PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第5弾 踊り明かそう

Is it still Christmas?(まだクリスマス?)

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 ~~♪

 今日も楽団はすでに飽き飽きしたに違いないクリスマスソングを演奏している。

 タウンはいまだクリスマス・シーズンである。

 前回から何日も経っていないのだ。

(あ~あ、カップル多いな~)

 クララは赤いサンタコートに赤い三角帽子のコスチュームで、メインストリートを行き交うカップルをポップコーン・ワゴンから眺めていた。

(――勝ち、勝ち、楽勝、勝ち、楽勝――)

 ここのところ自分とカップルの女のコの容姿を比較しては無意味な勝負をしている。

 誰と比べても自分のほうが圧倒的に可愛い。

 それなのに彼氏がいないのは高望みのせいだとは分かっている。

 しかも、クララはカップルで賑わうクリスマス・シーズンのうちにますます根性をねじくらかしていた。

 タウンのクリスマス・シーズンは11月下旬からクリスマス本番の25日まで長々とある。

 それはクララの根性をますますねじくれさせるに余りある時間だった。

(ふんだ。クリスマス・シーズンにタウンへ来たカップルはみんな別れちゃうんだから)

 地元にまことしやかに伝わるクリスマス・シーズンにウェスタン・タウンでデートするカップルは別れるというジンクス。

 クララのようにカップルを妬むキャストの怨念によるものという気がしないでもない。

(別れちゃえ、別れちゃえ)

 クララは内心で悪態を付きながら天日塩をパッパと振ってポップコーンをガサガサとかき混ぜた。

 そこへ、

「ポップコーン下さい~」

 ゲストが脇から小走りしてきてワゴンの前に立った。

「はいっ」

 クララがポップコーンをかき混ぜる手を止めて顔を上げると、

(――はっ?)

 視界はいきなりダイダイ色だった。

 目の前のゲストの若い女が帽子からコート、スカート、タイツ、靴に至るまですべてダイダイ色で統一したファッションをしているのだ。

 しかも、後から来た若い男と幼い子供2人、揃って全身がダイダイ色のファッションだ。

(――で、出た。ダイダイ星人っ)

 クララは歓喜にプルプルと震えた。

 ずっと以前から、それこそクララが小6の頃からウェスタン・タウンにダイダイ星人のファミリーが出没するという噂は耳にしていた。

 だが、クララがダイダイ星人と遭遇したのは、今、この時が初めてだった。

 2月頃にキャストの女のコ達が見掛けて以来、出没情報を聞かなかったのでダイダイ星人のファミリーはダイダイ星に帰ってしまったという噂だったのだ。

「チーズ味を3個。缶は3個すべてバミーの絵柄でね」

 ダイダイ星人の妻がスラスラと注文する。

 噂どおりダイダイ星人はオレンジ色のギンガムチェックのドレスのバミーがお気に入りのようだ。

「――は、はいっ」

(う、嬉しい~。やっと逢えた~。まだ地球にいたんだ~)

 クララはドキドキワクワクしながら袋に詰めたポップコーンをブリキ缶に入れる。

「300セントです」

「はい」

 ダイダイ星人の妻はダイダイ色のバッグからダイダイ色の財布を取り出してクララに代金を手渡す。
 
 爪のネイルカラーもダイダイ色だ。

「ありがとうございますっ」

 クララは満面の笑みでダイダイ星人のファミリーを見送った。

(ああ、この感動を早く誰かに伝えたい――)

 いつもより早めだか昼休憩を取ることにしてワゴンを大急ぎでたたむ。

 クララは近くのゼネラルストアに入ると奥にあるSTAFF ONLYの扉を抜けて地下通路への階段を駆け下りた。

 地下通路にはターレーが何台も並んでいる。

 ターレーは魚河岸で見掛ける運搬用の乗り物だが、タウンの敷地はやたら広いので商品のダンボール箱などを運ぶキャストは地下通路をターレーで移動するのだ。

「ええい、乗ってっちゃお」

 パタパタバタバタ――、

 クララは荷物もないのに急ぎたいばかりにターレーに乗って、この地下通路に許された最高速度の時速15kmでバックステージへ戻っていった。
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