100 / 297
第5弾 踊り明かそう
Lovely Dress(素敵なドレス)
しおりを挟む一方、
「うわぁ」
「いっぱいあるのねぇ」
クララとミーナは広い店内の壁二面にぎっしりと並んだドレスに歓声を上げた。
2人はタウンのメインストリートにある貸衣装屋へ来ていた。
西部開拓時代の考証で作られたクラシカルな衣装がところ狭しと溢れかえっている。
タウンには古めかしい教会もあり、ゲストは手ぶらで来て新郎新婦も招待客もこの貸衣装屋で衣装を借りて結婚式を上げるのが人気だった。
衣装もそれ相応の生地できちんと仕立てられた本格的なものだ。
「あまり派手な色や胸元が開いたドレスだとパパに怒られちゃうしなぁ」
ミーナは清楚な顔立ちに似合わずボインだが、父親ほどの年齢の夫のロッキーがやかましいのでいつも胸の目立たない服装をしていた。
「カレンが濃いピンク色のドレスだから、わたしは薄いピンク色で母娘コーディネートしようかしら?」
「うん、いいわね。ミーナは薄いピンク色、似合うわよ」
クララはとにかくミーナが白いドレス以外なら何でもいいのでピンク色を強く勧めた。
そこへ、
「あ~、クララ、ミーナ」
アニタが貸衣装屋へ入ってきた。
「アニタもダンス大会のドレス?」
「ケントと出るの?」
ミーナとクララが同時に訊ねる。
「そぉ。ケントは楽団だからダンス大会でも演奏しなきゃならないんだけどぉ、長丁場だから1時間で休憩が取れるらしいのぉ」
ダンス大会は18時から深夜0時まで6時間たっぷりと行われる。
「アニタはドレス、何色にするの?」
クララは気にして訊ねて、内心で(白いドレスじゃありませんように)と祈る。
「わたしはケントの楽団のコスチュームが白地に紫色のラインだからぁ、それに合わせてライラック色のドレスにしたいのよぉ」
アニタはキョロキョロして紫系のドレスが並ぶコーナーへ進む。
「ああ、アニタはライラック色、似合うわね」
クララはホッとして白いドレスの並ぶコーナーの前を陣取った。
「白でもシルクの光沢のあるパールホワイトがクラシカルで素敵ねぇ」
ヒラヒラの白いドレスの多さに目移りする。
また、そこへ、
「あ、クララ、ミーナ、アニタも~」
スーザンとチェルシーが貸衣装屋へ入ってきた。
クララにとっては2人はジョーを狙う恋敵だ。
「2人は何色のドレスにするの?」
クララがまた気にして訊ねると、
スーザンは「大人っぽくクールにミントブルー」
チェルシーは「爽やかにレモンイエローよ」
2人とも、すでに下見してドレスの目星を付けているらしい。
(ミーナはピンク、アニタはライラック、スーザンはミントブルー、チェルシーはレモンイエローかぁ)
クララはパールホワイトで、パーティーで5人が一緒にいてもドレスの色がかぶらずに良い感じだと思った。
しかし、この5人の色の並びはどこかで見た覚えがあるような?
ちょっと気になったが、
「――あっ」
そんな懸念も吹き消すかのように一目で「これ」と思ったヒラヒラの白いドレスが目に飛び込んできた。
パフスリーブでスカート部分のフリルが段々に重なったラブリーなデザインだ。
ラックから取って鏡の前で身体に当ててみる。
(――す、素敵――)
鏡に映る姿はまさにクララのイメージどおりだった。
「わたし、このドレスにするっ」
クララは試着する前に何気なくレンタル料金の札を見た。
(――?)と二度見する。
「レ、レンタルで5万円――っ?」
1日借りるだけなのに高い。
ドレスに合わせたヘッドドレス(髪飾り)と布製の靴も借りるつもりなのでトータル5万円を超えてしまう。
「白いドレスは汚れやすいので、どうしてもお高くなるのよねぇ」
貸衣装屋の年配の女性キャストはヘッドドレスと靴のレンタル料金はサービスしてくれると言った。
「あぁ、薄いピンク色のドレスも高いわ~」
「うわぁ、ライラック色のドレスも高いわよぉ」
ミーナもアニタもレンタル料金に悲鳴を上げている。
「けど、ダンス大会は不定期開催で次回は何年後かも分からないんだものね?」
「そうよねぇ?次回はわたしはカンカンの踊り子になっていたらショウのコスチュームのドレスでの参加なんだしぃ」
「キャスト割引で10%OFFになるし、この際、清水の舞台から飛び下りちゃうつもりでっ」
みな、ここはポーンと大奮発した。
このようにイベントに乗じてキャストからも金をふんだくるガッチリした商魂でタウンは成り立っているのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

富羅鳥城の陰謀
薔薇美
歴史・時代
時は江戸中期。若き富羅鳥藩主が何者かに暗殺され富羅鳥城から盗み出された秘宝『金鳥』『銀鳥』。
『銀鳥』は年寄りの銀煙、そして、対の『金鳥』は若返りの金煙が吹き上がる玉手箱であった。
そう、かの浦島太郎が竜宮城から持ち帰った玉手箱と同じ類いのものである。
誰しもが乞い願う若返りの秘宝『金鳥』を巡る人々の悲喜こもごも。忍びの『金鳥』争奪戦。
『くノ一』サギと忍びの猫にゃん影がお江戸日本橋を飛び廻る!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる