ツンデレの彼氏(仮)くんがデレデレでかわいいんだよ!っていう話

朝井染両

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僕には彼氏(仮)がいる。

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僕には彼氏(仮)がいる。

因みに(仮)は三年前から取れていない。




ねえ、つまりこれは、永久仮免のような日々だけど、言うなれば恋人未満の甘酸っぱさを三年間味わえているということになる。

友達以上恋人未満という一番おいしい時を僕は三年間も味わえているということになる。

つまり僕は三年間……。



「何回三年って言う気だよ」
「つまり僕らが恋人(仮)になって三年目ってコトだ!」


彼氏(仮)くんと出会って六年、彼氏(仮)という関係性になって今日で三年だった。

「だから聴いてよ、僕ね、作ってきたの」
「何を」
「記念詩集」全十五篇だ。
「キモすぎる」

オフセット本だ。
手渡すと、彼氏(仮)くんは一応手に取り、表紙をじっと見つめていた。
我ながら綺麗に刷れている。彼の繊細な心をイメージして描いた表紙をきっと彼は気に入る。

「クオリティが高いのがムカつくんだよな……」と渋々といった顔で開いてくれる。優しい。

読み始めて、読み終わる。
そしてげんなりとした顔で言った。

「全篇下ネタじゃねーか……」
「そろそろ僕ら次のステップに行っても良いんじゃないかと思うんだ」
「ねーよ」
「彼氏なのに?」
「(仮)な」
「もう取っても良いじゃない」
「やだよ」

会社の試用期間だって三カ月で終わるというのに。
僕らは三年間進まないままだった。


どちらかの家で待ち合わせ、ご飯を食べて、お酒を飲みながらゲームをしたりする。
たまに話し込む。
眠くなってきたら映画を流しながら眠る準備をして、なんとなくウトウトして、眠りにつく。

基本はそんなデートを重ねてきた。
クリスマスだって三年連続で一緒にいた。

「なんでだめなのさ……」
「三年記念日に自分の欲望したためた詩集出してくる奴と付き合いたくないだろ」
「それは、そうかもしれないけど!!」

それはそうかもしれない。
彼氏(仮)くんは畳み掛けてくる。

「俺にジェラート●ケのルームウェアと首輪付けて生活して欲しいとか言う野郎と付き合ったらどうなるかわかったもんじゃない」

「良く読み解いたね……」
ジェ●ートピケも首輪も、ぼかした表現にしたのに。

「お前の怪文書は三年間読まされ続けてんだこっちは」

そう言って詩集をヒラヒラ揺らし、歯を見せて得意げに笑った。かわいい。彼氏(仮)くんかわいい。
誇れることじゃないのに、誇っちゃうところがとてもキュート。
彼氏くんは続ける。

「表紙はどーせお前の中の俺がイメージなんだろ、そんで卒業、社会人、結婚生活って流れで15遍綴り……この才能別で生かせよ、きめーな」

君は、僕のことをよくわかってくれる。
それは彼が、僕のことをよく見てくれているってことだ。

「愛してるって事?」
「耳の穴塞がってんのかカス」

彼氏(仮)くんは嫌そうな顔で中指を立てた。
かわいい。

「そんで? 話って別にあんだろ」と冊子は床に置かれる。

「うん……僕らの愛の巣の話なんだけどさ……」
「大学卒業して離れるのが不安だから一緒に住んでくれ? シェアハウスなら考えてやらんこともない」
「好き」
「家賃折半だと俺にもメリットがあんだよボケ」
「じゃ、じゃあ週末はデートってことでいいのかな」
「物件探しな、まあいいけどさ」
「今日一緒に寝る?」
「……いやだ」
「……ありがとう」

ちぐはぐな会話。
真逆の言葉。
僕たちは特殊な言語で言葉を交わす。

今日はたぶん、手を繋いで寝てくれる。
顔がそう言ってる。
僕にしかわからない表情で言ってくれてる。

「あのね、パジャマなんだけど」
「まさかお前」
「買ってあります」
「……着ないぞ」

これはだめだったか。
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みんなの感想(1件)

ゆみ
2021.10.06 ゆみ

ツンデレ最高!!(//>д<//)
ツンデレって読まなかったんですが、デレが最高ですね!!
浅井ボウルさんの書く作品大好きです!!
応援してます!!

2021.10.06 朝井染両

ツンデレと見せかけたデレデレが大好物なので、わたしの書くツンデレは全てまやかし……。
読んでいただけて感謝!!いつも感想ありがとうございます!!!!応援して頂けるのもうれしい!!
マイペースな投稿だけど、よろしくお願いします😂😂😂😂😂

解除

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