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第2弾 いつか王子様が
Time(タイム)
しおりを挟むキャスト食堂。
「――ちょっとタイム。なんか聞いてるうちに無性に腹立たしくなってきたんですけどっ」
太田は強引にメラリーとジョーの思い出話を一時中断させた。
「もう過ぎた話じゃんかよ。あ~、カンカンの踊り子達とも短い付き合いだったな~」
ジョーはどうせアンとリンダの名前も覚えてはいないと思われる。
「ぷぷっ、やだっ。ジョーってば、ケータイのアドレス、わたし以外に1人も女の登録ないじゃないの?1人も?うぷぷぷっ」
マダムが勝手にジョーのケータイを覗く。
「へえ、前のケータイ、風呂に浸けてオジャンにしてから、新しい女のコのアドレス、ひとっつもゲットならずっすか?」
メラリーはザマミロという顔である。
「ちっ、悪かったな」
ケータイをパッと引ったくり、
「あ~、このタウンでガンマン・ジョーになって以来、ず~~~~~っとモテモテだったのによ~。女運どん詰まりだよ~。誰かの陰謀じゃねえのかな~~?」
ジョーはゴンゴンとケータイをテーブルに打ち付けて嘆いた。
その時、
「――っ」
クララがガンマンキャストのテーブルの脇を通り掛かってビクリと足を止めた。
ポトッ。
思わず小脇に挟んでいたヘアキャップを落とし、慌てて屈んで拾って、
(――ん?)
ふと、テーブルの下のメラリーの足元に目が留まった。
牛柄のスニーカーだ。
後ろ側のテーブルに着き、サンドイッチを食べながら、
(――ん~、あの牛柄のスニーカー、どこかで見たような?)
クララはメラリーの履いている牛柄のスニーカーが何故だか気になっていた。
「俺が聞きたいのはジョーさんのスケコマシ自慢じゃなく、メラリーちゃんがジョーさんの的に立つパフォーマンスのことですからっ」
太田は強引に話を戻した。
「それ、最初はわたしが的に立ってあげるって言ったのに、ジョーがわたしのオッパイが気になって狙いが定まらないって断ったのよ」
マダムはせっかくの自分の申し出を拒まれて失礼しちゃうという口調である。
「まあ、それは――そうですよね」
太田はマダムの豊満な胸の谷間をチラッと見て納得した。
このメロン並みのオッパイの存在感をもってしてはピンポン玉など目に入らないだろう。
「俺はジェントルマンなガンマンだからよ。女に鉄砲は向けらんねえんだよ」
ジョーは決してスケベ心のせいではないと主張する。
「それで、メラリーちゃんなら男のコだし、ドレスとハニーブロンドの巻き毛のウィッグでまるっきり女のコに見えるし、パートナーとして、うってつけだった訳なのよ」
ゴードンが口を挟む。
「なるほど~。けど、ジョーさんの的に立つことを頑なに拒んでいたメラリーちゃんが何でやる気になったんです?きっかけは?」
太田はしつこく追及した。
「ん、んん~」
メラリーは言い淀む。
「コレだよ」
「コレ」
トムとフレディが親指と人差し指で円を作って見せた。
「――は?――お金――ですか?」
太田はあまりに現実的な答えに幻滅する。
「もっと、こう、ならず者に襲われたメラリーちゃんをジョーさんが助けて信頼が生まれ、分厚い友情が芽生えたとか」
〈太田のイメージ〉
ならず者達に囲まれるメラリー。
メラリー
「わあっ、助けて~~~っ」
ジョー
「メ、メラリーッ」
ガン!
ガン!
ならず者に向け、ライフル連射。
「もしくは、熊に襲われたメラリーちゃんをジョーさんが助けたとか」
〈太田のイメージ〉
熊に襲い掛かられるメラリー。
メラリー
「わあっ、助けて~~~っ」
ジョー
「メ、メラリーッ」
ガン!
ガン!
熊に向け、ライフルを連射。
「――というような感動の場面はなかったんですね」
太田はメラリーに妙なファンタジーを期待しているのだ。
「そんな都合良くならず者や熊が現れるかよ」
ジョーはケッと一蹴した。
「――あの報酬で食べたステーキ美味しかったな~」
メラリーは三度、遠い目をする。
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