夜くん』

(好き、好きッ、好きッ!!もっと触って、もっと、一緒にいたい、!)

名前を呼ぶ姿を、「好き」と言ってくるときの情けない表情を、自分に覆い被さってくるときの獣のような瞳を、愛しげに細められる視線を思い出して、彼にされているのだと自分に思い込ませて中を擦ると、性器が重怠く、そして身体中の熱がそこに集まってくるような感覚がした。

「イックッ、!、」

熱い。
もうダメだ、熱が爆ぜる。

「め、いっ、芽依ッ」

鷹夜は必死になって頭の中の彼の名前を呼んだ。

「芽依、芽依ッ!いっ、いくっ、イクッ!」
「鷹夜くん呼んだ?」
「ッあ、?」

ガチャッ

「ん、うッ、~~ッあっ、はあっ、はあっ、あ?え?」

(芽依の声した、、?)

芽依の声とドアが開いた音が聞こえたような気がした。
ドピュッと勢いよく射精された白い液体が浴槽の中にパタパタと落ちてお湯に混ざる。
荒く呼吸しながら、鷹夜は心の中で願った。
頼む、聞き間違えであってくれ。
そう強く願った。
願いながら、視線は恐る恐る浴室の入り口へ向いて、そこにいる声の主を見上げた。

「あ、、、あれ?」

小野田芽依は、湯船の中で自分の尻の穴に指を突っ込みながら同時に性器も擦っていた形跡のある恋人の姿を発見してしまった。

「め、芽依、何、で、、」

鷹夜は変な意味で緊張し、指を咥えたままの後ろの穴がギュンッと締まるのを感じた。

「あ、、ぁ、、あぎゃぁああッ!!!」
「た、鷹夜くんごめッ」
「あっち行け馬鹿あッ!!」
「うわッ!、痛いッ!!!」

スコーーンッ!と芽依の額に鷹夜の尻専用のピンク色の丸い石鹸がクリーンヒットする。
悲鳴と怒声が浴室に響き、流石に上と隣の部屋からほぼ同時にバンッ!!と天井と壁を叩かれた。

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