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第2弾 いつか王子様が
18Memory⑬(エイティーン・メモリー)
しおりを挟む数日後。
「メラリーちゃん、衣装合わせにコスチュームルームに来てちょうだい」
ゴードンがいそいそとメラリーを呼びに来た。
「はい~♪」
メラリーは「待ってました」とゴードンの後に付いていく。
ショウのコスチュームが完成したのだ。
あとは衣装合わせでサイズの微調整をするだけである。
「どれどれ」
ジョー、ロバート、マダムも興味津々に付いていく。
5人がミシンが30台ほども並んだ広いコスチュームルームに入ると、
「あら~、皆さん、お揃いで~」
ショウのコスチューム担当の40代半ばのタマラ(玉木良子)が待ち構えていた。
タマラは首に巻き尺をぶら下げ、手首にマチ針の針山を着けて、衣装合わせの準備万端だ。
「ジャーン♪これよ~」
タマラが自信たっぷりに指したトルソーにパールピンクのドレスが着せられている。
「――コスチュームって、これ――?」
ポカンとするメラリー。
「お~、いいじゃ~ん」
「ほぉ~」
「可愛いわ~」
ドレスの仕上がりに満足げなジョー、ロバート、マダム。
「まず、男のコのメラリーちゃんが着て女のコらしく見えることを考えたデザインに注目して~」
タマラがドレスを指しながら説明する。
「襟は首を隠すようにハイネック、袖は肩幅を誤魔化すように大きなパフスリーブ、前見頃は三角の切り替えに並んだリボンをだんだんに小さくしてウエストを細く見せる効果を出したのよ~」
女装のために細かく配慮されたデザインなのだ。
「素晴らしいっ。ファンタスティックよっ」
ゴードンはパチパチと手を叩く。
「……」
メラリーはまだポカンとしている。
女装するとは全然、聞いていない。
「うふふ、メラリーちゃん、こういうヒラヒラのドレス、大好きだものね~?」
ゴードンは勘違いしている。
メラリーは女のコのヒラヒラのドレス姿が大好きだと言ったつもりなのだ。
「ほらほら、着てみて」
マダムが試着室のアコーディオン・カーテンの中にメラリーを押し込む。
「――う、わっ?」
メラリーはビビッた。
「――フィラ――デルフィア――?」
目の前にマネキンのフィラデルフィアがすっぽんぽんで立っているではないか。
「――あ――っ」
ジョーもフィラデルフィアを見て驚く。
「どうかした~?」
タマラがキョトンとして訊ねた。
「――このマネキンは?」
ジョーがマネキンを指差す。
「ああ、この間、廃棄に出してあったの貰ってきたのよ~。トルソーが足りなかったから、ちょうど良かったのよね~」
タマラはマネキンを試着室から出すと、サンプルに作ったばかりのカウガールのコスチュームを着せてハットを被せた。
真新しいコスチュームに身を包んだフィラデルフィア。
みすぼらしい黄ばんだ白いドレスの時とは見違えるような明るい笑顔だ。
「――ほ――っ」
メラリーとジョーは安堵して顔を見合わせた。
「あの、着てみましたけど――」
試着室のカーテンをシャッと開けて、パールピンクのドレスにハニーブロンドの巻き毛のウィッグ、花の着いた帽子を被ったメラリーが現れた。
「お~っ」
「似合うじゃない~」
「ちゃんと女のコに見えるわ~」
「ブラボーっ」
ロバート、マダム、タマラ、ゴードンが歓声を上げる。
「お前、すっぴんで違和感ねえって、すげー」
ジョーはあまりのメラリーの女のコっぷりに呆れ笑いした。
「ふふふん♪」
メラリーは「まいったか」とでも言うように胸を張って、腰に両手を当てた。
いざ着てみると鏡に映る自分は我ながらそこらの女のコよりも格段に可愛い。
メラリーはドレスの裾を摘まんでクルンクルンと回ってみせた。
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