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第8弾 降っても晴れても

Macho Man again(マッチョマン再び)

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 同じ頃。

「じゃ、わたし、ケントと一緒に託児所のボランティアして、その後でダンスのレッスンだからぁ」

 アニタは晩ご飯にダイエット食品を食べただけで長い廊下を託児所へ早歩きしていった。

(2週間でウエスト7㎝減かぁ)

 クララがロビーの窓際の椅子に座ってケータイでダイエットメニューを検索していると、

「あ、クララ~」

「わたし達、これから晩ご飯なの~」

 スーザンとチェルシーがタウンからバックステージに戻ってきた。

 シューティングギャラリーとシアターのキャストの2人は今日は遅番で9時まで仕事なのだ。

「わたしも食べちゃお」

 クララは2人とおしゃべりしてから帰ろうと椅子を立った。


 3人とも本日のサービスメニューのビーフカレーにする。

 しかも大盛りにした。

「へえ、そりゃ肥えると思ったわよ。アニタってばクララの味噌バタークッキーも貰ったその日に1人でペロッと平らげてたもん」

「そうそう、わたし達はヘンリーとハワードにほとんど分けてあげたけど、アニタってばケントにクララのクッキーはあげないんだから」

 チェルシーとスーザンは「そら見たことか」という顔をする。

「あのクッキーを全部1人でっ?」

 クララはそれじゃホテルのビュッフェでの暴飲暴食を抜きにしても肥えるに決まっていると思った。

 市販のクッキーと違ってコスト度外視で本物のバターをたっぷりと使っているのでカロリーもかなり高い。

 しかし、上質なバターはクドさがなく後口がスッキリ爽やかなので思ったより何枚でも食べられてしまうのだ。

(だけど、1人で24枚も食べたなんて)

 クララはあんな高カロリーのクッキーをお菓子大好きのアニタにあげてしまったことに責任を感じた。

(そうだっ。アニタに低カロリーでヘルシーなお弁当を作ってあげよう)

 ここのところ2日も続けてお菓子を作って料理のやる気スイッチが入っていたクララは明日は早朝からお弁当作りだと張り切った。



 あくる日。

「んっしょっと」

 クララは早めの昼休憩で更衣室のロッカーから大きな紙袋を取り出した。

 アランの視線避けのスケッチブックもあるので荷物が多い。

「――あ、クララ~」

 更衣室を出るとタイミング良くアニタが長い廊下を早歩きしてきた。

「アニタっ?どしたの?その顔――」

 クララはギョッとのけぞった。

「昨日、食べたダイエット食品が合わなかったみたいでぇ、朝、起きたら、こんな顔にぃ」

 半泣き顔のアニタの頬っぺたは赤く腫れて吹き出物が左右に5ツ6ツずつ出来ている。

 メイクも出来なかったのでスッピンは丸顔のせいでアンパンマンのようだ。


 そこへ、

「あ~あ、ヒドイ顔~」

「プロテインが合わなくてブツブツが出るヒト、多いんだよねぇ」

 ロン毛にマッチョな若い男2人がやってきた。

 どちらもピタピタの黒いレオタードにスウェットパーカーを羽織って見るからにダンサーと分かる。

「もぉ、ヒドイ顔って」

「女のコに失礼だよ。マーク、ハリー」

 後ろからやってきたバミーとバーバラが気安げに2人の背中をペシッと叩く。

 マークとハリーはダンス大会の前にトムとフレディがダンスを習っていた男性ダンサーだ。

 マーク(幕張優まくはり すぐる)とハリー(幕張勝まくはり まさる)という2歳違いの兄弟である。

 バミーとバーバラが優勝したダンスレースでも半分以上の曲数はこの2人がパートナーを務めて踊っていたのだ。

「いや、かくいう俺等もサプリメントのプロテインは合わなくてさ」

「結局、毎日、茹で卵15個」

 マークとハリーが自分達のランチバッグの茹で卵を見せる。

「1人15個ずつっ?」

「そんなにっ?」

 アニタとクララは茹で卵30個に目を丸くした。

「15個くらいワケねぇけど?」

「この筋肉を維持するためにプロとして当然っしょ?」

 マークとハリーはやおらパーカーを脱ぎ捨て、マッチョマンポーズで胸をモリモリさせて筋肉を見せ付けた。

 2人はタウンではインディアンに扮して全裸にふんどし一丁のような露出度の高いコスチュームでワイルドに踊っているのだ。

「……」

 クララは2人のボディラインくっきりのピチピチのレオタード姿に困惑顔をした。

「あ、クララちゃん、目のやり場に困ってる?」

「ムチムチもモッコリも見慣れたら何でもないから」

 バミーとバーバラがあっけらかんと言う。

 ダンサー同士は慣れっこで男女の意識もせずにムチムチもモッコリも気にならないようだ。
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