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第7弾 明後日に向かって撃つな!
I want to eat sushi. (寿司が食べたい)
しおりを挟むそこへ、
「へえ~、ゴージャスなホテルって聞いてたけど、ホントにゴージャスじゃ~ん」
ジョーを先頭にショウのキャストがゾロゾロとロビーへ入ってきた。
イメージ維持に努めてウェスタン・ショウのコスチュームのままだ。
「ねっ、料理もきっとゴージャスだよねっ」
「わたし達、ダンス大会では何にも食べる暇なかったもんね。今日はしこたま食べてやるっ」
キャラクターのバミーとバーバラは顔バレしていないのでウェスタンの普段着で来ている。
「――あ、そーいや、バッキーは?」
ジョーがキャストの面子を見渡して太田がいないことに気付いてバミーとバーバラに訊ねた。
「家庭教師のバイトだって。――あっ、お寿司っ。イクラ~」
「うん。バッキー、自分の招待状もヘンリーかハワードの彼女にあげてたみたい。ウニ~」
バミーとバーバラは寿司カウンターに突進する。
さすがにゴージャスなホテルのビュッフェだけあってカウンターの中に寿司職人が何人もいて目の前で握ってくれるのだ。
「高いネタから攻めようぜ。ウニ、ウニ~」
「トロ、トロ~」
トムとフレディもバミーとバーバラを追い掛けて寿司カウンターに突進した。
「おい?メラリー、昨日、食べたいって言ってた寿司だぜ~?」
ジョーはメラリーに見返った。
「……」
メラリーはずっと空っぽな着ぐるみになっているので無言のまま歩いてくる。
「おい?いつまで不貞腐れてんだよ?ほら、スマイル、スマイル」
ジョーは両手でメラリーの頬っぺたを摘まんで口角を持ち上げる。
メラリー団扇とそっくりな作り笑顔が出来上がった。
ちなみに応援グッズのメラリー団扇に印刷された女装のメラリーの顔写真はタウンの公式サイトのウェスタン・ショウのキャスト紹介の画像から無断使用したものだった。
「よし。このスマイルでキープな」
「……」
メラリーは無言のまま固まった笑顔だ。
「まずは、真鯛、鮪の赤身、ウニ、2人前ずつ握って。メラリーも食えよ。――ほら、あ~ん」
ジョーは寿司職人に注文すると、両手に割り箸を持って自分も食べながらメラリーの口にも寿司を運んでやる。
二丁拳銃のガンマンなので両手が器用に使えるのだ。
「……(モグモグ)」
メラリーは臨機応変に寿司を食べる着ぐるみになって機械的に咀嚼している。
(――あっ?ジョーさん、またメラリーちゃんに構ってる)
クララは青天の間の出入り口から寿司カウンターの2人を眺めてブスッと口を尖らせた。
(えっと?みんなは――?)
キョロキョロと探すと、もうケント、ヘンリー、ハワードも来ていて、みなはイタリアンのビュッフェのほうにいた。
それぞれカップルで「骨付きチキンはぁ?」「ピッツァ美味しそう」「サラダもぉ」などと料理を取りながらイチャイチャしている
(な、なによ。わたしだけ除け者じゃないの)
アランのいるバーカウンターに視線を移すと、
爺さん連中が「よっ、騎兵隊のアランちゃんじゃないの」「わし等、カクテルなんか分かんないからさ」「テキトーに色々と作って飲ましてよ」などと言ってカウンターを陣取っている。
「……」
クララはしかめっ面した。
バーカウンターは爺さん連中に占領されているし、カップルと一緒にはいたくないし、かといって、他には親しいキャストもいない。
(いいわよ。1人で食べるから)
日頃、キャスト食堂でガンマンキャストのテーブルの後ろ側で盗み聞きしていたおかげで1人で食べることには慣れている。
とにかく寿司を食べにいく体でさりげなく寿司カウンターに向かった。
同じ年頃のバミーとバーバラが隣にいるので見た目には独りぼっちな感じはしないだろう。
いつものように盗み聞きするつもりだが、みなはひたすらに寿司を貪っていて会話もない。
「ウニと中トロと甘エビ下さ~い」
ガッツリ食べようと寿司職人に注文する。
すると、
「あら?1人?アランがバイトだなんて残念ねえ?」
マダムが近寄ってきて声を掛けた。
「え、ええ」
クララはホッと一安心した。
この機会にショウのキャストとお近づきになりたい。
友達のアニタもミーナもマダムとは親しいがクララはろくすっぽ口を利いたこともないのだ。
「あ、あの、わたし、スイーツ・ワゴンのクララと言います」
クララは改まってペコリと頭を下げる。
「ええ?今さら自己紹介?みんな、とっくにあなたのこと知ってるけど?」
マダムはちょっと呆れ笑いした。
「ねえ~?昨日、アランがショウのキャストみんなに『スイーツ・ワゴンのクララちゃんとお付き合いすることになりました~』って交際宣言したのよ~」
コスチューム担当のタマラも千鳥足で近寄ってきた。
「結婚前提の真剣交際ですって~。アランは早く結婚して、早くパパになりたいって~」
タマラは生ビールのジョッキを片手に早くもへべれけだ。
(――け、結婚前提っ?な、何それ?全然、知らないんだけどっ)
クララはまさかそんなに勝手に話が進んでいるとは思ってもみなかった。
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