姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

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13 俺の姫プレイとレイド前夜 5

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 トモヤが……俺に貢ぐ……!?

「って言うか。僕、チヒロにもう貢いだよね?」
「ん?」
「忘れちゃった? さっきバザーで装備品を買ったでしょ?」
「……あ」

 そういやレンのことでムシャクシャして、バザーの会計をトモヤに押し付けたんだった。

「……悪い。さっきは虫の居所が悪くて」
「分かってるから大丈夫。……で、どう? 結構有りだと思うんだけど?」
「して、その心は? 見返りに求めるモノは何?」
「またチヒロと一緒に冒険がしたい。それだけだよ」

 トモヤが俺の顔を見て、ニッコリ笑う。

 うっ……そんなこと言ってくれるなんて、純粋に嬉しいぞコノヤロウ。
 俺は思わず顔が緩みそうになる。

「あと貢げる物……そうだな……チヒロがいなくなった後に追加されたボスのドロップ品でいい?」
「えっ!? マジ……?」
「マジ。<暁>メンバーと、他で良さそうな前衛職を誘って取ってくるよ」

 うう……自分で言っておきながら、突然申し訳なさが襲ってくるんだけど……。
 視線を右往左往させて落ち着かない俺を見て、トモヤがクスッと笑う。

「一回経験すれば気付くと思うんだよね。いかに自分が姫プレイに向いてないのか」
「? 何か言ったか?」

 小声すぎて聞こえなかった。何だ?

「何でも無いよ」
「そうか……?」
「あとここでチヒロ捕まえておかないと、後々大変なことになりそうなんだよねぇ」

 溜め息混じりにそう言うと、トモヤの赤い瞳が俺を見つめてきた。

「大変なこと??」

 トモヤの言葉に俺は首を傾げる
 何だろう? 何が起きるって言うんだ?

「<エクソダス>のレン」
「アイツがどうかしたのか?」
「チヒロのこと、誘ってくると思うよ」
「誘う??」

 トモヤが俺を指差してくる。
 コラ! 人に向かって指をさしてはいけません!
 学校で習わなかったのか?

「今のチヒロは『チロ』でしょ? 現在、特定のチームにも所属してない」
「まぁ、そうだな」
「レンはそんな『チロ』の中身がチヒロだと知っている」
「まぁ、そうだな?」

 トモヤよ。一体何が言いたいんだ。さっさと結論プリーズ!

「<暁>のチヒロ言えば、チムメン全員が赤竜のピアス取るまで、何度も赤竜戦に挑んで撃破しまくったヤツです。そんな凄いプレイヤーがどこのチームにも所属しないでウロウロしてるんだよ?」
「いやでも、こっちにも選ぶ権利はあるだろう? 嫌だよレンのチームなんて。アイツとは合わないから絶対ヤダ! 向こうもそう思ってるって!」
「そうかな?」
「そうだよ!」

 想像しただけでも嫌だね。無理無理。
 うぇーっと舌を出しトモヤにアピールする。

「そうだといいんだけどねぇ……」

 納得してないトモヤを尻目に、俺は話題を変えた。

 <暁>メンバーはこの半年、何をやっていたのかとか、トモヤ自身のこととか、喋りに喋った。
 やっぱり気心知れてる相手と喋るのは楽しいな。
 時間を忘れてずっと互いに喋っていた。

 そういえば、トモヤが魔術師になると『タナカ』という名前に変わるのは、キャラクター名を入力する際に、ラストネームまで付けていることが関係していた。
 メイン職はファーストネーム、それ以外はラストネームと使い分けているようだ。

 DFOにおいては、ラストネームまで付けて、職業別などマイルールで使い分けるのが主流らしい。

 フレンド一覧もファーストとラストの二種類に分けて管理出来るとか。
 だから『トモヤ』をフレンドにするには、ジョブチェンジが必要だったんだな。

 ちなみに俺はラストネームなんてモノがあったことを、ゲーム発売以来初めて知った。

 もしかして、目の前で人の名前が変わったことに驚いたのってDFOの中で俺だけ?
 だったら、ちょっと恥ずかしい。


***


<金曜日 22:48>

 もうこんな時間か。
 二時間半くらい喋ってたか?
 宿の休憩時間もそろそろ終わりだろう。

 グッと背伸びをしてから、俺は立ち上がり、部屋のドアへ向かう。

「トモヤ~!そろそろ行こうか」

 そう声を掛け、俺はガチャリとドアノブを捻る。


 ガチャ

 ガチャガチャ


「? 開かない?」
「……あー……そうだった。チヒロに言うの忘れてた」

 部屋の天井を仰いだトモヤがボソッと呟いた。
 俺は振り返ってトモヤに聞く。

「?? 何でこれ開かないんだ?」
「チヒロ。そこ開かないから」
「だから、なんで」
「チヒロがカップル部屋を選んだからだよ」
「意味わかんねぇ。どういうこと?」

 ふー……っと大きな溜め息を吐いた後、トモヤが意を決したように俺を見た。
 そして俺にカップル部屋とは何かを伝える。


「カップル部屋ってのは、いわゆるセックスしないと出られない部屋だよ」
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