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第7弾 明後日に向かって撃つな!

Buffet party(ビュッフェ・パーティー)

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「あっ、クララ、こっちよぉ」

 ホテルアラバハのロビーに入っていくと青天の間の前でアニタが待っていた。

「ショウのキャストじゃないのに、わたしまで来て良かったの?」

 クララは自分だけ場違いだったらイヤだなと気になった。

 アニタはショウのコスチューム管理だがクララはスイーツ・ワゴンでショウとはまるで関係ないのだ。

「大丈夫よぉ。チェルシーとスーザンだって来てるんだからぁ。はい、これ、クララの分」

 アニタに招待状を渡されてクララは受付を済ませると青天の間の群青色のフカフカのカーペットに足を踏み入れた。

「わ――っ」

 まずメラリー応援団のピンク色のハッピの大学生と華やかなフレンチカンカンの踊り子の集団が目に飛び込んできた。

 カンカンの踊り子は大学生と合コンのようなノリでキャアキャアと盛り上がっている。

 金持ちのボンボンを狙っているのか揃いも揃って肌を露出してボディラインを強調したセクシー系のファッションだ。

(な、なによ。ハデハデじゃない)

 クララはあんなグラマーだらけの美女集団の中では自分などかすんでしまうことを瞬時に察した。

 せめてヒラヒラのティアードワンピースを着てくれば良かったと悔やまれる。

「――あ、来た来た」

 チェルシーとスーザンがカンカンの踊り子の向こう側で伸び上がるようにして手を振っている。

「あ、そこにいたの」

 美女レベルの高い2人でも派手なカンカンの踊り子に混ざると目立たずに気付かなかった。

「あれ、みんな彼氏は?」

「ケントは託児所のボランティアが終わってから来るって、律儀なのよねぇ」

「ヘンリーとハワードは馬の世話が済んでから来るって」

「騎兵隊キャストと先住民キャストはバイトで来られないヒトがいるんで余った招待状くれたの。クララの招待状はアランの分だったのよ」

「――え?それじゃ、アランも来ないの?」

 クララは無念そうに青いビーズ刺繍のワンピースに視線を落とした。

「あ、クララってば、せっかく可愛い服で来たのにアランがいないと思ってガッカリなんでしょ?」

「顔に出るんだからぁクララは」

 そういうチェルシーとスーザンも今日はオシャレな格好をしている。

 まだ騎兵隊キャストのヘンリーとハワードとカップルになって3日目なので普段着にも気合いが入っているようだ。

「クララ、ほら、あそこぉ」

「――え?」

 アニタが振り返って指差すほうへクララも顔を向けるとバーカウンターがあった。

「あ、アラン?」

 アランがバーテンダー姿でカクテルを作っているではないか。

 いつにも増してイケメン光線を放っている。

「なんだぁ。ここでバイトしてたのね」

 そういえば、アランは地元で一番大きなホテルでバイトしていると小耳に挟んだような気がする。

「忙しい時だけ忙しい所に呼ばれるアバウトなバイトなんだ」

 アランがクララにニッコリする。

(や~ん、素敵~。何でも似合うんだから~)

 クララはアランのバーテンダー姿にうっとり見惚れてしまった。

「わたし、ブラッディマリー」

「ギムレット」

「マティーニね」

 アニタ、チェルシー、スーザンはタダ酒を飲みまくる気満々で注文する。

「クララちゃんはアルコールはあんまり飲まないほうがいいよ」

「う、うん。1杯だけ。わたしもブラッディマリー」

 クララはポッと頬を赤らめて恥じらいつつ注文した。

 すると、

「クララちゃん、いつもコスチュームのドレスだと見えなかったけどスラッと細くて綺麗な足だね」

 アランがコソッと小声でクララに囁いた。

「え?そ、そんなぁ」

(や~ん、男のヒトに褒められるなんて初めて~)

 クララはカッカと頬が火照ってしまった。

「クララ、顔、真っ赤よぉ」

 アニタが冷やかす。

「やだっ。違うわよ。暖房が強くて暑いのっ」

 クララは焦って誤魔化してカクテルをグビッとあおる。

「ぴひゃっ?」

 グラスの上の輪切りレモンが鼻の頭に乗っかってきて変な声が出てしまった。

(やだあ。みっともないっ)

 濡れた鼻をハンカチで拭きながらキョロキョロすると、こちらを振り返って見ているアランと目が合った。

(は、恥ずかしいっ)

 クララは慌ててアランに背中を向ける。

「あ――っ」

 その弾みで手に持ったカクテルが波打ってワンピースにこぼれてしまった。

 白いワンピースにわざわざ目立つブラッディマリーの赤いシミが。

「ちょ、ちょっと拭いてくるっ」

 クララは焦って青天の間を出てロビーのレストルームへ走った。

 必死に濡らしたタオルハンカチで叩いてみたが、うっすらとシミが残ってしまった。

(あ~、クリーニングで落ちるかなぁ)

 うなだれてレストルームを出るとロビーのソファーにぐったりと座り込んだ。

「はあ~」

 クララはしまった、しまったの連続で疲れ果ててしまった。
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