PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

文字の大きさ
204 / 297
第10弾 マイフェアレディ

A lover is a sexy dance girl(彼女は色っぽい踊り子)

しおりを挟む


「ちょっと、ちょっと、今、トムとフレディから聞いてビックリなんすけど、2人の彼女がバミーとバーバラだって知ってましたっ?」

 さっそくケントはみなに触れ回りにキャスト食堂へ駆け込んだ。

「ええっ?バミーとバーバラがトムとフレディの彼女ぉ?」

 メラリーはあまりにビックリして豚肉の梅マヨ炒めをボタッと皿に落っことした。

「いや、全然、気付きませんでしたが、『灯台もと暗し』というヤツでしょうか」

 太田も信じられないという表情だ。

「まさか。トムとフレディの妄想だろ妄想。彼女が欲しい願望が高じての妄想に違いねえ。憐れな奴等だぜ」

 ジョーはまったく信じない。

 トムとフレディに彼女がいるなど認めたくない。

 しかも、可愛い彼女ときたら尚更だ。

 バミーとバーバラは着ぐるみの中身という都合上、十年一日じゅうねんいちじつのごとく、すっぴんで髪を結んで前髪をヘアピンできっちりと留めて、Tシャツに短パンという色気のないダサダサの姿である。

 だが、きちんとヘアメイクを整えてドレスを着たらば見違えるような美女に変身することはクリスマスイブのダンス大会で実証済みだ。

 そのバミーとバーバラが春にカンカンの踊り子になったら普段からヘアメイクばっちりでコスチュームのドレス姿の美女のままということになる。

「ま、よしんば彼女だったとしてもカンカンデビューしたら、とたんにモテモテになってよ、トムとフレディになんざ鼻も引っ掛けなくなるだろうぜ」

 ジョーはカラカラと笑う。

 自分は不特定多数の美女と不純異性交遊するスケコマシのくせにトムとフレディの純粋な恋路は邪魔したいのだ。


(ジョーさんったら、トムとフレディに彼女がいたのがよっぽど悔しいみたいね)

(ひょっとしたら、ひょっとして、これをキッカケにジョーさんも特定の彼女が欲しくなるんじゃないかしら?)

 クララは後ろ側のテーブルに着いて聞き耳を立てながらワクワクとポジティブな期待をした。


「それにしても、アニタ、まだ、いなご新聞のインタビュー終わらないのかなぁ?」

「いくらなんでも今頃は更衣室で私服に着替えてるんじゃない?」

 スーザンとチェルシーが壁の時計を見やる。

 もう20分は経っている。


「あら?あなた達、アニタならカンカンのみんながオーディションの祝勝会だとか言ってゲストルームへ連れてっちゃったわよ」

「バミーとバーバラもよ」

 ゴードン、マダム、サンドラがキャスト食堂へやってきた。

 ちなみにゲストルームというのはバックステージに大中小と3つある個室で、キャストは予約すると歓迎会やら送別会やらに利用することが出来る。

 カラオケ完備で料理や飲み物は隣接するキャスト食堂から注文するのだ。

 美女揃いのフレンチカンカンの踊り子はやたら目立つために地元の温泉街の飲食店では気兼ねなく酔って騒げないので飲み会にはもっぱら関係者以外立ち入り禁止のバックステージのゲストルームを利用していた。

 マダムとサンドラは若い踊り子に気を利かせて祝勝会には参加しなかったのだ。


「なんだぁ。じゃあ、この隣のゲストルームにいるのね。お祝いを言おうと思って待ってたのに」

「仕方ないわ。アニタはもうカンカンの一員なんだもの」

「うん。これからはわたし達よりカンカンの先輩達との付き合いがどうしたって優先になるわよね」

「そうよね。カンカンデビューまではダンスのレッスンだって忙しいだろうし、友達も彼氏もほったらかしになっちゃうわよ」

 クララ、ミーナ、スーザン、チェルシーは残念そうに顔を見合わせる。


「――え?ほったらかし?俺まで?」

 ケントはハッと気付いた。

 そういえば、フレンチカンカンの踊り子はウェスタン・タウンに来れば逢える身近なアイドルのような存在なのだ。

 なにしろ50人もいてダンスで鍛えられたプロポーションは抜群で美女レベルが高い。

 コスチュームのドレスは胸の谷間を強調した挑発的なデザインで脚線美を見せびらかすようなハイキックはブルマー丸出しでお色気たっぷりだ。

 ジョーの言うようにバミーとバーバラがモテモテになるなら、アニタだってモテモテになってしまうかも知れない。

 それでなくてもグラマーでフレンドリーでちょっとズボラでユルい雰囲気のアニタは男から声を掛けられやすいタイプなのだ。

「……」

 ケントはとたんに不安いっぱいで情けない顔になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...