112 / 297
第6弾 日は沈み 日は昇る
It is Christmas at last(ついにクリスマス)
しおりを挟むダンス大会から一夜明け、
やっとクリスマス本番の25日。
「こんにちは~」
クララはいつもなら「おはようございます~」と挨拶するセキュリティゲートを午後3時過ぎに通り抜けた。
(ふ~ん、仕事が休みの日にバックステージに来るのものんびりして良いものね~)
ゲートで保安官キャストに提示したIDカードをポーチに仕舞って大きな紙袋をよっこらせと抱え直す。
今日、クララは休みなのだが友達のミーナの娘カレンの託児所のクリスマス会の演奏を聴くために来たのだ。
ちなみにタウンのキャストは週休2日制でクララは木金が休みである。
土日に休みを取るのは子持ちや恋人持ちのキャストが優先されるので独り身のキャストは平日に回されるのだ。
バックステージのロビーに入ると、
壁際のソファーにスーザンとチェルシーの姿があった。
2人はちょうど昨日今日の水木が休みなのだ。
タウンのキャストはバイトでも準社員という扱いで勤続1年を過ぎると健康保険にも入れるし、有休まで取ることが出来る。
「――あれ、2人とも、帰らなかったの?」
クララはくつろいだジャージの上下ですっぴんの2人を見やった。
みなダンス大会の会場で朝まで爆睡だったのだが、自宅がタウンのすぐ近所のクララは朝早くに帰宅したのだ。
「うん~。もう夕べのダンスで身体が鉛みたいに重たくてバタンキュー~」
「キャスト食堂で朝定食、食べてから大浴場の温泉にず~っと浸かってたの~」
スーザンとチェルシーはダンスで疲れ果てて家に帰る気力もなかったらしい。
「――あ、クララ~」
アニタは今日も変わらずコスチューム管理の仕事をしていてオヤツ休憩にやってきた。
「ねぇねぇ、クララ。聞いた?スーザンとチェルシーってば騎兵隊キャストと付き合うことにしたんだって。ビックリよぉ」
アニタが呆れたように報告する。
「えっ?ホントに?」
(じゃ、じゃ、2人とも、ジョーさん狙いはやめたってこと?)
クララは驚いた顔をしながらも内心で嬉々とした。
「そういえば、夕べはずっと騎兵隊キャストの2人と踊ってたものね~」
クララは2人の向かい側のソファーに座って、大きな紙袋を脇に置いた。
「――で?どっちがどっちとカップルになったの?」
騎兵隊キャストのヘンリーとハワードの区別さえクララはよく分からないのだが、一応、訊ねてみる。
「わたしがヘンリー、チェルシーがハワードよ」
「夕べは騎兵隊、先住民、6人くらいと踊ったんだけど、なんかハワードが一番しっくりしたのよね~」
「うんうん。ダンスすると分かるわよね。爽やかなイケメンでも何かこのヒトと身体を密着するのイヤだなぁっていうのあるわよね。わたしもヘンリーだと一番しっくりしたのよ」
「そう、しっくり。まさに肌が合うっての?」
「ね?ダンスって彼氏を選ぶにはうってつけよね」
スーザンとチェルシーはお互いに共感し合っている。
「ふぅん、そうなんだぁ」
クララはそもそもダンスだろうが好きでもない男と手を取り合って身体を密着させるなどあり得ないのだが、「なるほど、なるほど」と納得顔して頷いた。
そこへ、
「あ~、キャスト食堂でオヤツ~♪楽しみだね~?」
「ね~?何、食べようかな~♪」
バミーとバーバラが声を弾ませてルンルンとスキップ加減でロビーへ入ってきた。
「あ、あの2人、ダンスレースで優勝したコ達よ。普段どおりにショウとパレードに出たのね」
「ピンピンしてるじゃない?どういう体力なの?」
スーザンとチェルシーは自分達のソファーの脇を足取り軽く横切っていく2人を目で追って唖然とした。
昨夜、バミーとバーバラはマッチョの男性ダンサーをも押し退けて2人してダンスレースの優勝を勝ち取ったのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる