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第2弾 いつか王子様が
18Memory⑪(エイティーン・メモリー)
しおりを挟むそうこうして、
2人の練習が始まった。
「――あ?何だ、その格好?」
ジョーは練習場に入ってきたメラリーの格好を見るなり不服そうに片眉を吊り上げた。
メラリーはフルフェイスのヘルメットに防弾チョッキ、手には頑丈な革製の手袋を着けた格好だ。
「俺だってこんな格好、重たいし、暑いし、イヤなんすけど」
後ろを見返るメラリー。
「わたしがこの重装備でって言ったのよ。ジョーちゃんの腕を疑う訳じゃないけど念のためよ」
ゴードンがメラリーの後から入ってきた。
「あ、それとキャスト同士の金銭のやり取りを容認する訳にはいかないからね。報酬としてジョーちゃんがメラリーちゃんに1万円分のステーキをご馳走するってことでいいわよね?」
ゴードンは代替え案を出す。
「俺、どっちみち1万円貰ったらタウンのステーキハウスでステーキ食べるつもりだったから、それでオッケーっす」
メラリーはジュウジュウと香ばしく焼けたステーキを思ってニコニコ顔だ。
「ま、どっちでも俺はいいけどよ」
ジョーはともかく生身の人間の、それもショウのステージで見映えするパートナーで念願のパフォーマンスが出来るなら満足なのだ。
「――んじゃ、いくぜ」
チャッ。
ジョーがライフルを構える。
「――っ」
メラリーはギュッと目を瞑った。
ガン!
「――てっ」
1発目から弾はピンポン玉ではなくメラリーの指に当たった。
思わず「――てっ」と口から出ただけで硬い革製の手袋のおかげで痛くはない。
「今のはお前の手が動いたんだぜ」
ジョーは動かないマネキンでの練習に慣れていたせいで狙いを定め過ぎた。
「だって、反射的に動いちゃうんっすよ」
メラリーはブスッと口を尖らせる。
「う~ん、目を閉じてたのに反射的に手が動くとは、メラリーの奴、勘が鋭いな」
ロバートは腕組みして唸った。
「このパフォーマンスってさ、ジョーさんよりも的のメラリーがじっとしてるほうが難しいんじゃね?」
「だな。どうしたって動いちまうよな」
トムとフレディは自分達の練習そっちのけで2人の練習を眺めている。
「――あ、そっか。動体射撃と思って狙えばいいのか」
ジョーはピンと閃いた。
普段のショウでは飛んでいるクレー、風船、トランプ等を撃っているのだからメラリーの指に挟んだピンポン玉も動くものという前提で狙えばいいのだ。
ちなみにトランプは舞い落ちる4種類のカードの中からハートのAだけを撃つ。
ワイルド・ウェスト・ショウでは女ガンマン、アニー・オークリーが得意としたパフォーマンスだ。
メラリーが少しばかり手を動かす範囲でピンポン玉を撃つなど簡単ではないか。
「おしっ」
ガン!
2発目はメラリーの手が動いても外さなかった。
休憩になると、
「あ~、緊張して喉がカラカラ~。肩もガチガチに凝っちゃったな~」
メラリーはドカッと椅子にふんぞり返った。
「はいはい、ミネラルウォーター?肩、揉もうか~?」
ジョーはチヤホヤチヤホヤとメラリーのご機嫌を取って、へいこらと下僕のごとく尽くした。
メラリーが「やっぱりヤダ」などと言って逃げ出さないように必死だったのだ。
この練習の時からジョーに対して後輩のくせにエラソーなメラリーという2人の関係性が出来上がったのである。
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