普通のBL小説

朝井染両

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これは普通のBL小説です。

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だから、僕たちが出会って、恋をして、気持ちを確かめ合うんです。


「それが決まってることだから」


ここはBL小説の世界です。
僕は所謂攻めで、属性は年下高身長根暗わんこ攻め、と言った所。


ここがBL小説の世界だと気づいたのは、ほんの些細なきっかけです。
些細なんですかね。
次元の隙間って言うんですか、なんか、夢でも見ていたのかもしれないんですが、僕たちの、全部、全部ぜんぶが書かれた文庫本が一冊、ぽとんってある日、部屋の真ん中に落ちてきたんです。


え、なんで、本?
表紙の絵、なんか、先輩と俺に似てるって言うか……先輩と俺の名前じゃん、えー……と。

えーーーと。


まあ、頭まっしろになって、動揺して、寝てる先輩起こさないように、なんか泣きながら破って、それで、えーと。

たぶん捨てたんじゃないかな。

僕は、BL小説の世界で生きています。
誰かにとっては、僕はただの文字で、僕の髪の色も、身長も、顔も、声なんてもってのほかで、わからない。

それは別に良いんだけど、ぞっとしてしまったんです。



決まってたから、好きになったのかな。
いやそうじゃないと思うんだよな。
思いたいんだよな、でも怖いんだよ。

でもこんなこと、先輩には話せないじゃないですか。
だって知ってしまったら、きっと悲しむし、俺のこと好きじゃなくなっちゃうかもしれない。

それはそれで怖い。

僕のことを指して大胆だ、と先輩はよく言うんですけど、本当は臆病です。
でもそれも先輩はわかっていてくれるから、最近様子がおかしい僕を黙ってそっとしておいてくれる。

そろそろ何かしら話さなくては、この際でっち上げでもいい。
でもなぁ、先輩は敏いから、きっとバレてしまう。

そういう所が好きなんだけど、今はただ恐ろしい。

僕が貴方が好きなのは、本物ですか。
僕は本物ですか。

貴方は本物です。
だって、例えば偽物でも、僕が貴方を本物だと思うから。


……等と、酒の勢いでのたまったのが二日前。

「じゃあそれ、お前にも言えることじゃんか」

とかいう先輩の言葉で、どーでもよくなっちゃうんだから、俺も現金なもんで。


青天の霹靂、鶴の一声。


ここは、普通のBL小説の世界です。
僕は今日も、生きて、それで、
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