PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第5弾 踊り明かそう

Lovely Dress(素敵なドレス)

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 一方、

「うわぁ」

「いっぱいあるのねぇ」

 クララとミーナは広い店内の壁二面にぎっしりと並んだドレスに歓声を上げた。

 2人はタウンのメインストリートにある貸衣装屋へ来ていた。

 西部開拓時代の考証で作られたクラシカルな衣装がところ狭しと溢れかえっている。

 タウンには古めかしい教会もあり、ゲストは手ぶらで来て新郎新婦も招待客もこの貸衣装屋で衣装を借りて結婚式を上げるのが人気だった。

 衣装もそれ相応の生地できちんと仕立てられた本格的なものだ。


「あまり派手な色や胸元が開いたドレスだとパパに怒られちゃうしなぁ」

 ミーナは清楚な顔立ちに似合わずボインだが、父親ほどの年齢の夫のロッキーがやかましいのでいつも胸の目立たない服装をしていた。

「カレンが濃いピンク色のドレスだから、わたしは薄いピンク色で母娘コーディネートしようかしら?」

「うん、いいわね。ミーナは薄いピンク色、似合うわよ」

 クララはとにかくミーナが白いドレス以外なら何でもいいのでピンク色を強く勧めた。


 そこへ、

「あ~、クララ、ミーナ」

 アニタが貸衣装屋へ入ってきた。

「アニタもダンス大会のドレス?」
「ケントと出るの?」

 ミーナとクララが同時に訊ねる。

「そぉ。ケントは楽団だからダンス大会でも演奏しなきゃならないんだけどぉ、長丁場だから1時間で休憩が取れるらしいのぉ」

 ダンス大会は18時から深夜0時まで6時間たっぷりと行われる。

「アニタはドレス、何色にするの?」

 クララは気にして訊ねて、内心で(白いドレスじゃありませんように)と祈る。

「わたしはケントの楽団のコスチュームが白地に紫色のラインだからぁ、それに合わせてライラック色のドレスにしたいのよぉ」

 アニタはキョロキョロして紫系のドレスが並ぶコーナーへ進む。

「ああ、アニタはライラック色、似合うわね」

 クララはホッとして白いドレスの並ぶコーナーの前を陣取った。

「白でもシルクの光沢のあるパールホワイトがクラシカルで素敵ねぇ」

 ヒラヒラの白いドレスの多さに目移りする。


 また、そこへ、

「あ、クララ、ミーナ、アニタも~」

 スーザンとチェルシーが貸衣装屋へ入ってきた。

 クララにとっては2人はジョーを狙う恋敵だ。

「2人は何色のドレスにするの?」

 クララがまた気にして訊ねると、

 スーザンは「大人っぽくクールにミントブルー」

 チェルシーは「爽やかにレモンイエローよ」

 2人とも、すでに下見してドレスの目星を付けているらしい。

(ミーナはピンク、アニタはライラック、スーザンはミントブルー、チェルシーはレモンイエローかぁ)

 クララはパールホワイトで、パーティーで5人が一緒にいてもドレスの色がかぶらずに良い感じだと思った。

 しかし、この5人の色の並びはどこかで見た覚えがあるような?

 ちょっと気になったが、

「――あっ」

 そんな懸念も吹き消すかのように一目で「これ」と思ったヒラヒラの白いドレスが目に飛び込んできた。

 パフスリーブでスカート部分のフリルが段々に重なったラブリーなデザインだ。

 ラックから取って鏡の前で身体に当ててみる。

(――す、素敵――)

 鏡に映る姿はまさにクララのイメージどおりだった。


「わたし、このドレスにするっ」

 クララは試着する前に何気なくレンタル料金の札を見た。

(――?)と二度見する。

「レ、レンタルで5万円――っ?」

 1日借りるだけなのに高い。

 ドレスに合わせたヘッドドレス(髪飾り)と布製の靴も借りるつもりなのでトータル5万円を超えてしまう。

「白いドレスは汚れやすいので、どうしてもお高くなるのよねぇ」

 貸衣装屋の年配の女性キャストはヘッドドレスと靴のレンタル料金はサービスしてくれると言った。

「あぁ、薄いピンク色のドレスも高いわ~」

「うわぁ、ライラック色のドレスも高いわよぉ」

 ミーナもアニタもレンタル料金に悲鳴を上げている。

「けど、ダンス大会は不定期開催で次回は何年後かも分からないんだものね?」

「そうよねぇ?次回はわたしはカンカンの踊り子になっていたらショウのコスチュームのドレスでの参加なんだしぃ」

「キャスト割引で10%OFFになるし、この際、清水きよみずの舞台から飛び下りちゃうつもりでっ」

 みな、ここはポーンと大奮発した。

 このようにイベントに乗じてキャストからも金をふんだくるガッチリした商魂でタウンは成り立っているのだ。
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