PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第4弾 聖なる夜に

Look just like (そっくり)

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 あくる日。

「――(ワクワク)」

 タウンのエントランス前に人待ち顔で立つタイガー(大庭大雅おおば たいが)がいた。

 10歳の子供ながらテンガロンハットを被り、ウェスタンブーツ、バリバリのウェスタン・ファッションだ。

「タイガーっ」

 男のコ2人が笑顔で手を振りながら走ってくる。

「あ、ユウキ、ヒロキ、こっちこっち~」

 タイガーも笑顔で手を振り返す。


 午前10時のオープン。

「ウェスタン・タウンへようこそ~」

 保安官、カウボーイ、カウガールのキャストが笑顔でゲストを出迎えた。


 エントランス前には地元の温泉旅館、ホテルの送迎バスが次々と停まり、続々とゲストが降りてくる。

 その中にウルフとジャックの姿もあった。


「うわぁ、クリスマスツリー、去年よりデッカイ。――あ、あれ?」

 タイガーは広場のクリスマスツリーを見上げ、何気なく案内板に目を留めた。

 『ウェスタン・ショウのキャスト休演のお知らせ』と貼り紙がある。


 キャスト控え室。

「――父ちゃんっ。何で今日、ジョーさん出ないんだよっ」

 タイガーが息せきって室内に飛び込んできた。

 物心付いた頃からタウンが庭のようなものでタウンとバックステージを繋ぐキャスト専用の地下通路も知っていた。

「タイガー。勝手に入ってくんな」

 ロバートがギロッと睨む。
 
「女ガンマンとの対決なんてヤダよっ。せっかく友達、連れてきたのにっ」

 タイガーの後ろで友達2人がバックステージに興味津々でキョロキョロしている。

「女と対決して勝っても、ぜんぜん、格好良くないよっ」

 タイガーはロバートに食って掛かる。

「女ガンマンをナメるな」

 ロバートが叱り付けた。

 100年以上前のワイルド・ウェスト・ショウで一番有名で勲章を山ほど貰って活躍していたのは女ガンマンのアニー・オークリーなのだからガンマンに女性蔑視などあってはならない。

「タイガー、ごめんな。来週の日曜、また友達と来てくれよ。あ、前売りチケット、俺、やるから」

 ジョーはすまなそうに謝った。

「来週じゃダメなんだよっ。ユウキとヒロキ、冬休みに引越しちゃうんだっ」

「……」

 寂しく頷くユウキとヒロキ。

 お揃いの色違いの服に同じ顔の双子だ。

「……」

 ジョーは右手の包帯をじっと見ながら考えあぐねるような顔をする。

「……」

 メラリーは気になってジョーの横顔を見つめていた。

 その時、

「――あれ?このコ」

 裏方スタッフがやってきて廊下から室内を覗いているウルフに気付いた。

「あ、あら?このコ、また来たの?バックステージまで勝手に入ってきて」

 迷惑そうに眉をひそめるゴードン。

「――?」

 タイガーはウルフの顔を見てハッとした。


「パァーのガンマン、みたいよ」

 ウルフは涙目でゴードンに訴える。

「な、なに?目をウルウルさせて。泣き落としで来るつもり?知らないわよ。代役なんてダメよっ」

 ゴードンはフンと顔を反らす。

「パァーのガンマン」

 ウルフはゴードンのジャケットの裾を掴む。

「もぉう、このコ、迷子センターにでも連れてってちょうだいっ」

「は、はい。ボク~、パパ、どこかな~?」

 裏方スタッフがウルフを抱き上げて足早に廊下へ出ていく。

「なんか、あのコ、タイガーを小さくしたみたいだね」

「うん。そっくりだった」

 ユウキとヒロキが屈託なく頷き合う。

「……」

 気まずい表情の面々。

 実はみな同じことを思っていたのだ。


 キャスト食堂。

 早めの昼食に来たゴードンとマダムはコスチューム担当のタマラとヒソヒソ声で話していた。

「ええ、駆け落ちした時にはジェーンはすでに身重だったと思うわ~。わたし、ジェーンに頼まれてコスチュームのウエストサイズを直したのよ~。本人は食べ過ぎって言い訳してたけどね~」

 タマラはオープンからのキャストでジェーンのことはよく知っていた。

「あのコがロバートちゃんの種ということもなきにしもあらずだわね」

 ゴードンは難しい顔をする。

「まあ、母親が同じだからタイガーとウルフってコが似てても当然なんだけど、DNA鑑定でもしない限り、父親が誰かなんて判らないわよね?」

 マダムはあまりにそっくりなタイガーとウルフの父親が違うとは思えなかった。

「でも、ロバートちゃんはそんなことしないでしょ。そもそもタイガーちゃんだってロバートちゃんの種かどうか怪しくなるし」

「え、ええ?」

「そーいう女だったの。ジェーンちゃんって。二股、三股なんか当たり前。ただのグラマー美女でなく強力なフェロモンの持ち主で男をたちどころに誘引してしまうのよ」

 ゴードンが言うと、

「ええ、わたしが知ってる男だけでも片手じゃ数え切れないわね~」

 タマラは指折り数えて8人目で首を傾げた。

 それ以上は覚えていないようだが少なくとも8人は浮気相手がいたということか。

「最悪。ホントにカラミティだわ」

「――あ、シイッ」

 出入り口を見て3人は慌てて話を切り上げた。

 ロバートが太田、メラリー、トム、フレディと昼食にやってきたのだ。

「あれ?ジョーさんは?」

 太田が洗面台で後ろを振り返ってジョーが来ていないことに気付く。

「――あっ、さては」

  メラリーは急いで廊下を引き返していった。
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