上 下
191 / 297
第9弾 お熱いのがお好き?

What is this?(どういうこと?)

しおりを挟む


「――というワケなので、どうかひとつ、クララちゃんとの関係を修復するために知恵を貸して下さい~」

 アランはショウのキャストみなに手を合わせてお願いした。

「またヒトから借りるのかよ?」

「人任せ~?」

「わたしが貸してあげたスーツに鼻血を付けたのよ。たとえ知恵だって貸したくないわねっ」

 ジョー、メラリー、ゴードンはけんもほろろに突っぱねる。

「そうだな。クララちゃんに嫌われたところをアランが反省して改めればいいんじゃないか?」

「馬鹿だから愛想を尽かされたんだろ?」

「馬鹿を直せよ。アラン」

 マーティ、ヘンリー、ハワードは大雑把な助言をする。

 そこへ、

「あの、前々から気になっていたんですが――」

 思案げに黙っていた太田がやにわに口を開いた。

「アランは高校を卒業する前のバレンタインにルルちゃんからチョコを貰ったんですよね?」

 以前、ルルから訊いた話をアラン本人に確認したかったのだ。

「――え?」

 アランは(何で2年も前のことを?)と不可解そうに太田を見やった。

「ルルちゃんも清純な乙女でアランの理想に当てはまると思うんですが、何故、ルルちゃんとは付き合わなかったんですか?おまけにタウンで再会してもルルちゃんのことを覚えてなかったそうじゃないですか?」

 太田はルルに代わってアランを責め立てる。

「――あ、いや、地元の高校の馬術部の中であんな飛び抜けて可愛いコのこと覚えてない訳ないじゃないっすか。あの時は忘れたフリしただけっすよ」

 アランはシレッと答えた。

「何だって忘れたフリを?当時、まだ高校1年だったルルちゃんはアランにチョコを渡して初めてのチューであろう唇を奪われたというのに」

 責め立てる太田を遮るように、

 バキッ!

 何かが割れる音がした。

 振り返るとレッドストンが思わず握り締めた箸が真っ二つに割れた音だった。

「……」

 レッドストンは蛇のような目でアランを睨み付けている。

「――ええ?唇を奪われた?俺に?」

 アランはまったく身に覚えがないらしい。

「ルルちゃんにチョコを貰って、『ありがとう』ってお礼のチューをしたんでしょうが?」

 太田が厳しく追及する。

「ま、まさか、唇じゃないっすよ。あっ、オデコに軽くチュッてしただけっすよ」

 アランはブンブンと首を振る。

「オ、オデコに?」

 太田はガクッと力が抜けた。 

 そういえば、太田が「チューをされたんですか?」と訊ねた時にルルは頷いただけだった。

 唇にとは一言も言ってなかったのだ。

「じゃあ、ルルちゃんの唇はまだ清らかなまま」

 太田はホッと胸を撫で下ろす。

「はあぁ、脅かすんじゃねぇぜ」

 レッドストンも安堵の吐息をついて割った箸をポイと放り捨てた。


「えっと、実はチョコを貰った時には付き合うつもりだったんすよ。だけど、あのコには面倒臭い狂暴な兄貴がいるからヤバイって後から聞かされて」

 アランはレッドストンにビクつきながらも有りのままを話した。

「あ、そのヤバイって言ったの俺だ。俺の姉貴がタウンのキャストだったからレッドストンが妹に過保護でフツーじゃないことは訊いてたんで」

 ケントがアランをかばうように口を挟む。

「それに、それよりも何よりも貰ったチョコが激マズだったんすよね。すぐに吐き出したけど毒殺レベルの味っすよ。あのチョコを作るコとはちょっと付き合うの無理っす」

 アランはルルの手作りチョコの激マズな味がぶり返したかのようにウエッという顔をした。

「分かるわぁ」

「たしかに死ぬかと思ったぜ」

 マダムとジョーはルルの激マズのコロッケの被害者なので誰よりもアランに共感する。

 その時、

「……」

 レッドストンがニヤリと片頬で笑った。

(――?)

 メラリーはそのニヤリを見逃さなかった。

(なんか怪しい。あのニヤリは『してやったり』という笑みでは?)

 メラリーは勘の鋭いコなのだ。


「そうだったんですか」

 太田はレッドストンの怪しいニヤリを見ていないので、たんにルルが料理下手なおかげでアランと付き合わずに済んだのだと喜んだ。

 それどころか、ルルの激マズのコロッケを命掛けで食べた自分を褒めてやりたいような誇らしい気分になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...