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第6弾 日は沈み 日は昇る
be in the spotlight(注目の的になる)
しおりを挟むラストの演目のクリスマスソングの演奏。
チビッコなので楽団の演奏に合わせて打楽器を鳴らすだけである。
シャンシャン♪
ポンポロポン♪
ババンババン♪
チリーン♪
ウルフはタイミングを間違えずにトライアングルを鳴らし続け、無事に演奏が終わった。
クリスマス会の終了後はキャラクタートリオとの撮影会で大盛り上がりだ。
舞台ではチビッコとその家族が大はしゃぎでキャラクタートリオと一緒に写真を撮っている。
「当たった~♪2番~♪」
「俺も当たったあ♪しかも1番~♪」
キャストの撮影会はくじ引きによる抽選でクララとケントは見事に当たりの整理券をゲットした。
(――あ、さっきの頭突きでリボンが曲がって、髪も乱れてるみたい)
クララは自分の順番までに身だしなみを整えておこうと女子更衣室へ向かった。
出入り口は女子トイレだが、奥へ進むとロッカールーム、シャワールームまで完備された奥行きのある室内だ。
鏡の前に座ってリボンを結び直し、リップカラーを塗り直していると、
「ほら、あのコよ。アランの彼女」
「え~?どのコ?どのコ?」
タウンのキャストの女のコ達のヒソヒソ声が聞こえてきた。
(――え?やだ。みんな知ってるんじゃない)
クララ本人も知らないうちにアランとクララがカップルになった噂はたちまちタウン中に広まっているようだ。
「まあまあ可愛いほうじゃない?」
「そうお?このタウンではフツーよね?」
「そりゃフレンチカンカンのグラマー美女と比べたらショボイわよ」
「アランってああいう田舎臭い清純タイプが好みだったんだ」
女のコ達は言いたい放題である。
(――わ、わたし、やっかまれてる?)
クララはチラッと女のコ達に目を向けた。
美女が多いと評判のエントランスの案内嬢の緑色のコスチュームのドレスを着た女のコ4人だ。
「……」
女のコ達のジロジロと遠慮のない視線がクララの全身に降り注ぐ。
これは嫉妬と羨望の眼差しというものか。
(うふふ)
とたんにクララは優越感で気分が上がった。
今日はクリスマス会のために買ったデニムのオールインワンでオシャレに抜かりはない。
そもそもタウンの看板スタァのジョー狙いのクララにとって女のコ達のやっかみは望むところだ。
(けど、これから、毎日、アランの彼女として注目されるってこと?)
それはクララにとって甚だ不本意である。
(どうしたらアランとのカップル誕生をなかったことに出来るだろう?)
交際をオッケーしてkissまでしたけど酔っ払っていて全然、覚えていないなどと本当のことは口が裂けても言いたくない。
(そうよ。そしたら恋人でも何でもないヒトと初kissしたことになっちゃうじゃない)
そんな淫らなことはクララとしてはあり得ない。
しかし、タウンの多くのキャストにkiss現場を目撃されているのだ。
(――む~ん)
クララは鏡の前で冷静に考えを巡らせた。
(取り敢えず、当分はアランとカップルのフリをして、清らかな交際のままで早々と別れたらいいんじゃない?)
(とにかくアランは女のコにモテモテなんだし、清らかな交際になんか嫌気が差して、すぐに浮気するに決まってるわよね?)
(そしたらアランに裏切られたって別れを告げる正当な理由が出来るじゃない?)
そうクララは考えた。
アランには指一本触れさせなければいいのだ。
モテモテのアランのことだから明日にも他の女のコに心変わりしてくれるに違いない。
(うんっ。思ったより簡単に解決じゃないの)
クララはたちまち気が楽になってルンルンとして頬にチークカラーをポンポンと叩いた。
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