62 / 184
62 俺の姫プレイとストーカーの正体
しおりを挟む 私はサイラスの後ろを冷や汗を流しながら付いて歩いている。
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
275
お気に入りに追加
568
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。


モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる