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第一章 謎の男
第六話 そして朋華の妄想
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こうなったら気が済むまで語らせてもらうわよ。
おじさんとユウキちゃんは、また顔を見合わせている。
「そもそも、なぜ電話だけ取り外して台を残したのか? ホールの隅にあって何の役にも立っていない電話台を残したことにこそ意味があるはず」
なんか探偵ドラマに出てくるクライマックスの謎解きっぽい。
やっちゃえ、わたし。
「台そのものよりも、きっとあのプレートね。実は繋いでいたのは電話だけじゃない、異世界とも交信出来たのよ!」
脳内ではジャジャーン! って感じの派手なBGMが鳴り響いている。
自分の言葉なのにワクワクが止まらない。
ふっふっふ、二人ともわたしの妄想――いや推理にはついてこれまい。
「あの人はコーヒーCMのジョーンズさんみたいな異世界からの調査員、それとも特異点なのかもしれない。毎日あの場所から異世界に向けて調査内容を報告しているんだよ。
でも、あの台を残すのを決めたのは区役所だから……役所の人の中にも異世界から来た人がいるはずだよね!
ひょっとしたら少しずつ入れ替わって、あの区役所はもう異世界人の拠点になっているのかも!?」
わたしったらラノベの読み過ぎかしら。
一気に話し終わって、大きく息を吐いた。
とりあえず、思いの丈をぶちまけて少し気分も晴れたかな。
そこをすかさずおじさんが突いてくる。
「話としては面白いからさ、今度それを小説にしてみれば?」
「えっ、なに言ってんの!? あたしが書くってこと?」
「うん。イラストだって中学の頃から書いてるんだから、挿絵も自分で書けばいいじゃん。きっと楽しいぞ」
「朋華ちゃん、絵は上手いもんね」
「俺から見てもそう思うよ。実はちょっと期待してて、新宿の世界堂へイラストの本を買いに一緒に行ったこともあるし、コピックって言うんだっけ、専用マーカーペンを誕生日プレゼントに買ってあげたし」
「おじさん、朋華ちゃんには甘いからなぁ」
ユウキちゃんに突っ込まれて、おじさんは「いやぁ、そんなことは」ととぼけている。
「それじゃ、もし書いたときは読ませてね」
妹分にもそう言われちゃうと悪い気はしない。
確かにちょっと面白いかも。
まんざらでもない気分に浸っていると、おじさんはパソコンで区役所付近の地図を検索してる。さっき確かめたいって言ってたからね。
あーぁ、妄想タイムはここまでか。
「で、その裏付けは取れたのー?」
わざとつまらなそうに聞いてみる。
ほんとにあの情報だけで推理できたなんて信じられない。
でも、おじさんがいい加減なことを言ったりしないのは知っている。
「いや、これじゃ分からないや」
顔を突き出すように画面を見ていたけれど、眼鏡を置いてこちらに向き直った。
「とりま、おじさんの意見を聞かせてよ」
ユウキちゃんはそう言うけれど――そうだ!
「来週、確かめてみない? まだ試験休みだし」
「確かめるって、どうするの?」
「もちろん尾行するの。謎の男を」
「面白そう! 私もやりたーい!」
「やろう、やろう」
「やるのはいいけれどユウキちゃんは学校があるでしょ。残念だけど我慢して」
女子が盛り上がっているところへ大人が水を差す。
「えぇーー。朋華ちゃんだけ、ずるーい」
「ごめんね。結果はすぐに教えるから」
「それじゃ、謎解きもお預けにしておいて、尾行の結果が分かってから聞かせてよ」
ユウキちゃんのお願いに、おじさんもうなずく。
「いいよ。朋華もいいよね」
「うん、オッケー。もし間違っていても、ちゃんと話してね。どんな推理をしたのか知りたいし」
「もちろん。ま、当たっているとは思うけど――ぉげっ!」
「だーかーらー。ドヤ顔は、す・る・な」
まったく。すぐ調子に乗るんだから。
まるで腹パンされるのを楽しみにしてるみたいじゃない。
「私にも聞かせてくれよ」
ユキさんがおじさんへ声を掛ける。
そして、謎の男の正体を見極めるのは、わたしのバイトが休みとなる火曜日に決まった。
おじさんとユウキちゃんは、また顔を見合わせている。
「そもそも、なぜ電話だけ取り外して台を残したのか? ホールの隅にあって何の役にも立っていない電話台を残したことにこそ意味があるはず」
なんか探偵ドラマに出てくるクライマックスの謎解きっぽい。
やっちゃえ、わたし。
「台そのものよりも、きっとあのプレートね。実は繋いでいたのは電話だけじゃない、異世界とも交信出来たのよ!」
脳内ではジャジャーン! って感じの派手なBGMが鳴り響いている。
自分の言葉なのにワクワクが止まらない。
ふっふっふ、二人ともわたしの妄想――いや推理にはついてこれまい。
「あの人はコーヒーCMのジョーンズさんみたいな異世界からの調査員、それとも特異点なのかもしれない。毎日あの場所から異世界に向けて調査内容を報告しているんだよ。
でも、あの台を残すのを決めたのは区役所だから……役所の人の中にも異世界から来た人がいるはずだよね!
ひょっとしたら少しずつ入れ替わって、あの区役所はもう異世界人の拠点になっているのかも!?」
わたしったらラノベの読み過ぎかしら。
一気に話し終わって、大きく息を吐いた。
とりあえず、思いの丈をぶちまけて少し気分も晴れたかな。
そこをすかさずおじさんが突いてくる。
「話としては面白いからさ、今度それを小説にしてみれば?」
「えっ、なに言ってんの!? あたしが書くってこと?」
「うん。イラストだって中学の頃から書いてるんだから、挿絵も自分で書けばいいじゃん。きっと楽しいぞ」
「朋華ちゃん、絵は上手いもんね」
「俺から見てもそう思うよ。実はちょっと期待してて、新宿の世界堂へイラストの本を買いに一緒に行ったこともあるし、コピックって言うんだっけ、専用マーカーペンを誕生日プレゼントに買ってあげたし」
「おじさん、朋華ちゃんには甘いからなぁ」
ユウキちゃんに突っ込まれて、おじさんは「いやぁ、そんなことは」ととぼけている。
「それじゃ、もし書いたときは読ませてね」
妹分にもそう言われちゃうと悪い気はしない。
確かにちょっと面白いかも。
まんざらでもない気分に浸っていると、おじさんはパソコンで区役所付近の地図を検索してる。さっき確かめたいって言ってたからね。
あーぁ、妄想タイムはここまでか。
「で、その裏付けは取れたのー?」
わざとつまらなそうに聞いてみる。
ほんとにあの情報だけで推理できたなんて信じられない。
でも、おじさんがいい加減なことを言ったりしないのは知っている。
「いや、これじゃ分からないや」
顔を突き出すように画面を見ていたけれど、眼鏡を置いてこちらに向き直った。
「とりま、おじさんの意見を聞かせてよ」
ユウキちゃんはそう言うけれど――そうだ!
「来週、確かめてみない? まだ試験休みだし」
「確かめるって、どうするの?」
「もちろん尾行するの。謎の男を」
「面白そう! 私もやりたーい!」
「やろう、やろう」
「やるのはいいけれどユウキちゃんは学校があるでしょ。残念だけど我慢して」
女子が盛り上がっているところへ大人が水を差す。
「えぇーー。朋華ちゃんだけ、ずるーい」
「ごめんね。結果はすぐに教えるから」
「それじゃ、謎解きもお預けにしておいて、尾行の結果が分かってから聞かせてよ」
ユウキちゃんのお願いに、おじさんもうなずく。
「いいよ。朋華もいいよね」
「うん、オッケー。もし間違っていても、ちゃんと話してね。どんな推理をしたのか知りたいし」
「もちろん。ま、当たっているとは思うけど――ぉげっ!」
「だーかーらー。ドヤ顔は、す・る・な」
まったく。すぐ調子に乗るんだから。
まるで腹パンされるのを楽しみにしてるみたいじゃない。
「私にも聞かせてくれよ」
ユキさんがおじさんへ声を掛ける。
そして、謎の男の正体を見極めるのは、わたしのバイトが休みとなる火曜日に決まった。
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