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◆番外編◆ 新年に訪れた神宮寺家で☓☓☓
#3
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そんな時、私と隼さんが話しているすぐ傍で、雅さんと話していた麗子さんが、
「あっ、そうそう。前に、美菜さんが要の小さい頃の写真が見たいって言ってたから用意してたんだったわぁ」
そう言い残し、豪華絢爛な欄間彫刻の施されただだっ広い和室から退室して。
ほどなくして、あらかじめ用意してくれていたらしい数冊のアルバムを手に戻ってきた麗子さん。
そのアルバムを雅さん麗子さん隼さんに私とで取り囲んでの、鑑賞会が始まって、私はそれぞれみんなが口々に話してくれる思い出話に、ウキウキしながら耳を傾けていた。
その頃要さんは、私と二メートルほど離れたところに座って、程よく酔って上機嫌な虎太郎さんから、仕事についてのアドバイスなどを受けているようだった。
「へぇ、ずいぶん懐かしい写真ですねぇ?」
「そうでしょう? これなんて、保さんのリゾートホテルに行ってた時のものよ。ほら、要が隼をおんぶしたはいいけど、バランス崩しちゃって海にダイブしちゃったときの写真」
「まぁ、ほんと。懐かしいわぁ。あの時は、大怪我したんじゃないかって、肝を冷やしたのよう」
「うわぁ! 要さんも隼さんもメチャクチャ可愛い~! 女の子みたい」
「あぁ、それよく言われましたよ。そのたびに僕も兄さんもムッとしてたのを覚えてます」
「そうそう。でも、ふたりがムッとしてても、『可愛いお嬢さんですねぇ?』なんて言われて、ますます怒っちゃって。ほら、この写真みたいにいつも不愉快そうにしてたのよう」
「ふふっ、ムスッとしてても可愛い~!」
「この頃は可愛かったけど、今はこんなに大きくなっちゃって。美菜さんがお嫁に来てくれたから、要も時々こうやって顔を見せてくれるようになったけど。それまでは仕事仕事って、寄り付きもしなかったのよう? 本当に、美菜さんのお陰だわぁ。ありがとう、美菜さん」
「あぁ、いえ、そんな。こちらこそ、良くして頂いてありがとうございます……あっ、今、動きましたっ!」
雅さんが、少々感慨にふけっちゃって、こっちまでホロリと泣きそうになっちゃったところで。
最近はふっくらと妊婦さんらしくなってきた私のお腹の赤ちゃんの、元気に動く胎動を感じて、みんなの意識がアルバムからお腹の赤ちゃんへと集中したのだった。
「まぁ、元気な赤ちゃんだこと。ちょっと触ってもいいかしら?」
「あー、お母さんズルいっ! 私も~。隼も触らせてもらったらどうかしら? 少しは結婚したくなるんじゃないの?」
三人が私のことを取り囲んで、お腹の赤ちゃんが元気に動くのを見ているうち、雅さんの言葉を皮切りに、競り合うようにして麗子さんが我先にと私のお腹に触れてきて、隼さんに声をかけている。
私たちの結婚が決まってからというもの、方々から縁談話がひっきりなしに舞い込んでくるのに対して、消極的らしい隼さん。
要さんに出されたある条件の所為で、月一ペースでお見合いをするようになったらしいけれど、なかなかいいお相手には巡り逢えてはいないらしく、隼さんからお断りしてばかりだという。
中には、隼さんのことを諦めきれず、あの手この手で、会社にまで押しかけてくる女性までいるらしかった。
けれど、不思議なことに、そういう女性は隼さんと一度食事をすると納得してくれるらしく、これまで問題になるようなことはないらしい。
今日、話していて分かったのだけれど、物腰もソフトでとっても優しいし、気遣いもできて、オマケに料理上手で、眼も悪いらしくたまにメガネをかけているらしい、なんとも女性にモテる要素どんだけ持ってるんですか? って思っちゃうような素敵な人(要さんには適わないけれど)だ。
そういう女性にも、とても真摯に対応しているのだろう。
まぁ、それはさておき、とにかく雅さんも麗子さんも速く隼さんに身を固めてほしいと思っているようで、今のように、事あるごとに、結婚を仄めかしているようだった。
「あぁ、いえ、僕は遠慮しておきます。兄さんの機嫌が悪くなったら困りますので」
「まぁ、そんなことで怒ったりしないわよねぇ? 要?」
「……あら、悪酔いちゃったのかしら。要ったら、眼が据わってるわぁ」
雅さんと麗子さんの話題を上手く要さんへとシフトさせた隼さんからは、無意識なのか、ボソッと独り言ちるような声が聞こえてきて。
「欠陥品の僕に結婚なんてできる訳ないのに」
「……え?」
「あぁ、いえ、なんでもありませんから、お気になさらないでください」
呟きを零した隼さんの表情がとても寂しそうに見えてしまった私が思わず声を漏らしてしまったのだけれど。
隼さんにアイドルのような甘いマスクでニッコリと微笑まれてしまえば、私にはそれ以上何かを返すことなんてできなかった。
「あっ、そうそう。前に、美菜さんが要の小さい頃の写真が見たいって言ってたから用意してたんだったわぁ」
そう言い残し、豪華絢爛な欄間彫刻の施されただだっ広い和室から退室して。
ほどなくして、あらかじめ用意してくれていたらしい数冊のアルバムを手に戻ってきた麗子さん。
そのアルバムを雅さん麗子さん隼さんに私とで取り囲んでの、鑑賞会が始まって、私はそれぞれみんなが口々に話してくれる思い出話に、ウキウキしながら耳を傾けていた。
その頃要さんは、私と二メートルほど離れたところに座って、程よく酔って上機嫌な虎太郎さんから、仕事についてのアドバイスなどを受けているようだった。
「へぇ、ずいぶん懐かしい写真ですねぇ?」
「そうでしょう? これなんて、保さんのリゾートホテルに行ってた時のものよ。ほら、要が隼をおんぶしたはいいけど、バランス崩しちゃって海にダイブしちゃったときの写真」
「まぁ、ほんと。懐かしいわぁ。あの時は、大怪我したんじゃないかって、肝を冷やしたのよう」
「うわぁ! 要さんも隼さんもメチャクチャ可愛い~! 女の子みたい」
「あぁ、それよく言われましたよ。そのたびに僕も兄さんもムッとしてたのを覚えてます」
「そうそう。でも、ふたりがムッとしてても、『可愛いお嬢さんですねぇ?』なんて言われて、ますます怒っちゃって。ほら、この写真みたいにいつも不愉快そうにしてたのよう」
「ふふっ、ムスッとしてても可愛い~!」
「この頃は可愛かったけど、今はこんなに大きくなっちゃって。美菜さんがお嫁に来てくれたから、要も時々こうやって顔を見せてくれるようになったけど。それまでは仕事仕事って、寄り付きもしなかったのよう? 本当に、美菜さんのお陰だわぁ。ありがとう、美菜さん」
「あぁ、いえ、そんな。こちらこそ、良くして頂いてありがとうございます……あっ、今、動きましたっ!」
雅さんが、少々感慨にふけっちゃって、こっちまでホロリと泣きそうになっちゃったところで。
最近はふっくらと妊婦さんらしくなってきた私のお腹の赤ちゃんの、元気に動く胎動を感じて、みんなの意識がアルバムからお腹の赤ちゃんへと集中したのだった。
「まぁ、元気な赤ちゃんだこと。ちょっと触ってもいいかしら?」
「あー、お母さんズルいっ! 私も~。隼も触らせてもらったらどうかしら? 少しは結婚したくなるんじゃないの?」
三人が私のことを取り囲んで、お腹の赤ちゃんが元気に動くのを見ているうち、雅さんの言葉を皮切りに、競り合うようにして麗子さんが我先にと私のお腹に触れてきて、隼さんに声をかけている。
私たちの結婚が決まってからというもの、方々から縁談話がひっきりなしに舞い込んでくるのに対して、消極的らしい隼さん。
要さんに出されたある条件の所為で、月一ペースでお見合いをするようになったらしいけれど、なかなかいいお相手には巡り逢えてはいないらしく、隼さんからお断りしてばかりだという。
中には、隼さんのことを諦めきれず、あの手この手で、会社にまで押しかけてくる女性までいるらしかった。
けれど、不思議なことに、そういう女性は隼さんと一度食事をすると納得してくれるらしく、これまで問題になるようなことはないらしい。
今日、話していて分かったのだけれど、物腰もソフトでとっても優しいし、気遣いもできて、オマケに料理上手で、眼も悪いらしくたまにメガネをかけているらしい、なんとも女性にモテる要素どんだけ持ってるんですか? って思っちゃうような素敵な人(要さんには適わないけれど)だ。
そういう女性にも、とても真摯に対応しているのだろう。
まぁ、それはさておき、とにかく雅さんも麗子さんも速く隼さんに身を固めてほしいと思っているようで、今のように、事あるごとに、結婚を仄めかしているようだった。
「あぁ、いえ、僕は遠慮しておきます。兄さんの機嫌が悪くなったら困りますので」
「まぁ、そんなことで怒ったりしないわよねぇ? 要?」
「……あら、悪酔いちゃったのかしら。要ったら、眼が据わってるわぁ」
雅さんと麗子さんの話題を上手く要さんへとシフトさせた隼さんからは、無意識なのか、ボソッと独り言ちるような声が聞こえてきて。
「欠陥品の僕に結婚なんてできる訳ないのに」
「……え?」
「あぁ、いえ、なんでもありませんから、お気になさらないでください」
呟きを零した隼さんの表情がとても寂しそうに見えてしまった私が思わず声を漏らしてしまったのだけれど。
隼さんにアイドルのような甘いマスクでニッコリと微笑まれてしまえば、私にはそれ以上何かを返すことなんてできなかった。
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