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第9弾 お熱いのがお好き?
What is this?(どういうこと?)
しおりを挟む「――というワケなので、どうか一つ、クララちゃんとの関係を修復するために知恵を貸して下さい~」
アランはショウのキャストみなに手を合わせてお願いした。
「またヒトから借りるのかよ?」
「人任せ~?」
「わたしが貸してあげたスーツに鼻血を付けたのよ。たとえ知恵だって貸したくないわねっ」
ジョー、メラリー、ゴードンはけんもほろろに突っぱねる。
「そうだな。クララちゃんに嫌われたところをアランが反省して改めればいいんじゃないか?」
「馬鹿だから愛想を尽かされたんだろ?」
「馬鹿を直せよ。アラン」
マーティ、ヘンリー、ハワードは大雑把な助言をする。
そこへ、
「あの、前々から気になっていたんですが――」
思案げに黙っていた太田がやにわに口を開いた。
「アランは高校を卒業する前のバレンタインにルルちゃんからチョコを貰ったんですよね?」
以前、ルルから訊いた話をアラン本人に確認したかったのだ。
「――え?」
アランは(何で2年も前のことを?)と不可解そうに太田を見やった。
「ルルちゃんも清純な乙女でアランの理想に当てはまると思うんですが、何故、ルルちゃんとは付き合わなかったんですか?おまけにタウンで再会してもルルちゃんのことを覚えてなかったそうじゃないですか?」
太田はルルに代わってアランを責め立てる。
「――あ、いや、地元の高校の馬術部の中であんな飛び抜けて可愛いコのこと覚えてない訳ないじゃないっすか。あの時は忘れたフリしただけっすよ」
アランはシレッと答えた。
「何だって忘れたフリを?当時、まだ高校1年だったルルちゃんはアランにチョコを渡して初めてのチューであろう唇を奪われたというのに」
責め立てる太田を遮るように、
バキッ!
何かが割れる音がした。
振り返るとレッドストンが思わず握り締めた箸が真っ二つに割れた音だった。
「……」
レッドストンは蛇のような目でアランを睨み付けている。
「――ええ?唇を奪われた?俺に?」
アランはまったく身に覚えがないらしい。
「ルルちゃんにチョコを貰って、『ありがとう』ってお礼のチューをしたんでしょうが?」
太田が厳しく追及する。
「ま、まさか、唇じゃないっすよ。あっ、オデコに軽くチュッてしただけっすよ」
アランはブンブンと首を振る。
「オ、オデコに?」
太田はガクッと力が抜けた。
そういえば、太田が「チューをされたんですか?」と訊ねた時にルルは頷いただけだった。
唇にとは一言も言ってなかったのだ。
「じゃあ、ルルちゃんの唇はまだ清らかなまま」
太田はホッと胸を撫で下ろす。
「はあぁ、脅かすんじゃねぇぜ」
レッドストンも安堵の吐息をついて割った箸をポイと放り捨てた。
「えっと、実はチョコを貰った時には付き合うつもりだったんすよ。だけど、あのコには面倒臭い狂暴な兄貴がいるからヤバイって後から聞かされて」
アランはレッドストンにビクつきながらも有りのままを話した。
「あ、そのヤバイって言ったの俺だ。俺の姉貴がタウンのキャストだったからレッドストンが妹に過保護でフツーじゃないことは訊いてたんで」
ケントがアランを庇うように口を挟む。
「それに、それよりも何よりも貰ったチョコが激マズだったんすよね。すぐに吐き出したけど毒殺レベルの味っすよ。あのチョコを作るコとはちょっと付き合うの無理っす」
アランはルルの手作りチョコの激マズな味がぶり返したかのようにウエッという顔をした。
「分かるわぁ」
「たしかに死ぬかと思ったぜ」
マダムとジョーはルルの激マズのコロッケの被害者なので誰よりもアランに共感する。
その時、
「……」
レッドストンがニヤリと片頬で笑った。
(――?)
メラリーはそのニヤリを見逃さなかった。
(なんか怪しい。あのニヤリは『してやったり』という笑みでは?)
メラリーは勘の鋭いコなのだ。
「そうだったんですか」
太田はレッドストンの怪しいニヤリを見ていないので、たんにルルが料理下手なおかげでアランと付き合わずに済んだのだと喜んだ。
それどころか、ルルの激マズのコロッケを命掛けで食べた自分を褒めてやりたいような誇らしい気分になっていた。
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