PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第5弾 踊り明かそう

Billy of the cowboy(カウボーイのビリー)

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 あくる日。

 キャスト控え室。

 ガンマンキャストはショウの身支度をして楽屋入りの時間までダラダラしていた。

「へえ、ホントにロデオ大会、エントリーしちゃったんすか?」

 メラリーはやれやれという顔でコスチュームのドレス姿で長椅子にふんぞり返って足を投げ出し、漫画雑誌を開いた。

「おうっ。ぶっつけ本番の一発勝負でも俺は勝つっ」

 ジョーはグッと握り拳を掲げる。

「昨日、ヘンリーとハワードに頼んで、ついでに俺達の分も申し込みしてきて貰ったんですよ」

 太田はバッキーのボディに入る前のTシャツと短パン姿で頭に巻いたタオルを気合いを込めてキュッと結んだ。

「ま、今回の優勝は貰ったなっ」

 ジョーは大口を叩いてみずからを奮い起たせているのだ。

「そーいや、ロデオ大会って優勝すると賞金とか何か出るんすか?」

 メラリーはそれが一番重要だと思った。

「え?何か出るんだっけ?」

 ジョーが太田を見やると、

「さあ?」

 太田は首を傾げてから廊下へ出て、壁のロデオ大会のポスターを確認した。

「ああっ、優勝賞品はウェスタン牧場直営ステーキハウスのお食事券10万円分ですよっ」

 予想を上回る豪華賞品に太田は興奮して叫ぶ。

 ステーキハウスのお食事券10万円分!!

「――!」

 瞬時にメラリーの目の色が変わった。

 バサッ。

 漫画雑誌を放り投げ、物も言わずに廊下へ駆け出していく。

「エントリーしに行ったのか?」

「だな」

 トムとフレディは戸口から顔を出して、弾丸のように廊下を突き抜けていくメラリーの速さに面食らった。


「はぁはぁ」

 メラリーはタウンに隣接するウェスタン牧場のバックステージの建物まで走ってきた。

「――あっ?コスチュームのドレスのまま来ちゃった。ま、いっか。バックステージだし」

 ハニーブロンドの巻き毛のウィッグにピンクのドレス姿で廊下をウロウロとする。

「――っ?」

 廊下の向こうから歩いてきたカウボーイ姿のイケメンがメラリーを見るなりハッとして足を止めた。

 噂のカウボーイ・ビリー(美里日明《みさと あきら》)だ。

「あ、すみませ~ん。ロデオ大会のエントリーの受け付けはどこですか?」

 メラリーはビリーの前方を歩いていたカウガール2人に訊ねた。

 2人はウェスタン牧場のアイドル、カウガールのモーリン(森莉奈もり りな)とモーレン(森玲奈もり れな)。

「あ、ああ、そこの事務室よ」

 モーリンは自分の10メートルほど後方の右側の戸口を指差す。

「……」

 ビリーは廊下の左側の観葉植物の陰からメラリーをチラチラと盗み見ている。

「ありがとう」

 メラリーは早足で観葉植物の前を横切って事務室へ入っていった。


「い、今のコ。タウンのキャスト?何の用?」

 ビリーはぎこちない片言でカウガール2人に訊ねる。

 よほどのシャイらしく2人に目も合わせない。

「ああ、ビリー。ロデオ大会のエントリーだって」

 モーリンとモーレンが揃って答えた。

「どえ?女のゴがロデオにエンドリーっ?」

 ビックリ顔になるビリー。

「……?」
「……?」

 カウガール2人は怪訝そうな顔でそのまま廊下を歩いていく。

「ねえ?今、ビリー、女のコって言ってた?」

 モーリンに訊ねるモーレン。

「うん。言ってた。あのコ、タウンのメラリーちゃんって女装のガンマンキャストよね?」

「そうよね?男のコよね?やっだ。ビリーってば」

「どうせ、よく顔見てなかったんでしょ?今だって、わたし達と目も合わせやしない」

 すると、

「あ、あどさ――っ」

 ビリーがバタバタと2人を追って走ってきた。

「あ、あどさ、い、いばのゴ。目ぇバッジリしでながっだが?」

 焦り気味に話しているせいかヒドイ訛り丸出しである。

「え?うん。目?パッチリして大きかったわね?」

 モーリンを見るモーレン。

「うん」

 モーレンに頷くモーリン。

「そ、そっがぁ」

 ビリーは嬉しそうに頬を赤らめて弾むような足取りで先を歩いていく。

「あ~あ、黙ってればクールなイケメンなのに、あのヒドイ訛り」

「仕方ないわよ。ビリーって、このド田舎よりさらにずうっっっと奥地のジジババしかいない辺境の農場の三男坊だもん」

「いくら女のコに免疫ゼロでも男のコと区別も付かないって相当だわね」

「ホントよね」

 モーリンとモーレンは憐憫の眼差しでビリーの後ろ姿を見送った。


「じゃ、よろしくお願いします~」

 メラリーがロデオ大会の申し込みを済ませて事務室から出てくる。

「あ、さっきはどうも~」

 通り過ぎながらカウガール2人にペコリとしてメラリーは大急ぎでタウンへ戻っていった。

「ま、たしかに可愛いわね」

「うん。わたし等、負けてるね」

 モーリンとモーレンはお互いの瓜二つの顔を見て頷き合った。
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