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第5弾 踊り明かそう
Oh My Baby(オーマイベイビー)
しおりを挟む「メ~ラ~リー~」
レッドストンが先住民キャストのテーブルからやってきた。
「――?」
メラリーは何事かと警戒する。
レッドストンから話し掛けられるのは初めてだ。
「俺の妹のルル、ま、さ、か、忘れちゃいねえよなー?ダンス大会、当然、ルルを誘うんだよなー?」
蛇のような目でメラリーを睨み、脅し口調で迫るレッドストン。
「え、え?な、何で?ルルちゃん誘って一緒にダンスしてもいいんだ?」
メラリーはどういう風の吹き回しかと目を丸くする。
「よかねーよ。当然、俺はメラリーとなんざ踊っちゃならねえってルルを止めるのさ。だが、はなっから誘われねえんじゃルルの乙女心が傷付くだろーが?」
「――へ?つまり、ダンスは断るけどダンス大会には誘えってこと?」
「お~、察しがいいじゃねーか」
レッドストンはニヤリと片頬で笑う。
「……」
メラリーは思いっ切り顔をしかめた。
(そんな馬鹿馬鹿しい役回りはゴメンだし~、こんな面倒臭い兄妹とは関わりたくないし~)
なんとか上手く穏便に断る方法はないものかと考える。
ところが、
ピッ、
「ああ、ルル~?喜べ。メラリーがお前とダンス大会に行きたいってよ。昨日、言ってたヒラヒラの白いドレス、買ってやるぞ」
レッドストンはメラリーの返事も訊かずに早々とケータイでルルに報告した。
プチ。
「――あ、そうそう、ジョー。この間はルルがメラリーの部屋に入るの阻止してくれて、サンキューな」
レッドストンは去り際にジョーに礼を言ってキャスト食堂を出ていった。
「悪く思うなよ。メラリー」
「レッドストンはルルちゃんのドレス姿が見たいだけなんだよ」
「妹思いの高じた奴だからよ」
先住民キャストのブルマン、グリリバ、ブラッツがメラリーに同情して慰める。
「――あああ――」
メラリーは頭を抱えて嘆息して、
「――ああ――あっ?」
やにわにハッと気が付いた。
あの翌日、ルルは「帰ってからお兄ちゃんに叱られちゃった」と言っていた。
ルルが兄に叱られると分かっていることをわざわざ自分から話すはずがない。
「もしかして、ジョーさんが告げ口?ルルちゃんが家に帰り着く前にレッドストンにメールかなんかで?」
メラリーは疑いの眼差しでジョーを見やる。
「えへ、まーな」
ジョーは悪びれもせずケロッと認めた。
「さすがジョーさん、抜かりなしですね。年頃のルルちゃんの軽はずみな行動を厳重注意するよう兄のレッドストンに促すのは仲間として当然のことですっ」
太田はジョーの告げ口を称賛する。
「まあ、ルルちゃんとは付き合う気ないから邪魔してくれていいんだけどさ」
メラリーはそう言いながらも不服げに口を尖らせた。
「ああ、ルルちゃん、ヒラヒラの白いドレスかぁ。まさしく天使ですね。楽しみだなぁ」
太田はルルのドレス姿を見たさに自分もダンス大会に出る気になっていた。
(ルルちゃん、ヒラヒラの白いドレス?)
クララは自分もヒラヒラの白いドレスをイメージしていたので、なんだか悔しい。
ルルほどの可愛いコと同じようなドレスでは自分が見劣りしてしまうではないか。
クララは当たり障りなく無難に可愛いという一番、印象に残らないタイプだが、ルルはビックリするほど可愛いという人目を引くタイプなのだ。
(ん~、でも、やっぱりヒラヒラの白いドレスが着たいし)
クララが悶々としていると、
「あっ、もう託児所に戻らなきゃ」
ミーナが壁の時計を見て焦って言った。
「あ、ホントだ」
クララも時計を見て慌てて席を立つ。
「うちのカレンまで一緒に有難うございました~」
ミーナがロバート達のテーブルにカレンとウルフを迎えにいく。
「カレンちゃんが一緒のほうがウルフも喜ぶし、毎日でも大歓迎だよ」
ロバートはニッコリする。
「ママ~。これ、ウルフくんがあてたの、カレンにくれたの」
カレンがバミーとバーバラの指人形を見せる。
「あら、スゴイ。これ、シューティング・ギャラリーの射的の景品でしょう?2つも?ウルフくん、上手なのね~」
ミーナは感心して声を弾ませた。
「いや、当てたのは3つ」
ロバートは自慢気にバッキーの指人形を見せる。
「やっぱりウルフもガンマンの素質あるのよね~」
マダムもニコニコ顔だ。
「えへへ」
ウルフは照れて身体をクネクネさせる。
「ああ、ミーナちゃん。ウルフとカレンちゃんがダンス大会で一緒に踊るって約束しちまってるんだけど」
「うんっ」
ウルフとカレンは揃って頷く。
「あ、あら、じゃ、パパとママと3人でダンス大会に行きましょうね~?」
「やったあ♪」
カレンはピョンと飛び上がる。
「ふふふ、カレンが行くって言えば、パパ、絶対、イヤだと言わないものね。娘には甘いんだから」
ミーナはニンマリした。
「クララ、クローズの後でレンタルのドレス選びに行こうね?」
「う、うん」
クララの頭はもうドレスのことでいっぱいだった。
「じゃ、ロバートもウルフ連れてダンス大会に参加ね?」
マダムは何気ない調子で訊ねる。
「ああ。仕方ねえよな」
ロバートはあくまで子供の付き添いというつもりだが、
マダムは(やった♪)と小さくガッツポーズした。
「ウルフくんがカレンちゃんとカップル参加。ジョーさん、5歳児に負けてますよっ」
太田は自分のことは棚に上げてジョーをけしかける。
「――うぅ」
ジョーは困惑した。
タウンの看板スタァとしての見栄も外聞もあるし、ダンス大会には美女をはべらかして颯爽と登場しないことには格好が付かないのではなかろうか。
だが、今までエロ優先でベッドへ直行だったジョーには前段階の経験がない。
ましてやダンスなど未知の領域だった。
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