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第8弾 降っても晴れても
I regret(後悔する)
しおりを挟む「パール。大丈夫かっ?」
ダンはメラリーより馬のパールに水が掛かってないかを心配している。
「ふえっくしゅっ」
水はすべてメラリーの服に染み込んだのでパールは無事だ。
「メラリーちゃん、は、早くバックステージに戻って着替えたほうが」
太田がバタバタと焦って飛んできてメラリーの濡れた服をスポーツタオルでポンポンと拭いてやる。
「いや、濡れたままじゃ戻る途中が寒いだろ?騎兵隊の詰め所にある着替え、貸してやるから」
マーティに連れられてメラリーはすぐ側のフロンティア砦へ行った。
「ごめん。こんなのしかなかった」
マーティが兵舎に干してある洗濯物からロングジョンズを取ってメラリーに手渡した。
「――?」
メラリーは広げて見て(何だこりゃ?)という顔をする。
タウンのコスチューム担当のスタッフが西部開拓時代の考証に忠実に作った騎兵隊の下着のロングジョンズである。
長袖シャツと長パンツの上下が繋がったオールインワンでお尻と股の部分がスナップボタンで開くようになっている。
まるで赤ん坊のロンパースの成人男性用だ。
色は赤っぽい肌色でめちゃくちゃダサい。
マーティは優男な顔立ちだが184㎝あって肩幅もガッシリなのでロングジョンズはメラリーが着るとダボダボに大きかった。
「――あ、ありがと」
メラリーは情けない顔で礼を言った。
珍しく張り切っていたわりにメラリーの乗馬の練習はほんの10分ほどで終わった。
(なんだか、運に徹底的に見放されてる気がする…)
ここのところ何をやっても上手くいかない。
メラリーは太田の乗馬の特訓の邪魔をしないように1人でトボトボと地下通路を歩いてバックステージへ戻った。
た~べほ~うだ~い~♪
(曲は『焼肉食べ放題の歌』)
ケータイの着ウタが鳴る。
(誰だろ?)
メラリーは長い廊下を歩きながら二つ折りのケータイを開いた。
「なんだ。アイツ等か」
荒刃波高原のペンション『若草の切妻屋根の小さな家』に泊まっている伊集院、二階堂、西園寺からのメールだ。
3人は明日には東京へ帰るらしい。
添付された画像を観ると3人はフレンチカンカンのグラマー美女のお姉さん達とカラオケ、ボーリング、ゲーセン等々、温泉街の娯楽を満喫していたようだ。
「――ああっ?」
温水プールで遊んでいる画像まである。
地元で一番大きいホテルアラバハには宿泊客以外でも利用の出来る温水プールがあるのだ。
よく分からない女神の石像のようなオブジェから噴水が噴き出ているゴージャスな温水プールだ。
カンカンのお姉さん達は申し訳程度の生地しかない三角ビキニでさすがのナイスバディを惜しげもなく披露している。
3人は大自慢でグラマー美女との楽しい画像を見せびらかしているつもりだろう。
「――くぅ――」
メラリーは悔しいやら寂しいやらで泣きたい気分になった。
伊集院、二階堂、西園寺は家が金持ちという以外にはこれといった取り柄もない10人並みのルックスだ。
それでもセレブのお坊ちゃまが通うことで有名な名門私立大学というブランドでカンカンのお姉さん達にモテているのだ。
メラリーは附属校から進学せずに名門私立大学のブランドを手放したことで自分は同級生よりもランクダウンしてしまったのだと思った。
高3のあの頃は「大学に行くなんてフツーでつまらないし~」「ショウのガンマンになるほうがなんか格好良いし~」などと勘違いしてしまったばかりに道を誤ってしまったのか。
後悔の念がさざ波のように足元を行き来する。
引き返すなら今のうちかも知れない。
「……」
メラリーは眉間に皺を寄せて思案げな顔でキャスト控え室へ入った。
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