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第6弾 日は沈み 日は昇る
No way!(嘘でしょ!)
しおりを挟む「――ねえ?嘘よね?みんなでわたしのこと騙してるんでしょ?」
ミーナは疑いの眼差しでケント、アラン、クララの顔を順に見やった。
「……」
クララは依然として思考回路がストップしたまま人形のように固まって無表情だ。
「クララってば、ポーカーフェイスのつもり?バレバレよ」
ミーナはみながグルになって自分に仕掛けたドッキリだと決め付ける。
それくらいミーナにはクララがアランと即席カップルになって人前で熱烈なKissをするなど信じがたいことだった。
「え~、そこまで疑うかなあ」
ケントは自分の話を嘘だと言われて心外そうだ。
「だって、カップ麺じゃあるまいし、3分でカップル?クララはそんなお手軽なコじゃないわよ。正真正銘の純情可憐な乙女なのよ」
伊達に花の女子大生の頃から絶滅危惧種の天然記念物乙女と呼ばれてきたクララではないとミーナは主張した。
「いや、ホントに嘘じゃないって。ほら、昨日、撮ったヤツ――」
ケントは自分のケータイをポチポチといじって動画をミーナに向けて見せた。
「――え?お前、隠し撮り?マジかよ?」
アランが素早くケータイを奪い取る。
「おお?すごい、良く撮れてるじゃんっ」
一気にアラン目が輝いた。
動画のアランとクララは騎兵隊の正装のコスチュームと白いフリフリのドレスという効果もあって、まるで映画の一場面のように美しいkissシーンに映っている。
元々、ものすごいハンサムのアランと無難に可愛いクララなのでビジュアルは申し分ないのだ。
「――や、やだ。ホントにしてるのね。それも、ずいぶん長くない?」
ミーナはまるでエロ本でも見てしまったくらいに気まずい顔になったが、
「そ、それより、これ、急ぐのよ」
すぐに平静を装って折り紙のクサリ作りを再開した。
「ケント、この動画、俺のケータイに送ってよ」
アランが最初からもう一度、動画を見ようとする。
「あ、ちょっと、勝手にいじるなよ」
ケントは慌ててケータイをアランから取り返す。
実は、昨夜の星空の下のテラスでケントとアニタは自分達のkissシーンを動画に撮っていたのだ。
しかし、途中でクララがテラスの扉に固定してあったケータイの前を横切ったので台無しだった。
「は~い、みんな集まって~」
リーダーの保母がチビッコに集合を掛けた。
天使の衣装を着けたチビッコが整列して、これからクリスマス会の会場へ向かうのだ。
「――あ、大変っ。もうっ?」
ミーナは焦ってバタバタする。
「ほら、こっちと繋げて」
アランの作った折り紙のクサリはかなり長く出来ていた。
「ああ、この長さなら充分ね」
ミーナはホッと安堵の息を吐く。
クリスマス会の様子はタウンの広報部のカメラマンが撮って、来月号のいなご新聞に載るので飾り付けを手抜きする訳にはいかない。
ミーナ、ケント、アランは折り紙のクサリをガサガサと丸めて抱えて、会場へと急いだ。
「……」
思考回路がストップしたままのクララは託児所に置いてきぼりだ。
会場は昨日のダンス大会と同じ多目的ホールである。
すでに託児所のチビッコの父母のキャストとその家族が集まっていた。
チビッコが50人いるので身内だけでも観客は200人以上に登り、多目的ホールは大盛況だ。
当然のようにウルフの晴れ姿を見るためにロバートとタイガー、
おまけにマダム、ジョー、メラリー、トム、フレディのガンマンキャストとゴードンにタマラまで見に来ていた。
舞台には金モールの房の付いた臙脂色のビロードの幕が閉じている。
「これ、お願い」
ミーナは背の高いアランとケントに折り紙のクサリを舞台の壁に取り付ける作業を頼んだ。
「両側を留めてから、真ん中を留めて、左右の真ん中を留めて」
テキパキと半円形に垂らして画ビョウで留めていく。
「――おお~、カンペキ」
赤、白、緑のクリスマスカラーの折り紙のクサリに壁に貼った大きな金銀のキラキラ星でいかにも託児所のクリスマス会らしい飾り付けが出来上がった。
「炙りカルビ、炙りカルビ、炙りカルビ――」
上手の舞台袖では赤いサンタスーツを着た太ったオッサンの司会者が早口言葉で滑舌の調子を整えている。
よく見たら昨日のロデオ大会とダンス大会と同じ司会者だ。
反対側の下手ではキャラクタートリオのバッキー、バミー、バーバラがスタンバイしている。
チビッコのクリスマスソングの演奏はラストの演目なので、その前にキャラクタートリオとのダンスにゲーム大会があるのだ。
ジリジリジリ――。
開演5分前のベルが鳴った。
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