僕たちはまだ人間のまま

ヒャク

文字の大きさ
上 下
120 / 142

第120話「熱を帯びる」

しおりを挟む




ピンポーン

「っ!」

恋人ルールその1。
送り迎えはできるだけ控える。
あまりにも芽依が鷹夜を車に乗せる回数が多いと、流石に付き合っているのでは?何か良からぬ関係なのでは?と雑誌の記者やら追っかけとかストーカーとかしてしまうファンやらに疑われそうだと感じた鷹夜が提案したルールで、車を持っている芽依が自分を迎えに来たり送ったりしようとするのを食い止める為に設けた。
もともと電車通勤を8年、その前も大学で電車通学、高校も電車通学をしていた彼は電車と言うものに慣れていて、三半規管の弱さですぐ酔う車と違い断然健康のまま長距離移動ができるので助かっている乗り物でもあるので、これからは芽依の家までこれで通うと決めたのだ。
彼が鷹夜の家に来る場合は彼なりのやり方で良いと言ってあるが、鷹夜から行く場合は鷹夜流にする、と言う事だ。

ガチャッ

「鷹夜くんッ!!」
「おう」

合鍵を持っているくせに、部屋の前でチャイムを鳴らした鷹夜は嬉しそうにドアを開けた芽依を見て少し照れたような反応を返した。
久しぶりに訪れた部屋は変わっている部分はなく、お互いにやっと重なった休みを今日はゆっくり過ごそうとしている。
鷹夜は今日、明日が休みで、芽依は先程まで仕事があった。
今日と言っても鷹夜が芽依の家に来たのは午後17時過ぎで、芽依の仕事と自分の睡眠時間を考え、2人でこの時間から会おうと話し合った結果だ。

「い、1ヶ月ぶりの鷹夜くんっ!」
「ちょ、靴脱いでるから」

会った瞬間からベタベタと身体にまとわりついて来る芽依が嬉しくも恥ずかしく、どこか素っ気ない態度を取りながらリビングに上がる。
途中にあるキッチンに、昼間に少し高級なものを揃えているスーパーで買ってきた惣菜やおつまみ、酒の入った紙袋を置き、とりあえずリビングのソファに座った。

「はあ~、電車混んでた」
「だから迎えに行くって言ったのに」
「いや、疲れたけど今日土曜日で人多かったからだし、うちからここまで30分だよ?歩き入れて40分。いちいち迎えに来なくていいよ。ルール忘れた?」
「わーすーれーてーなーいーよー。何でそう甘えてくれないかなあ~~色気がない」
「なくていい」

会って数分でブスっと頬を膨らませ、むくれ始める芽依。
会っている時間を少しでも増やしたいのだろうが、決めたルールはルールだ。

「、、ありがとう。遅くなってごめん」

少しイラつきながら隣に座った芽依に、鷹夜はふっと表情を緩めて話し掛ける。
手を伸ばし、いつものようにサラサラな髪に触れると、一瞬「解せぬ」と言う顔をした彼はすぐに緩みそうになる口元をぐにぐにと歪めて鷹夜の方を向いた。

「っ、、すぐそうやって俺のこと甘やかす!!」
「うん。好きだし、可愛いから」
「っぬぅうう!!馬鹿!!好き!!」
「おー、よしよしよし」

完全に懐柔している。
芽依は嬉しそうに鷹夜に抱きつき、肩に顔を埋めて久々に会えた恋人の匂いを吸いまくった。
芽依は鷹夜に自分の事を「スパダリ」「ハイスペック」と思って欲しくて日々努力してはいるのだが、未だにこの鷹夜の底知れぬ「大人」の振る舞いに勝てた試しがない。
情けない程に尻尾をブンブンと勢いよく振る大型犬としか、鷹夜に認識されていなかった。

(芽依、可愛いなあ)

「鷹夜くん俺寂しくてね!!我慢できなかったから鷹夜くんがこないだうちに来たときに着てたTシャツとかめっちゃ嗅いじゃった!」
「1ヶ月以上前のだろ!?それは洗え!!汚ねえ!!」
「鷹夜くんが着たものが汚れてるわけないだろ!!」
「現実を見ろ!!」

それだけ聞くと鷹夜は芽依を自分から引き剥がし、急いで寝室に駆け込む。
ベッドの上に丁寧に畳んで置かれている見覚えと着た覚えのあるTシャツを見つけると掴み上げ、急いで洗濯機の元へ走った。

「やめてー!!鷹夜ジュニアー!!」

そしてそれを「鷹夜Jr.」と呼んで毎晩嗅ぎ、一緒に寝ていたせいで愛着が湧いてしまっていた芽依は、捨てる訳でもないのに洗われたくなくて鷹夜の後を追った。





「芽依」
「、、、」
「芽依、っん、、あのさあ、」
「ん、なに?」
「その、、やめない?」

はあ、と熱い吐息を吐き出して、鷹夜は自分の脚の間にある芽依の顔を見下ろした。

「やめない」
「っ、、」

ニコ、と笑った芽依と対照的に、鷹夜は困惑して眉間に皺を寄せた。
ひと通り最近あった事を話し合い、笑って、腹も膨れるくらい買ってきた惣菜類を食べて酒を飲んだ。
今日はお互いにあまり酔っぱらったと思わない程度で終わらせ、つけていたテレビで始まった旅番組を見ていたところだった。
旅番組、から連想して先月の鷹夜の実家への旅行の話しになり、その結果、今、こうなっている。

「んっ、、くすぐったいんだってばあ」
「ゾワゾワしない?」
「ゾワゾワ、、も、する」

鷹夜がソファに座り、脚を開いたその間に芽依がいる。
床に座り、ズボンを脱ぎ捨てた鷹夜の太ももを執拗に舐め回しているのだ。
それも、触れるか触れないかと言う加減のせいで、ゾワゾワと肌が粟立つようにしている。

「鷹夜くん、勃起したね」
「見んな、恥ずかしいんだから」
「見ちゃうよ。彼氏のちんこだもん」

目の前でパンツを押し上げて勃ち上がっている雄々しいものを眺め、芽依はニヤニヤと笑む。
彼の頭上からその姿を見つめる鷹夜は恥ずかしさと興奮で顔を赤くして「はあ」と呆れたように息をついた。

「鷹夜くん」
「ん、なに」

熱っぽい視線がこちらを見上げてきた。

「今日は鷹夜くんのちんこしゃぶるからね。あとお尻の穴も舐める。乳首も触る」
「分かった分かった分かった」
「ちゃんと聞いてよ。ちゃんと頭に入れて」

スリ、と足の付け根を撫でられ、思わず鷹夜の身体が跳ねる。
芽依が言った台詞を刻むように頭の中で繰り返すと、段々と身体が熱くなるのを感じた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

必然ラヴァーズ

須藤慎弥
BL
ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから熱烈求愛され、付き合う事になった卑屈ネガティブ男子高校生・葉璃(ハル)。 トップアイドルと新人アイドルの恋は前途多難…!? ※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線 ※いやんなシーンにはタイトルに「※」 ※表紙について。前半は町田様より頂きましたファンアート、後半より眠様(@nemu_chan1110)作のものに変更予定です♡ありがとうございます!

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...