僕たちはまだ人間のまま 2

ヒャク

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第9話「行為のための身だしなみ」

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穴の中に舌をねじ込もうとでも言うように、芽依の舌先がそこをほじり始め、驚いた鷹夜がバチッと目を見開いた。

「やっ、やめろバカッ!きたな、あっ、ぁあっ!」

穴を舐めると同時に腹に回していた手で鷹夜の勃ち上がった性器を掴み、またキュッと亀頭をつねる。
部屋の中には相変わらず肌を舐め上げる音や吸い付く音と、それから荒い息遣いが聞こえていた。

「だめ、いやだ、いやだって芽依、芽依っ、も、挿れてよ、やっ、挿れてって、!」
「ん?んー、ダメ」

くすぐるように舌先が何度も穴を掠めていく。
性器を包んだ手がゆるゆると動いて肌を擦り、その快感で鷹夜は下半身に入った力が抜けなくなってしまった。
甘ったるい刺激に襲われて、脳までビリビリと痺れているようだ。
穴を舐められながら性器を扱かれると前後も分からなくなる程に気持ちが良くて、芽依を気持ち良くしたいだとか彼にされてばかりではダメだとか、そう言う先程まで考えていた筈の事が全て吹っ飛んでいってしまう。
ただただ気持ちが良くて、鷹夜は快感を貪っていた。

「あー、ぁ、あぁ、っん」
「気持ち良いね」

感じる事に必死過ぎて、開けっ放しの口から唾液が溢れそうになる。

「っんぐ、っ、芽依、芽依、気持ちい、あんっ、芽依っ」
「ん、挿れたげる」

訳が分からず自分の名前だけを呼ぶ鷹夜を眺めてから、一旦穴から口を離し、芽依は手を伸ばして枕のそばにあるピンク色のボトルとコンドームの入った箱を取った。
ボトルは中身が少し減っている。
けれどゴムの箱の中身は使用する事がなかったせいか、24個全てが小袋に入って連なったままだ。

「アッ」

箱はその辺に置いてから、唾液を塗りつけるように再び舌を穴に這わせると、右手で掴んだままのボトルの蓋を開けた。
色々研究しようと何種類か買った内の、1番使いやすかった潤滑ゼリーのボトルだ。
キュポッと音がすると、鷹夜がハッとしたように芽依を見上げる。

「あ、」
「ゆっくりするから」
「ぅ、、うん」

何をされるのかはもう理解できている。
覚悟を決めたのか、鷹夜はグッと唾を飲み込んでからまた目を閉じる。
芽依はそれを見つめ、右の手のひらの上にブチュ、と透明な潤滑ゼリーを乗せ、段々と使い慣れてきたそれを人肌まで温めると、唾液が塗られてテラテラとしているシワの寄った穴にゆっくりと塗りつけていった。

「んっ」
「冷たかった?」
「いや、びっくりしただけ、、」

触れ合うのすら久々だ。
鷹夜の身体がいちいちびくつくのも無理はない。
そう言えば爪は切っていたか?と芽依は自分の右手を眺め、短くなっている爪を見て、2日前に綺麗に整えていた事を思い出す。
絶対に鷹夜を傷付けたくない彼は普段から爪の長さには気を遣っているのだ。

「ん、ふっ、、ん」

緊張や期待できゅうっと力が入って締まる穴の入り口にゼリーを乗せ、しばらく周りのシワを撫でるように慣らしていく。
時折り穴の中心に中指の腹を押し付けてぐっぐっと軽く押して刺激し、それを何回か繰り返してから、とうとう芽依の指がツプン、と慎重に鷹夜の穴に入ってしまった。

「ぅあっ」
「こっち見て、鷹夜くん。こっち」
「あ、あっ、芽依、入った?、ンッ」

涙が溢れそうな目が、潤んだまま芽依へと向いた。

「うん。ゆっくり奥入れるからね」
「ゲホッ、んっ、んんんっ」

たまに指を抜いて、またゼリーを足す。
徐々に徐々に奥を目指し、けれど鷹夜に無理のないようゆっくりと進めていくと、やっと右手の中指が根元まで彼の中に埋まった。
体内は温かくて、やはり少しでも動かすとキュッと締まってしまう様が見ていて愛しい。
敏感なところを触らせてくれている。
そんな鷹夜からの信頼ですらも芽依を煽っていく。
早くここに自分の勃起した欲望を挿れて、奥を突き上げたいと言う衝動が湧いた。

「ッん、はあっ、はあっ、はあー」

力みそうになるのを堪え、鷹夜は必死に息を繰り返していた。
彼からしてみれば久々の異物感は少し気持ち悪く、そして気を緩めると中に収まった指を外に出してしまいたいと筋肉が動きそうになるのだ。

「鷹夜くん」
「あっ」

優しく名前を呼ばれるのが心地良くて、思わず声が上がった。
芽依に呼ばれると、こんな馬鹿な事を1人でしている訳ではないのだと分かって鷹夜は安心する。
芽依の声にまた閉じてしまっていた瞼を開け、脚の間から顔が見える彼の目を深く呼吸しながら見つめ返した。

「はあー、、はあー、、」
「痛い?怖い?」
「っん、ううん、平気」
「動かして大丈夫?」
「うん、いい、、んぃッ、アッ」

中で指を曲げると良いところに当たったのか、鷹夜の息が一瞬だけ途切れた。

「ッ、はあっ、んっ」
「鷹夜くん、可愛い」
「ん、芽依、好き、芽依っ」
「ッ、、あんまそう言うこと言わないでよ」

切なげな声で、物欲しそうな顔でそんな事を言われたら、無茶苦茶に犯してしまいたくなる。
そんな欲求を抑えながら、可愛らしく喘いで自分の名前を呼ぶ鷹夜に、芽依もどんどん股間を熱くさせていた。

(マジで勃ち過ぎて痛い)

それでも性急に事を進めて鷹夜に傷を作りたくはない。
理性で全てを抑え込み、芽依は丁寧に鷹夜の中を解していく。
鷹夜の腹の裏を撫でるように指を曲げ、粘膜を傷付けないようにゼリーを足して滑りを良くしながら中を撫で回す。

「ふっ、んっ、ぁ、んあ、あ」

くちゅ、くちゅ、と指の動きに合わせて粘着質な水音が上がり、鷹夜の肉壁が芽依の指をキツく締め上げた。
卑猥な行為に満たされた空間で、自分は5つも歳下の恋人に何をさせているのだろうと冷静になろうとするのだが、すぐに芽依の指からの刺激がそんな思考を停止させてしまう。
鷹夜は甘い電流を全身に感じながら、たまに良いところを指先が掠めるたびにビクンッと腰を浮かせ、あられもない声を漏らした。

「鷹夜くん」
「ん、や、ぁあっ」

少し身を乗り出して、芽依が上からジッと鷹夜を見つめる。
嫌がりながらも、あまりにも熱い芽依からの視線に耐えかねた鷹夜は少し涙の滲んだまつ毛をパタパタと瞬きさせ、眉間に皺を寄せながら薄めで彼を見上げる。

「め、いっ、んふ、ンッ」

相変わらず整った顔の竹内メイが、欲情し切った辛そうな表情で鷹夜を凝視していた。

「可愛い」
「バカ、ぁんっ」
「可愛い」
「っもお、いいから、ぁッ」

ああ、キスがしたい。
お互いの顔を見つめながらそんな事を考えている。
少しだけ開いた口で気怠げに呼吸をしている鷹夜は快感と言う熱に浮かされていて、後ろの穴から腰の奥に劈いていくそこでしか感じられない気持ちの良さに飲まれていた。

(これなら大丈夫かな)

芽依は鷹夜のとろんとした顔を見つめながら、一度、ゆっくりと中から指を引きずり出す。

「んぁ、ん、っ」

ちゅぽ、と小さな音がすると、ふやけ始めた中指がそこから抜けた。

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