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◆番外編◆ 思いがけないこと〜side夏目〜
#4
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朝、いつものように、要のマンションまで迎えに行って、要と美菜ちゃんを車に乗せて、会社へと向かっている道中。
ルームミラー越しに映る美菜ちゃんの姿を視界の隅に捉えつつ、いよいよ最後なんだなぁ、なんて思いながらも……。
これ以上感慨にふけって、俺なんかがうっかり泣いたりしたら、いくら自分のことには鈍い美菜ちゃんでも、さすがに、勘ぐられてしまうかもしれないと、俺はそれ以上余計なことを考えないように努めた。
会社についてからも、これまたいつものように、要と途中で別れて、美菜ちゃんと一緒に秘書室へ向かい、三上室長と挨拶を交わして、それぞれの持ち場で各々準備に取り掛かった。
美菜ちゃんが秘書室に異動になってきてからというもの、毎日繰り返してきたことだ。
今まで、当たり前のように繰り返していた日常の些細な一コマのなかに、当たり前のように溶け込んでしまったものが、明日には、消え去ってしまうのかと思うと。
想いを告げることはないにしても、妹として、ずっと近い存在であり続けると思っていた美優を、六年前に失ってしまった時のことと、知らず知らずのうちにダブらせそうになったりして。
余計なことを考えないように努めるというのが、これが結構、骨の折れる作業だった。
そんな有り様だったもんだから、美菜ちゃんに、改まって今までのことで、感謝の言葉でもかけられようもんなら。
今まで必死にひた隠しにしてきたっていうのに、今更になって、ボロを出してしまうんじゃないかって、俺は、気が気じゃなかった。
だから、終業後に、木村に呼び出された美菜ちゃんのことが気にかかりながらも、美菜ちゃんと話し終えた木村がエレベーターで降りていくのを見てからも、美菜ちゃんの居る屋上に行くことが躊躇われた。
でも、これを逃したら、きっともう、美菜ちゃんと二人で話すような機会なんてないだろうし。
今日、きっぱりと、いつのまにか抱いてしまっていた美菜ちゃんへの想いとは、踏ん切りをつけなきゃいけないとも思う。
やっと、美菜ちゃんのお陰で、美優以外のことを好きになることができたんだから、きっと、もう大丈夫なはずだ、とも思ったり。
要と美菜ちゃんを見守ってきたなかで、美優のことを忘れることはできないし、忘れようとも思わないが、俺も、そろそろ前に向かって、進んでもいいんじゃないかって、進みたいって思うようになれたのもある。
でも、一番は、今まで夢に出てくる美優が決まっていつも泣いていたのが、それが最近は、美菜ちゃんに初めて会った時のような、眩しいくらいに煌めいた最高の笑顔を浮かべるようになったことだった。
自分勝手な捉え方かもしれないが、美優も、ずっと立ち止まってばかりいた俺が、少しでも前に進もうとしていることを応援してくれてるんじゃないかって、そんな気がしてならなかったからだ。
ルームミラー越しに映る美菜ちゃんの姿を視界の隅に捉えつつ、いよいよ最後なんだなぁ、なんて思いながらも……。
これ以上感慨にふけって、俺なんかがうっかり泣いたりしたら、いくら自分のことには鈍い美菜ちゃんでも、さすがに、勘ぐられてしまうかもしれないと、俺はそれ以上余計なことを考えないように努めた。
会社についてからも、これまたいつものように、要と途中で別れて、美菜ちゃんと一緒に秘書室へ向かい、三上室長と挨拶を交わして、それぞれの持ち場で各々準備に取り掛かった。
美菜ちゃんが秘書室に異動になってきてからというもの、毎日繰り返してきたことだ。
今まで、当たり前のように繰り返していた日常の些細な一コマのなかに、当たり前のように溶け込んでしまったものが、明日には、消え去ってしまうのかと思うと。
想いを告げることはないにしても、妹として、ずっと近い存在であり続けると思っていた美優を、六年前に失ってしまった時のことと、知らず知らずのうちにダブらせそうになったりして。
余計なことを考えないように努めるというのが、これが結構、骨の折れる作業だった。
そんな有り様だったもんだから、美菜ちゃんに、改まって今までのことで、感謝の言葉でもかけられようもんなら。
今まで必死にひた隠しにしてきたっていうのに、今更になって、ボロを出してしまうんじゃないかって、俺は、気が気じゃなかった。
だから、終業後に、木村に呼び出された美菜ちゃんのことが気にかかりながらも、美菜ちゃんと話し終えた木村がエレベーターで降りていくのを見てからも、美菜ちゃんの居る屋上に行くことが躊躇われた。
でも、これを逃したら、きっともう、美菜ちゃんと二人で話すような機会なんてないだろうし。
今日、きっぱりと、いつのまにか抱いてしまっていた美菜ちゃんへの想いとは、踏ん切りをつけなきゃいけないとも思う。
やっと、美菜ちゃんのお陰で、美優以外のことを好きになることができたんだから、きっと、もう大丈夫なはずだ、とも思ったり。
要と美菜ちゃんを見守ってきたなかで、美優のことを忘れることはできないし、忘れようとも思わないが、俺も、そろそろ前に向かって、進んでもいいんじゃないかって、進みたいって思うようになれたのもある。
でも、一番は、今まで夢に出てくる美優が決まっていつも泣いていたのが、それが最近は、美菜ちゃんに初めて会った時のような、眩しいくらいに煌めいた最高の笑顔を浮かべるようになったことだった。
自分勝手な捉え方かもしれないが、美優も、ずっと立ち止まってばかりいた俺が、少しでも前に進もうとしていることを応援してくれてるんじゃないかって、そんな気がしてならなかったからだ。
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